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045『エディンバラ・1』

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せやさかい

045『エディンバラ・1』 

 

 十三時間かかってエディンバラに着いた。

 
 言うてしまうと簡単やねんけど、実際は驚きの連続。

 飛行機いうのは出国ゲートを潜ると一本道で、突き当りに飛行機の搭乗口になってるはず。

 しかし、わたしらの乗るのんは自家用ジェット。

 どこをどう通ったんかわからん通路を通って外に出て、いっぱい停まってる普通の旅客機を尻目にテクテク歩く。

 地上で見る旅客機はビックリするほど大きい。旅客機たちのでっかい翼とお尻に圧倒されながら進む。

「わ、かわいい」

 大きな旅客機群の向こうに、かわいらしいジェット旅客機が見えて、日ごろ寡黙な留美ちゃんが真っ先に声をあげる。

「狭そうに見えるけど、自家用機だからゆったりしてるよ」

 頼子さんの説明通り、飛行機の翼は目の高さで、タラップも七段しかない。普通の民家で階段は十三段やから、小ささが分かってもらえると思う。

「「うわーー!」」 

 中に入って、ビックリ!

 マッサージ機かいうくらい立派なシートは両側一列ずつ、通路は普通の旅客機よりも幅広。乗り心地はこっちの方が断然いい!

「倒すと簡易ベッドになるから、ほら、こんな感じ」

 頼子さんが見本を見せてくれて、試しにやってみる。

 簡易ベッドなんて、とんでもない。ひごろ使ってる自分のベッドよりも感じがグッドです。

 落ち着くと、クルーが三人乗り込んできた。おっさん一人と、おねーさん二人。

「長い飛行になります、途中ご用がございましたらご遠慮なく申し付けてください」

 おっさんが上手い日本語で挨拶してくれる。なかなか感じのええ機長さん……と思ったら、機長さんと副操縦士は二人のおねーさん。

 頼子さんのことは「お嬢様」とか呼ぶのかと思たら、普通に「頼子さん」と呼んでる。

 

 十三時間の飛行中、あれこれ面白いことや興味深いことがあったんやけど、それ書いてるとエディンバラのことが、いつまでたっても書かれへんので、又の機会にいたします。

 

 ユーラシア大陸を横断して、ブリテン島北部のエディンバラには海の方からアプローチ。

 黒々とした海の向こうに緑の陸地。日本に似たような島国……と思てたら、平たい緑が続く大地の上に、高層建造物は見当たらず、家々の間も緑地や林が点在してて、北海道(行ったことないけど)の風景に似てる。

 入国手続きを済ませて、空港ビルを出るとバスや車が出入りするロータリー。案内板が全部英語いうこともあるねんけど、立体駐車場と道路以外に見えるものは空港の施設を除いて畑か空き地か分からへん空間。ちょっと意表を突かれた。

「あ、迎えが来たよ」

 頼子さんが手を挙げると、黒塗りのごっついセダンが近づいてきた。

「それでは、お屋敷までお連れいたします」

 運転席から出てきて、ドアを開けてくれたんは、飛行機に乗ってたおっさん。機内で聞かされたお名前はジョン・スミス。どこかで聞いたことのある名前やねんけど、思い出されへん。なんというても、ここはスコットランドの中心地エディンバラやねんさかい、見るもの聞くもの珍しいものだらけ。

 わたしらの合宿が始まった!
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