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63『海老の尻尾とバッテリー』

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ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)

第63話《海老の尻尾とバッテリー》さつき 




「さつきさんでしょ?」


 なんと、はるかさんから声がかかった……。


 そして、駅ビルのばけ天で天ぷらのコースをゴチになった。

「大阪の食べ物は、たいがい好きなんですけどね。どうも天ぷらは東京風でないと、食べた気がしないの」

 これは同感。クレルモンにいたとき、同じ寮の日本の子が天ぷらパーティーを開いてくれたが、関西風のサラダオイルで揚げたナマッチロイ天ぷらだったので、ちょっとショックだった。
 天ぷらと言えば、ゴマ油で揚げた香しいものだと子どもの頃から思っていた。

「何カ月ぶりだろ、東京の天ぷらなんて」

「ばけ天もね、他のお店じゃ、関西風にサラダオイル混ぜてるんだけどね、この大阪一号店だけ、東京の味のままなの」

 バリバリ

 はるかさんは、そう言ってエビ天を尻尾の先まで食べた。これも同じ習慣なんで嬉しかった。

「エビ天て、尻尾においしさが凝縮されてるんですよね」

「そうよね、残す人多いけど。本当の美味しさって、人が気づかないとこに隠れてるのよね」

「はるかさんみたいに?」

「ねえ、その敬語はやめない? 同い年なんだしさ」

「え、年上かと思ってた( ゚Д゚)!」

「ええぇ( ゚Д゚)!?」

「え、あ、いや……オーラというか、しっかりしてるし、大人びた印象がぁ……(^_^;)」

「あ、ああ……そうねぇ」

 あたしは、役者のオーラについて聞いてみた。

「オーラは、誰にだってあるわ。言ってみれば、その人の職業やら境遇からくるものでしょ。ただ、あたしたちの仕事って、人に夢を売る仕事だから特別に見えるんじゃないかな。さつきちゃんだって、特別なオーラするよ」

「どんな?」

「う~~ん……簡単にはオーラなんか発しませんよぉ的な?」

「プ、なにそれぇ?」

「フル充電したバッテリーみたい……な?」

「え、そんなの分かるの?」

「あ、特技なの。うちのお母さん、リモコンの電池入れ替える時に混ぜこぜにしちゃって新旧が分からなくなっちゃう人なんだけど、わたし、パッと見て分かっちゃう」

「え、超能力っぽい!」

「それでもお母さんはリモコンに入れて再確認するんだけどね」

「ハハ……あ、うちとそっち、お母さん同士知り合いだったよね?」

「そうそう! さくら訪ねてお邪魔した時分かってビックリした!」

「お母さん見直したよぉ、坂東友子のお仲間なら立派な作家だって」

「うちこそ『お母さん釈迦堂一葉(お母さんのペンネーム)の後輩なんだ!』って、そーそー、駆け出しの頃に一葉さんと撮ったって写真見せてくれたんだよ……あれ?」

 はるかちゃんのスマホは電池切れ。

「ヘッヘー、こういう時の為に……」

 バッグからモバイルバッテリーを取り出すはるかちゃん。

「……あ、あはは、こっちも切れてるし(^_^;)」

 アハハハハ(ᵔᗜᵔ*) (ᵔᗜᵔ*) !

 二人で笑って、最後のえび天を尻尾の先までバリバリ食べた。

 


☆彡 主な登場人物

佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
佐倉  さつき       さくらの姉
佐倉  惣次郎       さくらの父
佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
坂東 はるか        さくらの先輩女優
氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
秋元            さつきのバイト仲間
四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
四ノ宮 篤子        忠八の妹
明菜            惣一の女友達
香取            北町警察の巡査
クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 

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