107 / 432
107『二転三転』
しおりを挟む
せやさかい
107『二転三転』
頼子さんのお祖母さんの来阪が突如中止になった!
なんでも、緊急にヤマセンブルグ議会が臨時招集されることになって、議会は女王の開会宣言が無いと開けないかららしい。
「うん、イギリスがEUを離脱するんで、その緊急対策を審議するんだって」
頼子さんは一人で堺に戻ってきて学校とうちのお寺にお詫びに回ってきて、時間を割いて、あたしと留美ちゃんにも説明してくれた。
「いやあ、いまのわたしはコタツでダミアをモフモフできたらいいよ~」
ニャ~
頼子さんは首までコタツに潜り込んで、ダミアをモフってるうちに寝てしもた。
普段は大人びて見える頼子さんやけど、こうやって口を半開きにして寝てる姿は、やっと十五歳の少女や。
「諦一さんは?」
留美ちゃんがイタズラっ子の表情で聞く。留美ちゃんは真面目一方の子ぉやから、こういう表情をするのんは珍しい。それだけ、うちらの文芸部に慣れてきたんや。ほんで、このゆる~い文芸部の雰囲気はいつにかかって頼子さんの人柄の現れ。
その頼子さんが子どもっぽく見えて、留美ちゃんが大人びてるのは、嬉しいし、逆説めいて面白い。
「堺東の方の幼稚園でクリスマス会やるんで、今日と明日はお留守」
「お坊さんがクリスマスやるの?」
「うん、サンタのコス着て子どもらにプレゼント配って、いっしょにパーティーやったりするんよ」
「アハハ、そうなんだ」
「テイ兄ちゃん、若いし、イチビリやから、こういう仕事にはうってつけ。まあ、頼子さんも落ち着けるやろしね」
「そうね、知ったら悔しがるかもね(o^―^o)」
今日の頼子さんは、そっとしといてあげたいから、テイ兄ちゃんは留守で正解。
「除夜の鐘とかは、突いたりするの?」
「それは無いわ。街の中のお寺やから、いろいろ騒音とかね」
「そうなんだ……除夜の鐘が騒音だなんて、ちょっと寂しいわね」
「坊主の孫やけど、ここの釣鐘が鳴ってるの聞いたことないよ」
「鳴らずの鐘なんだ」
「うん……」
ゴーーーーーーーーーーーーン!
「「え!?」」
ものごっつい近くで鐘の音がした。まちがいない、これは、うちの釣鐘の音や!
「……ふぇ?」
頼子さんも目え覚ました。でもって、釣鐘堂に三人で向かった。
いつもは本堂でコタツを囲んでる檀家のお婆ちゃんらも釣鐘堂の下に集まって見上げてる。
で、伯父さんが作務衣姿で撞木を引いて、もう一発……
ゴーーーーーーーーーーーーン!
お婆ちゃんらが手を合わせてナマンダブを唱える。
「大丈夫ですね、ヒビとかは入っていないです」
ヘッドホンして、なんやら機械を持った作業着の人が言った。
「ほんなら、大丈夫ですねんな」
伯父さんが頷く。米田さんのお婆ちゃんに「なにしてるんですか?」と聞いてみる。
「釣鐘の健康チェックやねんて、安全のために二年に一回検査するんや」
ああ、なるほど。
これでしまいの話やねんけど、頼子さんの心に火が点いてしもた。
「除夜の鐘が突きたい!」
早手回しに、制服の袖をまくり上げる頼子さんであった!
あのう、うちは除夜の鐘は突かへんのんですけど……頼子さんの耳には入らないのであった。
107『二転三転』
頼子さんのお祖母さんの来阪が突如中止になった!
