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019『頼子さんの企み』
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せやさかい
019『頼子さんの企み』
まことに申し訳ありませんでした。
角を曲がったら職員室というところで聞こえてきた。頼子さんが神妙に謝る声が。
留美ちゃんと二人でフリーズしてしもた。ただ事やない雰囲気やから。
「鏡……」
留美ちゃんが小さな声で廊下の鏡を指さした。
鏡には、男子と、そのお母さんらしいオバチャンに深々と頭を下げてる頼子さんと頼子さんの担任、その後ろのは教頭先生。
「あ、女装させられてた男子やわ」
留美ちゃんの観察で事態が呑み込めた。こないだ、正門のとこで男子に女子の制服、頼子さんが男子の制服を着て制服改定のアピールしてた。男子はむっちゃ恥ずかしそうな顔してた……その件で親がねじ込んできたんや。
見たらあかんもんを見てしもた……。
噂は学校中に広まった。
部活で、どんな顔したらええねんやろ……ところが、当の頼子さんはアッケラカ~ンとしてた。
いつもの紅茶を淹れた後、俯いてるわたしらに頼子さんは切り出した。
「心配してくれたのよね、ありがとう」
「あ……いえ」
わたしは、かろうじて声が出たけど、留美ちゃんはうつむいたまま。
「こりゃ、きちんと話さなきゃいけないわね……これ、見てくれる?」
頼子さんは、一枚のプリントを差し出した、プリントには『2020年度からの制服改定』とタイトルがあって、頼子さんが書いてたのとは別の制服プランが載ってる。頼子さんのとは違うねんけど、女子のズボン、男子のスカート着用を認めるという点に変わりはなかった。そして、下の方には安泰中学校制服改定委員会と書いてある。
「これ、学校のんですか?」
「うん、わたしの件が無かったら、今日のホームルームで配られるはずだった」
「学校が企んでたんですか!?」
留美ちゃんは手厳しい言い方をする。こないだの部活で頼子さんのプラン聞かされて動揺してたもんなあ。
「うん、きょう三田くんのお母さんがねじ込んできたので、タイミングが悪いって中止になったの」
「え、えと……どういうことなんですか?」
男子のスカートを喜んでた頼子さん。正門のとこでファッションショーまでやって、頼子さんはジェンダーフリーの制服に大賛成やったはず……。
「毒を制するには毒をもってよ」
「あ!」
留美ちゃんが、パッと明るい顔をした。
「わかりました! 先に生徒に見せておいてヒンシュクになるのを見越してたんですね! 男子も、わざわざ嫌がる子にやらせて……ひょっとして、親がねじ込んでくることも計算に入ってた!?」
「ハハハ、留美ちゃん勘いいよ!」
「「そうだったんだ……」」
わたし一人が反対したって、学校って動かないじゃない。先生からも睨まれるしね。あえてね」
「さっすが先輩!!」
「う~~~ん」
わたしは感心したけど、留美ちゃんは腕を組んだ。
「なにか?」
「でも、スカート穿かされた男子可哀想……なことないですか?」
「三田と黒田はね、クラスの子イジメてたのよ。それで、バラされたくなかったら手伝ってと、お願いしたわけ」
「……それって(恐喝なんとちゃいますのん?)」
「なに?」
「いいえ、なんでも」
「あの二人、まだイジメてた子には謝ってないから、これから第二幕。そーだ、わたし、明日から修学旅行だからね。この問題も修学旅行までには片づけたかったから、まあ、わたし的には満足。帰って来るのは月曜の夜だから、二人に会うのは火曜日かな。ま、お土産とか楽しみにね」
「「はい!」」
「それと、部活では敬語禁止、いいわね」
「は、はい」
返事はしたけど、こんなスゴイ先輩に友だち言葉……ちょっと無理です。
019『頼子さんの企み』
まことに申し訳ありませんでした。
角を曲がったら職員室というところで聞こえてきた。頼子さんが神妙に謝る声が。
留美ちゃんと二人でフリーズしてしもた。ただ事やない雰囲気やから。
「鏡……」
留美ちゃんが小さな声で廊下の鏡を指さした。
鏡には、男子と、そのお母さんらしいオバチャンに深々と頭を下げてる頼子さんと頼子さんの担任、その後ろのは教頭先生。
「あ、女装させられてた男子やわ」
留美ちゃんの観察で事態が呑み込めた。こないだ、正門のとこで男子に女子の制服、頼子さんが男子の制服を着て制服改定のアピールしてた。男子はむっちゃ恥ずかしそうな顔してた……その件で親がねじ込んできたんや。
見たらあかんもんを見てしもた……。
噂は学校中に広まった。
部活で、どんな顔したらええねんやろ……ところが、当の頼子さんはアッケラカ~ンとしてた。
いつもの紅茶を淹れた後、俯いてるわたしらに頼子さんは切り出した。
「心配してくれたのよね、ありがとう」
「あ……いえ」
わたしは、かろうじて声が出たけど、留美ちゃんはうつむいたまま。
「こりゃ、きちんと話さなきゃいけないわね……これ、見てくれる?」
頼子さんは、一枚のプリントを差し出した、プリントには『2020年度からの制服改定』とタイトルがあって、頼子さんが書いてたのとは別の制服プランが載ってる。頼子さんのとは違うねんけど、女子のズボン、男子のスカート着用を認めるという点に変わりはなかった。そして、下の方には安泰中学校制服改定委員会と書いてある。
「これ、学校のんですか?」
「うん、わたしの件が無かったら、今日のホームルームで配られるはずだった」
「学校が企んでたんですか!?」
留美ちゃんは手厳しい言い方をする。こないだの部活で頼子さんのプラン聞かされて動揺してたもんなあ。
「うん、きょう三田くんのお母さんがねじ込んできたので、タイミングが悪いって中止になったの」
「え、えと……どういうことなんですか?」
男子のスカートを喜んでた頼子さん。正門のとこでファッションショーまでやって、頼子さんはジェンダーフリーの制服に大賛成やったはず……。
「毒を制するには毒をもってよ」
「あ!」
留美ちゃんが、パッと明るい顔をした。
「わかりました! 先に生徒に見せておいてヒンシュクになるのを見越してたんですね! 男子も、わざわざ嫌がる子にやらせて……ひょっとして、親がねじ込んでくることも計算に入ってた!?」
「ハハハ、留美ちゃん勘いいよ!」
「「そうだったんだ……」」
わたし一人が反対したって、学校って動かないじゃない。先生からも睨まれるしね。あえてね」
「さっすが先輩!!」
「う~~~ん」
わたしは感心したけど、留美ちゃんは腕を組んだ。
「なにか?」
「でも、スカート穿かされた男子可哀想……なことないですか?」
「三田と黒田はね、クラスの子イジメてたのよ。それで、バラされたくなかったら手伝ってと、お願いしたわけ」
「……それって(恐喝なんとちゃいますのん?)」
「なに?」
「いいえ、なんでも」
「あの二人、まだイジメてた子には謝ってないから、これから第二幕。そーだ、わたし、明日から修学旅行だからね。この問題も修学旅行までには片づけたかったから、まあ、わたし的には満足。帰って来るのは月曜の夜だから、二人に会うのは火曜日かな。ま、お土産とか楽しみにね」
「「はい!」」
「それと、部活では敬語禁止、いいわね」
「は、はい」
返事はしたけど、こんなスゴイ先輩に友だち言葉……ちょっと無理です。
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