せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

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105『女王陛下の来日』

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せやさかい

105『女王陛下の来日』 

 

 
 マリア・アレクサンドラ・メアリー・ヤマセンというのがフルネーム。

 
 誰のかと言うと、頼子さんのお婆ちゃん。

 つまり、ヤマセンブルグ公国女王陛下の御名なんです。

 ヨリコ・スミス・メアリー・ヤマセンというのが頼子さんのフルネーム。

 日本の戸籍では、夕陽丘・スミス・頼子 と書く。

 夕陽丘はお母さんの姓。いろんな事情で使い分けてるらしい。


 ホーーー

 
 リビングのみんなが感心する。

 うちのみんなでテレビを見てる。

 テレビには、空港の特別ゲートからお出ましになるヤマセンブルグ公国の女王陛下が大写しになっていて、カメラが、ちょっと引きになって、お出迎えの人々がフレームに入ってきたとこ。

 外務大臣はじめ日本側の偉い人たちと、在日ヤマセンブルグの人たちが居並ぶところに女王陛下が、ニコニコとお出ましになる。陛下の後ろには、夏休みにお世話になったジョン・スミスとソフィアさんの姿も見える。

 そこに花束を抱えて現れたんが、我らが頼子さん。

 頼子さんは、なんと学校の制服姿!

 花束を渡して、女王陛下とハグし合う頼子さん。一斉にフラッシュが焚かれて、大雨のようなシャッターの音。

 頼子さんの姿に被って名前のテロップが被る。

 ヨリコ・スミス・メアリー・ヤマセン 

 で、リビングのみんなが「ホーーーー」となったわけ。

 
 頼子さんは女王陛下の孫であり、ヤマセンブルグ公国の王位第一継承者です。お父様が先年お亡くなりになったヘンリー皇太子、お母様はお名前は伏せられていますが大阪府在住の日本人女性であります。現在はお召し物でも明らかですが、堺市立安泰中学の三年生。日本国籍も持っていらっしゃって、二十一歳の誕生日までに国籍を選択され、ヤマセンブルグの国籍だけを選択された時に正式の王位継承者になられます。この夏にはヤマセンブルグを訪れ、女王陛下や国民の皆さんの歓待を受けられ、歴代の国王や王族の方々が葬られている国立墓地にも献花されています。公の場に姿を現されるのも、日本国内において女王陛下とお並びになられるのも今回が初めての事で、事前に知らされていた報道関係者は頼子さんが、どのような服装で現れるのか関心を寄せていたのですが、学校の制服であったことに、現在の頼子さんのお気持ちが伺えます。なお、女王陛下は……。

 
 リポーターは、女王の予定を言う前に頼子さんのことを一分以上もレポートした。

 先月「お祖母ちゃんが来るのよおおお!」とアタフタしてたのは記憶にも新しいねんけど、あのアタフタは、こういう取り上げら方をするのを見越してたからや。

 こんな大事なことを控えながら、紀香さんのことに気を配ってられたんは、すごいことやと思う。

「わたしも着ていた制服だけど、頼子ちゃんが着てると、なんか、すごくかっこいい制服に見えるわねえ」

「うんうん」

 コトハちゃんが言うとおばちゃんも頷く。みんなには見えてへんけど、同じ制服着た幽霊のノリちゃんもテレビの横で頷いてる。

 テイ兄ちゃんが惚れ直したいう感じでミカンの皮を剥く手を休めてる。

 本気ではないと思うねんけど、そういう目で頼子さんを見んといて欲しいんですけど。

 ロリコン……というには、画面の頼子さんは堂々として……いや、歳の差や!

 頼子さんは十五歳、テイ兄ちゃんは二十三歳やねんで。

 その歳の差八年!

 え、八年……? 

 これて、ありうる歳の差?

 あかんあかん、相手は将来、ヤマセンブルグの女王になるかもしれん人やで。

 だいいち、ヤマセンブルグ王家はカトリックや、浄土真宗は合わへんし。

 

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