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107『二転三転』
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せやさかい
107『二転三転』
頼子さんのお祖母さんの来阪が突如中止になった!
なんでも、緊急にヤマセンブルグ議会が臨時招集されることになって、議会は女王の開会宣言が無いと開けないかららしい。
「うん、イギリスがEUを離脱するんで、その緊急対策を審議するんだって」
頼子さんは一人で堺に戻ってきて学校とうちのお寺にお詫びに回ってきて、時間を割いて、あたしと留美ちゃんにも説明してくれた。
「いやあ、いまのわたしはコタツでダミアをモフモフできたらいいよ~」
ニャ~
頼子さんは首までコタツに潜り込んで、ダミアをモフってるうちに寝てしもた。
普段は大人びて見える頼子さんやけど、こうやって口を半開きにして寝てる姿は、やっと十五歳の少女や。
「諦一さんは?」
留美ちゃんがイタズラっ子の表情で聞く。留美ちゃんは真面目一方の子ぉやから、こういう表情をするのんは珍しい。それだけ、うちらの文芸部に慣れてきたんや。ほんで、このゆる~い文芸部の雰囲気はいつにかかって頼子さんの人柄の現れ。
その頼子さんが子どもっぽく見えて、留美ちゃんが大人びてるのは、嬉しいし、逆説めいて面白い。
「堺東の方の幼稚園でクリスマス会やるんで、今日と明日はお留守」
「お坊さんがクリスマスやるの?」
「うん、サンタのコス着て子どもらにプレゼント配って、いっしょにパーティーやったりするんよ」
「アハハ、そうなんだ」
「テイ兄ちゃん、若いし、イチビリやから、こういう仕事にはうってつけ。まあ、頼子さんも落ち着けるやろしね」
「そうね、知ったら悔しがるかもね(o^―^o)」
今日の頼子さんは、そっとしといてあげたいから、テイ兄ちゃんは留守で正解。
「除夜の鐘とかは、突いたりするの?」
「それは無いわ。街の中のお寺やから、いろいろ騒音とかね」
「そうなんだ……除夜の鐘が騒音だなんて、ちょっと寂しいわね」
「坊主の孫やけど、ここの釣鐘が鳴ってるの聞いたことないよ」
「鳴らずの鐘なんだ」
「うん……」
ゴーーーーーーーーーーーーン!
「「え!?」」
ものごっつい近くで鐘の音がした。まちがいない、これは、うちの釣鐘の音や!
「……ふぇ?」
頼子さんも目え覚ました。でもって、釣鐘堂に三人で向かった。
いつもは本堂でコタツを囲んでる檀家のお婆ちゃんらも釣鐘堂の下に集まって見上げてる。
で、伯父さんが作務衣姿で撞木を引いて、もう一発……
ゴーーーーーーーーーーーーン!
お婆ちゃんらが手を合わせてナマンダブを唱える。
「大丈夫ですね、ヒビとかは入っていないです」
ヘッドホンして、なんやら機械を持った作業着の人が言った。
「ほんなら、大丈夫ですねんな」
伯父さんが頷く。米田さんのお婆ちゃんに「なにしてるんですか?」と聞いてみる。
「釣鐘の健康チェックやねんて、安全のために二年に一回検査するんや」
ああ、なるほど。
これでしまいの話やねんけど、頼子さんの心に火が点いてしもた。
「除夜の鐘が突きたい!」
早手回しに、制服の袖をまくり上げる頼子さんであった!
あのう、うちは除夜の鐘は突かへんのんですけど……頼子さんの耳には入らないのであった。
107『二転三転』
頼子さんのお祖母さんの来阪が突如中止になった!
なんでも、緊急にヤマセンブルグ議会が臨時招集されることになって、議会は女王の開会宣言が無いと開けないかららしい。
「うん、イギリスがEUを離脱するんで、その緊急対策を審議するんだって」
頼子さんは一人で堺に戻ってきて学校とうちのお寺にお詫びに回ってきて、時間を割いて、あたしと留美ちゃんにも説明してくれた。
「いやあ、いまのわたしはコタツでダミアをモフモフできたらいいよ~」
ニャ~
頼子さんは首までコタツに潜り込んで、ダミアをモフってるうちに寝てしもた。
普段は大人びて見える頼子さんやけど、こうやって口を半開きにして寝てる姿は、やっと十五歳の少女や。
「諦一さんは?」
留美ちゃんがイタズラっ子の表情で聞く。留美ちゃんは真面目一方の子ぉやから、こういう表情をするのんは珍しい。それだけ、うちらの文芸部に慣れてきたんや。ほんで、このゆる~い文芸部の雰囲気はいつにかかって頼子さんの人柄の現れ。
その頼子さんが子どもっぽく見えて、留美ちゃんが大人びてるのは、嬉しいし、逆説めいて面白い。
「堺東の方の幼稚園でクリスマス会やるんで、今日と明日はお留守」
「お坊さんがクリスマスやるの?」
「うん、サンタのコス着て子どもらにプレゼント配って、いっしょにパーティーやったりするんよ」
「アハハ、そうなんだ」
「テイ兄ちゃん、若いし、イチビリやから、こういう仕事にはうってつけ。まあ、頼子さんも落ち着けるやろしね」
「そうね、知ったら悔しがるかもね(o^―^o)」
今日の頼子さんは、そっとしといてあげたいから、テイ兄ちゃんは留守で正解。
「除夜の鐘とかは、突いたりするの?」
「それは無いわ。街の中のお寺やから、いろいろ騒音とかね」
「そうなんだ……除夜の鐘が騒音だなんて、ちょっと寂しいわね」
「坊主の孫やけど、ここの釣鐘が鳴ってるの聞いたことないよ」
「鳴らずの鐘なんだ」
「うん……」
ゴーーーーーーーーーーーーン!
「「え!?」」
ものごっつい近くで鐘の音がした。まちがいない、これは、うちの釣鐘の音や!
「……ふぇ?」
頼子さんも目え覚ました。でもって、釣鐘堂に三人で向かった。
いつもは本堂でコタツを囲んでる檀家のお婆ちゃんらも釣鐘堂の下に集まって見上げてる。
で、伯父さんが作務衣姿で撞木を引いて、もう一発……
ゴーーーーーーーーーーーーン!
お婆ちゃんらが手を合わせてナマンダブを唱える。
「大丈夫ですね、ヒビとかは入っていないです」
ヘッドホンして、なんやら機械を持った作業着の人が言った。
「ほんなら、大丈夫ですねんな」
伯父さんが頷く。米田さんのお婆ちゃんに「なにしてるんですか?」と聞いてみる。
「釣鐘の健康チェックやねんて、安全のために二年に一回検査するんや」
ああ、なるほど。
これでしまいの話やねんけど、頼子さんの心に火が点いてしもた。
「除夜の鐘が突きたい!」
早手回しに、制服の袖をまくり上げる頼子さんであった!
あのう、うちは除夜の鐘は突かへんのんですけど……頼子さんの耳には入らないのであった。
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