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008『瀬田と田中とショ-トカットにしたあたし』
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せやさかい・008
『瀬田と田中とショ-トカットにしたあたし』
わずか十三年の人生やけど、身についた習慣と言うのは直しにくい。
その一つがポニーテール。
平均よりも背の低いわたしは、七つの歳からポニテにしてる。
それも、チョンマゲか言うくらい高いとこで結んで背を高く見せてる。AKBで総監督やってたタカミナにあやかって、お母さんが最初にやった。お母さんは「さくらが言い出した」と言う。ま、どっちでもええねんけど、身についた習慣であることには間違いない。
入学式の日に、お母さんに言われてポニテを低くして、ほとんどヒッツメにした。ヒッツメの方が一般的やし、地味に見える。
しかし、一週間通ううちに元の高さに戻ってしもた。
「いっそ、切ってしまおか」
本堂の縁側で干した布団を取り込んでる時にお母さんが帰ってきて、そういうことになってしもた。
生まれて初めて美容院に行って、バッサリとショートカットにした。
大人の階段を一歩上った気ぃになって面白かってんけど、美容院の事は、また改めて。
入学して一週間しかたってないから、ショートにしたのに気ぃついたんは榊原さんだけ。
「いやあ、これから暑なりそうやからねえ(o^―^o)」
明るく返事して、榊原さんの空想を封じておく。
菅ちゃん(菅井先生は、三日目くらいから、こう呼ばれてる)が気ぃつかへんのはどうかと思う。
「掃除サボんなや!」
両手に箒を持ったまま階段を二段飛ばしで駆け下りて、校門のとこで待ち伏せた。ノラリクラリとやってきた瀬田と田中は――なんやこいつは?――いう顔をしとる。
あたしが、同じクラスの同じ掃除当番やいうことがとっさには分かってへん感じ。
先週に続いて二回目の掃除当番。
菅ちゃんの指導が甘いのに気付いた男子がサボりにかかってる。昨日も男子がサボって朝礼で注意されてたけど、菅ちゃんは押しが弱い。これはイケると踏んだ瀬田と田中がブッチしよったんや。ここで見過ごしたら菅ちゃんもわたしら女子も舐められる。せやさかいに、教室からダッシュできたんや。
「あ、ああ……」
田中は気弱そうにハンパな返事しとるけど、瀬田は舐めた薄ら笑いしとる。
「すまん、忘れとった。すぐ戻るから、先教室いっといてくれや」
「酒井さん、教室……もどろ」
榊原さんが気弱そうに袖を引く。
「いっしょに戻ってぇ!」
「喉乾いたから、水飲んでからいくわ」
「掃除すんでからにしてよ、ほら、箒!」
「水くらい飲ませろや」
「いま飲まなら死ぬんかい!?」
「わ、分かった分かった(^_^;)」
不承不承やけど、箒を持って回れ右しよった。玄関前の掃除監督やってた春日先生がニッコリ頷いてる。見てくれてはったんや。さすが学年主任の先生やと感動した。
ゴミ捨ては四人でジャンケン……負けてしもて、一人で行くことになる。
「ゴミ捨て場憶えときたいから付いていくわ」
なんと、気弱の田中が申し出る。「わたしも付いていく」と榊原さん。なんか、ひとり帰るのがきまり悪そうで、瀬田も無言で付いてきよる。
「ありがとうね、着いて来てくれて。うちも正門とこでガミガミ言うてごめん」
「あ、ええてええて」
「握手しとこ!」
「え、あ、いや……」
「せやさかいに、握手!」
むりやり四人で握手。瀬田は意外なくらい手に汗かいとった。そんなに悪い奴やなさそう。
菅ちゃんに言いつけたろ思たけど、ヤンペにした。
『瀬田と田中とショ-トカットにしたあたし』
わずか十三年の人生やけど、身についた習慣と言うのは直しにくい。
その一つがポニーテール。
平均よりも背の低いわたしは、七つの歳からポニテにしてる。
それも、チョンマゲか言うくらい高いとこで結んで背を高く見せてる。AKBで総監督やってたタカミナにあやかって、お母さんが最初にやった。お母さんは「さくらが言い出した」と言う。ま、どっちでもええねんけど、身についた習慣であることには間違いない。
入学式の日に、お母さんに言われてポニテを低くして、ほとんどヒッツメにした。ヒッツメの方が一般的やし、地味に見える。
しかし、一週間通ううちに元の高さに戻ってしもた。
「いっそ、切ってしまおか」
本堂の縁側で干した布団を取り込んでる時にお母さんが帰ってきて、そういうことになってしもた。
生まれて初めて美容院に行って、バッサリとショートカットにした。
大人の階段を一歩上った気ぃになって面白かってんけど、美容院の事は、また改めて。
入学して一週間しかたってないから、ショートにしたのに気ぃついたんは榊原さんだけ。
「いやあ、これから暑なりそうやからねえ(o^―^o)」
明るく返事して、榊原さんの空想を封じておく。
菅ちゃん(菅井先生は、三日目くらいから、こう呼ばれてる)が気ぃつかへんのはどうかと思う。
「掃除サボんなや!」
両手に箒を持ったまま階段を二段飛ばしで駆け下りて、校門のとこで待ち伏せた。ノラリクラリとやってきた瀬田と田中は――なんやこいつは?――いう顔をしとる。
あたしが、同じクラスの同じ掃除当番やいうことがとっさには分かってへん感じ。
先週に続いて二回目の掃除当番。
菅ちゃんの指導が甘いのに気付いた男子がサボりにかかってる。昨日も男子がサボって朝礼で注意されてたけど、菅ちゃんは押しが弱い。これはイケると踏んだ瀬田と田中がブッチしよったんや。ここで見過ごしたら菅ちゃんもわたしら女子も舐められる。せやさかいに、教室からダッシュできたんや。
「あ、ああ……」
田中は気弱そうにハンパな返事しとるけど、瀬田は舐めた薄ら笑いしとる。
「すまん、忘れとった。すぐ戻るから、先教室いっといてくれや」
「酒井さん、教室……もどろ」
榊原さんが気弱そうに袖を引く。
「いっしょに戻ってぇ!」
「喉乾いたから、水飲んでからいくわ」
「掃除すんでからにしてよ、ほら、箒!」
「水くらい飲ませろや」
「いま飲まなら死ぬんかい!?」
「わ、分かった分かった(^_^;)」
不承不承やけど、箒を持って回れ右しよった。玄関前の掃除監督やってた春日先生がニッコリ頷いてる。見てくれてはったんや。さすが学年主任の先生やと感動した。
ゴミ捨ては四人でジャンケン……負けてしもて、一人で行くことになる。
「ゴミ捨て場憶えときたいから付いていくわ」
なんと、気弱の田中が申し出る。「わたしも付いていく」と榊原さん。なんか、ひとり帰るのがきまり悪そうで、瀬田も無言で付いてきよる。
「ありがとうね、着いて来てくれて。うちも正門とこでガミガミ言うてごめん」
「あ、ええてええて」
「握手しとこ!」
「え、あ、いや……」
「せやさかいに、握手!」
むりやり四人で握手。瀬田は意外なくらい手に汗かいとった。そんなに悪い奴やなさそう。
菅ちゃんに言いつけたろ思たけど、ヤンペにした。
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