なんでも、緊急にヤマセンブルグ議会が臨時招集されることになって、議会は女王の開会宣言が無いと開けないかららしい。
「うん、イギリスがEUを離脱するんで、その緊急対策を審議するんだって」
頼子さんは一人で堺に戻ってきて学校とうちのお寺にお詫びに回ってきて、時間を割いて、あたしと留美ちゃんにも説明してくれた。
「いやあ、いまのわたしはコタツでダミアをモフモフできたらいいよ~」
ニャ~
頼子さんは首までコタツに潜り込んで、ダミアをモフってるうちに寝てしもた。
普段は大人びて見える頼子さんやけど、こうやって口を半開きにして寝てる姿は、やっと十五歳の少女や。
「諦一さんは?」
留美ちゃんがイタズラっ子の表情で聞く。留美ちゃんは真面目一方の子ぉやから、こういう表情をするのんは珍しい。それだけ、うちらの文芸部に慣れてきたんや。ほんで、このゆる~い文芸部の雰囲気はいつにかかって頼子さんの人柄の現れ。
その頼子さんが子どもっぽく見えて、留美ちゃんが大人びてるのは、嬉しいし、逆説めいて面白い。
「堺東の方の幼稚園でクリスマス会やるんで、今日と明日はお留守」
「お坊さんがクリスマスやるの?」
「うん、サンタのコス着て子どもらにプレゼント配って、いっしょにパーティーやったりするんよ」
「アハハ、そうなんだ」
「テイ兄ちゃん、若いし、イチビリやから、こういう仕事にはうってつけ。まあ、頼子さんも落ち着けるやろしね」
「そうね、知ったら悔しがるかもね(o^―^o)」
今日の頼子さんは、そっとしといてあげたいから、テイ兄ちゃんは留守で正解。
「除夜の鐘とかは、突いたりするの?」
「それは無いわ。街の中のお寺やから、いろいろ騒音とかね」
「そうなんだ……除夜の鐘が騒音だなんて、ちょっと寂しいわね」
「坊主の孫やけど、ここの釣鐘が鳴ってるの聞いたことないよ」
「鳴らずの鐘なんだ」
「うん……」
ゴーーーーーーーーーーーーン!
「「え!?」」
ものごっつい近くで鐘の音がした。まちがいない、これは、うちの釣鐘の音や!
「……ふぇ?」
頼子さんも目え覚ました。でもって、釣鐘堂に三人で向かった。
いつもは本堂でコタツを囲んでる檀家のお婆ちゃんらも釣鐘堂の下に集まって見上げてる。
で、伯父さんが作務衣姿で撞木を引いて、もう一発……
ゴーーーーーーーーーーーーン!
お婆ちゃんらが手を合わせてナマンダブを唱える。
「大丈夫ですね、ヒビとかは入っていないです」
ヘッドホンして、なんやら機械を持った作業着の人が言った。
「ほんなら、大丈夫ですねんな」
伯父さんが頷く。米田さんのお婆ちゃんに「なにしてるんですか?」と聞いてみる。
「釣鐘の健康チェックやねんて、安全のために二年に一回検査するんや」
ああ、なるほど。
これでしまいの話やねんけど、頼子さんの心に火が点いてしもた。
「除夜の鐘が突きたい!」
早手回しに、制服の袖をまくり上げる頼子さんであった!
あのう、うちは除夜の鐘は突かへんのんですけど……頼子さんの耳には入らないのであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……

ふらっとお立ち寄りください〜ココア専門店『フラット』〜
高羽志雨
ライト文芸
ココア専門店『フラット』は、カウンター席が10席だけの小さな店。
提供するメニューは、ココアのみ。
開店して半年。千帆は一人で細々と営業している。
来店する客は、のんびりと話し込んでいく人が多い。
さて、今日のお客さまは…?
タイムカプセル
森羅秋
ライト文芸
今年二十歳になった牧田北斗は、週末にのんびりテレビを見ていたのだが、幼馴染の富士谷凛が持ってきた、昔の自分達が書いたという地図を元にタイムカプセルを探すことになって…?
子供の頃の自分たちの思い出を探す日の話。
完結しました。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
咲かない桜
御伽 白
ライト文芸
とある山の大きな桜の木の下で一人の男子大学生、峰 日向(ミネ ヒナタ)は桜の妖精を名乗る女性に声をかけられとあるお願いをされる。
「私を咲かせてくれませんか?」
咲くことの出来ない呪いをかけられた精霊は、日向に呪いをかけた魔女に会うのを手伝って欲しいとお願いされる。
日向は、何かの縁とそのお願いを受けることにする。
そして、精霊に呪いをかけた魔女に呪いを解く代償として3つの依頼を要求される。
依頼を通して日向は、色々な妖怪と出会いそして変わっていく。
出会いと別れ、戦い、愛情、友情、それらに触れて日向はどう変わっていくのか・・・
これは、生きる物語
※ 毎日投稿でしたが二巻製本作業(自費出版)のために更新不定期です。申し訳ありません。
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる