せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

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076『ダンジリの事故』

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せやさかい

076『ダンジリの事故』 

 

 
 ―― 大丈夫やったあ? ――

 
 そんなメールが入ってきた。

 差出人は、小学校の友だちのAさん。

 サブジェクトだけでは分からへんので、本文を読む。

 
 堺でダンジリの事故があったってニュース。ひょっとしたらお祭り好きのさくらが巻き込まれてるんちゃうかと、心配でメールしました。

 
 ダンジリの事故?

 わけわからへんので、ネットニュースで確認。

 あった、これや。

 鳳の方のお祭りで、引き回してたダンジリが電柱に激突して怪我人が出てる。

 知らんかった。

 ダンジリの事故があったことと、堺にダンジリがあったことを。

 ダンジリいうのは、てっきり岸和田やと思てた。

 ユーチューブで検索したら動画が何本か投稿されてた。電柱に激突すると衝撃で屋根がすっ飛んで、ダンジリに乗ってた人がボロボロと落ちて、直後にダンジリに吊り下げられてた提灯が一斉に消えてしもてた。

「電柱が勝ったんだ」

 いっしょに見てたコトハちゃんが眉を顰める。

 コトハちゃんは想像力が豊かなんで、たまに言動が飛躍する。

 ダンジリいうのは重さが四トンもあるらしい、大型乗用車の二台分以上。それがドッカーンとぶつかったんやから、電柱が折れても不思議やない。

 こないだ関東を襲った台風は何百本も電柱を倒していった。それをリビングのテレビで観てて――電柱ってもろいんだ――と従姉同士で思たわけ。せやさかい、いまの感想は、よう分かった。

「ダンジリ保険があるんちゃうか?」

 晩ご飯のときに話題になると、おっちゃんがお茶を飲みながら言う。

「「ダンジリ保険?」」

 コトハちゃんと声が揃う。

「うん、ダンジリで事故がおこったら保証してくれる保険があるんや。怪我した人には気の毒やけど、ま、保証いう点では安心なんちゃうかなあ」

「せやけど、それは岸和田だけとちごたかなあ?」

 お祖父ちゃんが口をはさんで、伯父さんは「せやったかなあ」と首を捻る。

 あたし的には――堺も広いねんなあ――と感心する。

 お寺いうのは、地域の情報センターみたいなとこがあって、近所のことは、よう伝わって来る。ダンジリの情報に疎いのは、それだけ事故が起こった地域から離れてるいうことや。

 念のため、グーグルマップで確認したら、四キロは離れてる。電車で、駅五つ分。

 一口に堺いうても、広いなあと実感。

 
「でもさ、さくら……」

 
 風呂上がりのコトハちゃんが頭を乾かしながら、あたしの部屋にやってきた。

「Aさんがメールしてきたのは、これをネタにさくらに会いたいってサインじゃないかなあ。事故の怪我人は男ばっかというのはニュースでも分かることだしさ」

「あ、そっか」

 さすが、想像力のコトハちゃん。

 スマホを取り出して、Aさんに長いメールを打って、こんど一回会おうよと送る。久々のAさんやから、文章考えて、十分ほどかかってしもた。

 やっと打ち終わって振り返ると、コトハちゃんはダミアと遊びまくっておりました。

 そうか、これをネタにダミアと遊びたかったんやな。

 その夜は、ダミアを真ん中に挟んで二人と一匹で寝てしまいました。

 

 
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