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109『初めてのサービスエリア』

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せやさかい

109『初めてのサービスエリア』 

 

 
 中学一年生のあたしは十三歳、ついこないだまでは小学生やった。

 
 普段の生活は、学校と家との往復で、世間が狭い。

 せやさかい、一歩学校や家を出ると初めての体験が多い。

 この夏にエディンバラに行った時は、それこそ初めてばっかりでビックリしたんやけど、テイ兄ちゃんの車を下りたばっかりのあたしは、エディンバラの空港に下りた時よりも感動してる!

 何に感動してるかと言うと、サービスエリア!

 学校のグラウンドよりも広いとこにたくさんの車が停まってる。駐車したとこからサービスエリアの建物に行くのに一苦労。

 ひっきりなしに車が通るとこを渡らならあかん。信号も横断歩道もない。

「年末の帰省ラッシュやからなあ、みんな、先にトイレ行っといでや」

 やっと渡り終えると、テイ兄ちゃんが注意した。

 行ってビックリ、四十個ほどの個室があるっちゅうのに、女子トイレは長蛇の列!

 あんまり切羽詰まってなかったんやけど、並んでると催してくる。

 あと一人で番が回って来るいうときには、ほんま、ちょっとヤバかった(;'∀')

 
「おー、いろいろあるよ!」

 
 フードコートを見つけた頼子さんが駆けだす。

 ショッピングモールのフードコートもすごかったけど、ここも負けてへん!

 おまけに人出がすごいから、もう天神祭りか祇園祭かいう賑わい!

「三十分しかないから、あんまりゆっくりでけへんで」

 テイ兄ちゃんが釘をさす。

 結果、女子四人で別々のを買って、みんなで、ちょっとずつ頂くことにする。

 焼きそば たこ焼き ラーメン イカ焼き フライドポテト 焼き立てメロンパン チーズケーキ ホットドッグ

「あんたら、大丈夫かあ?」

 コーヒーすするだけのテイ兄ちゃんは目ぇ剥いたけど、きっちり予定時間には完食!

 パシャ!

 サービスエリアの看板の前で記念写真を撮って、再び車中の人になる。

 
 十三歳は世間が狭いの続き。

 
 頼子さんが卒業後はエディンバラの高校に行かならあかん話の続き。

 詩(コトハ)ちゃんも留美ちゃんも、むろんあたしも、愕然として息をのんだ。

「けど、向こうの学校は九月からとちがうん?」

 鋭いツッコミはテイ兄ちゃん。

「はい、もともと決めかねてるんで、とりあえず、大阪の高校に入りたいとも思ってるんです……」

 頼子さんの返答に、一同は胸をなでおろしたんです。

 でも、年明けには担任の先生に返事をせんとあかんくて、そうそう余裕のある話でもないらしい。

「まあ、除夜の鐘を撞いて煩悩振り払って結論出します!」

 
 頼子さんの覚悟と、心配しいのわたしらを載せて、車は師走の名神高速を北上した。
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