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052『エディンバラ・8』

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せやさかい

052『エディンバラ・8』 

 

 

 御堂筋みたいなもんかな……。

 そう言ってから、頼子さんはコロコロと笑った。

 なにが御堂筋かと言うと、エディンバラの旅も一週間になった昼下がり。

 わたしらは、エディンバラのメインストリートであるロイヤルマイルに立っている。

 エディンバラは、お城とホリルード宮殿を結ぶロイヤルマイルがメインストリートで、その点が、御堂筋を中心としている大阪に似ているんやそうです。ようは「あんたたちは、エディンバラの中心にいるのよ」という説明なんやけど、ちょっと強引なんで、頼子さんは自分で言うて笑っているという次第。

 お城を皮切りに、四日かけてロイヤルマイルに面してるところを見て回った。セント・ジャイルズ大聖堂と付属のクラフトマンショップ。クラフトマンショップは普通のお土産屋さんでは売ってないコアなハンドメイドな品物が一杯。最初は見て回るだけにして、ヒルウッドに戻ってから絞り込んであくる日にお買い物。

 何を買ったかは、言い出すとキリが無いので、帰ってから別の所で語りたいと思います。

 大聖堂前の銅像で待ち合わせ、暇なんで、銅像の銘板を読んでみる……て、中学一年の英語で分かるわけないねんけど、名前だけはなんとなく『Adam Smith』……アダム・スミス……聞いたことがある。すると、最初にやってきたジョン・スミスが「あ、ぼくのご先祖様」とシラッと言う。

「うわあ、そうなんや!」

 苗字が同じスミスやし、性格のええわたしは直ぐに信じてしまう。

「それ、ちがいます!」

 真面目な顔でソフィアさんが否定する。

「『アダム・スミスはエディンバラ出身の経済学者で、近代経済学の父と言われています。国富論を著わし、経済という物は神の見えざる手によって予定調和に達する』と言いました」

 中学生相手には難しい説明を翻訳機を通して説明してくれる。なるほどねえ……とか感心したけど意味は分かってない。生真面目なソフィアさんには真っ直ぐ向きあわならあかんと思うからです。

「銅像なら、こっちの方が分かりやすいわよ」

 戻ってきた頼子さんが手招きする。

 

 それは、イギリスの忠犬ハチ公やった!

 

 160年ほど昔、エディンバラ警察の警官やったジョン・グレイが亡くなると、飼い犬やったボビーは死ぬまで十四年間、ずっとジョン・グレイのお墓を離れませんでしたという美談。ハチ公もそうやったけど、地域の人が「おまえは、えらいやっちゃなあ!」と感激して、墓守をするボビーにエサをあげたり世話をしたげたりしたそう。

「ジョン・グレイこそがご先祖なんだ。ジョン・グレイ、ジョン・スミス。ね」

 ジョン・スミスが、またかます。

 真面目な留美ちゃんが「そうなんですか!」と感激しかける。

「ちゃう、ジョンは名前で苗字とちがうで!」

「な、なんだ(#ω#)」

 

 それからエレファントハウスというカフェレストランに向かう。

 

 ここは、J.K.ローリングが毎日のように通って名作を書いたお店!

 分かる? J.K.ローリングですよ、J.K.ローリング!

 へへ、わたしも最初は分からへんかったんやけど、留美ちゃんは「え、うっそー!?」と一発で感動。

 看板の横に書いてあるタイトルでビックリ!

 ここは『ハリーポッター』が生まれたお店なんですのよ!

 

 頼子さんは文芸部の部長やけど、あんまり推薦図書も言わないし、しつこく感想を求めたりもせえへん。

 普段は、部室の図書分室でお茶ばっかりしてる。時々留美ちゃんが質問したりしてすると、びっくりするくらい熱を込めて話してくれたり。わたしは、二人の横で、ひたすら感心してるばっかし。

 J.K.ローリングが毎日ハリポタを書いてた横の席でランチとお茶。

「なんだか、自分も書いてみようって気がするでしょ」

「「は、はい!」」

 返事こそ留美ちゃんと揃ったけども「いやいや、気分だけですよって(;^_^」と逃げを打つ。

「いいのよ、気になるだけで十分だから」

 

 エディンバラ合宿は二週目に入ろうとしていた。

 

 
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