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230『 戻れた!』
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RE・かの世界この世界
230『 戻れた!』テル
部室に戻れたらいいのにと思った。
だって、前回の旅立ちは駅前だった。
あの時、駅の改札を出ると、前を冴子が歩いていた。
ちょっと追い越したぐらいのタイミングで気が付いたことにして、ペコリと頭を下げるくらいの挨拶をしよう。
少し速足になって、肩が並んだところでペコリとお辞儀して――ああ、昨日の?――という感じで始めようとしていた(169『再びの決意』)。
そこから、ほんの知り合いから冴子との友だち関係を取り戻そうとしていた。
でも、後ろから自転車が来て、それを避けようとして、転んだ拍子に犬のウンコの上に手を突いて、おまけに、その手で冴子のスカートを掴んでしまった(;'∀')。
あそこに戻ったら、周りの人間からエンガチョされまくって最初から破局だ。
戻るなら部室のお布団の上!
そう念じていると、白い闇の中にうっすらと四角い灯りが浮かんできて、それが元作法室の部室の灯りだと気が付いて。
いっしゅんフワってブレーキがかかって、背中に軟らかいけどしっかりしたお布団の感触。
やったぁ!
取りあえずは、ババ掴みになることもなく部室に戻れた。
ソロっと首を動かす。
前回戻った時は、覗き込む二人の先輩の顔があった。
今回……部室に人影は無い。
覗き込まれるはイヤだけども、誰も居ないのは、ちょっと寂しい。
「先輩……キャ」
小さく呼んで横を向くと、オデコが中身の前頭葉ごと滑り落ちた。
よく見ると、オデコに掛けられていたタオルハンカチが落ちたんだ。
「あ、気がついた?」
死角になっていた足もとから優しい声がした。
「あ、美空先輩!?」
「ああ、よかったぁ。昨日から姿は現れていたんだけど、完全じゃなくて、熱も出てきたから……」
「先輩……」
一瞬キスされるのかと思ったら、先輩のオデコがくっついた。
「よかったぁ、もう熱は無いみたい」
「あ、ありがとうございます」
「みっちゃん頑張ってくれたから、ほら……」
モニターの三つのビル、いずれも半分以上が青に変わって、赤い部分はずいぶん減った。
「がんばった甲斐ありました?」
「うん、しばらくは大丈夫でしょうね。ありがとう、みっちゃん」
「あ、いいえ……左の方、ちょっとチラチラしてますね」
「ああ、まだちょっと不安定かなぁ……」
三つのビルは多次元世界の模式図だ。最初に部室に転がり込んだ時は、赤や橙色が多くて、模式図とは分からなかったけど見るからに不安定だった。
「それに、見て!」
先輩が拭うように手を振ると、模式図は青空ににたなびく日の丸に変わった。
「あ、白丸じゃなくなった!」
「うん、ちゃんと源氏が勝って、無事に日の丸が受け継がれることになったのよ」
与一さんの姿が浮かんだ。壇ノ浦からはエスケープしたけど、屋島の活躍、それと黄泉の国までがんばってくれたおかげで日の丸が確定したんだ。
「あのう、もう一つ聞いていいですか?」
「なに?」
ちょっと緊張した。
以前、試しにやったら、時美先輩が生まれない世界になってしまったことがあるからだ。
時美先輩の姿が見えないし、美空先輩は、そのことに触れようとしないし(-_-;)
「あの……時美先輩は?」
「え?」
「あの、志村時美先輩は?」
「え、だれ……それ?」
え……え……ええ( ゚Д゚)!?
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
230『 戻れた!』テル
部室に戻れたらいいのにと思った。
だって、前回の旅立ちは駅前だった。
あの時、駅の改札を出ると、前を冴子が歩いていた。
ちょっと追い越したぐらいのタイミングで気が付いたことにして、ペコリと頭を下げるくらいの挨拶をしよう。
少し速足になって、肩が並んだところでペコリとお辞儀して――ああ、昨日の?――という感じで始めようとしていた(169『再びの決意』)。
そこから、ほんの知り合いから冴子との友だち関係を取り戻そうとしていた。
でも、後ろから自転車が来て、それを避けようとして、転んだ拍子に犬のウンコの上に手を突いて、おまけに、その手で冴子のスカートを掴んでしまった(;'∀')。
あそこに戻ったら、周りの人間からエンガチョされまくって最初から破局だ。
戻るなら部室のお布団の上!
そう念じていると、白い闇の中にうっすらと四角い灯りが浮かんできて、それが元作法室の部室の灯りだと気が付いて。
いっしゅんフワってブレーキがかかって、背中に軟らかいけどしっかりしたお布団の感触。
やったぁ!
取りあえずは、ババ掴みになることもなく部室に戻れた。
ソロっと首を動かす。
前回戻った時は、覗き込む二人の先輩の顔があった。
今回……部室に人影は無い。
覗き込まれるはイヤだけども、誰も居ないのは、ちょっと寂しい。
「先輩……キャ」
小さく呼んで横を向くと、オデコが中身の前頭葉ごと滑り落ちた。
よく見ると、オデコに掛けられていたタオルハンカチが落ちたんだ。
「あ、気がついた?」
死角になっていた足もとから優しい声がした。
「あ、美空先輩!?」
「ああ、よかったぁ。昨日から姿は現れていたんだけど、完全じゃなくて、熱も出てきたから……」
「先輩……」
一瞬キスされるのかと思ったら、先輩のオデコがくっついた。
「よかったぁ、もう熱は無いみたい」
「あ、ありがとうございます」
「みっちゃん頑張ってくれたから、ほら……」
モニターの三つのビル、いずれも半分以上が青に変わって、赤い部分はずいぶん減った。
「がんばった甲斐ありました?」
「うん、しばらくは大丈夫でしょうね。ありがとう、みっちゃん」
「あ、いいえ……左の方、ちょっとチラチラしてますね」
「ああ、まだちょっと不安定かなぁ……」
三つのビルは多次元世界の模式図だ。最初に部室に転がり込んだ時は、赤や橙色が多くて、模式図とは分からなかったけど見るからに不安定だった。
「それに、見て!」
先輩が拭うように手を振ると、模式図は青空ににたなびく日の丸に変わった。
「あ、白丸じゃなくなった!」
「うん、ちゃんと源氏が勝って、無事に日の丸が受け継がれることになったのよ」
与一さんの姿が浮かんだ。壇ノ浦からはエスケープしたけど、屋島の活躍、それと黄泉の国までがんばってくれたおかげで日の丸が確定したんだ。
「あのう、もう一つ聞いていいですか?」
「なに?」
ちょっと緊張した。
以前、試しにやったら、時美先輩が生まれない世界になってしまったことがあるからだ。
時美先輩の姿が見えないし、美空先輩は、そのことに触れようとしないし(-_-;)
「あの……時美先輩は?」
「え?」
「あの、志村時美先輩は?」
「え、だれ……それ?」
え……え……ええ( ゚Д゚)!?
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
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