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198『雪舟ねずみ』
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RE・かの世界この世界
198『雪舟ねずみ』テル
総社市に着いたのはいいが、ちょっと困った。
ここから先は中国山地なのだ。
オノコロ島からここまでは、淡路島、あるいは四国の海沿いをたどり、岡山から総社市までは桃太郎鉄道に乗るだけでよかった。
しかし、山地を行くとなれば、今までのようなわけにはいかない。
「桃太郎二号、鬼ノ城までのルートは分からないのか?」
「えと……『ま』はいいけど『ろ』はダメだ」
「なんだ、それは?」
「あったまわりーなあ!『ま』と『ろ』じゃぜんぜんちげーだろ!」
「テル、それは鬼ヶ島の『ま』と鬼ノ城の『ろ』だよ」
「え、ああ、タングニョーストは察しがいいなあ」
「長年トール元帥の副官を務めている、魔族や蛮族とのコミニケーションには慣れているんだ。そうだろ、桃太郎二号」
「そ、そうだけどよ、オレって蛮族なのか?」
「気にするな、悪い意味ではない」
「蛮族のどこにいい意味があるんだ? 蛮の字には虫とか付いてるじゃねえか!」
「それは虫さんに失礼だろ」
「う」
「呼び方などに意味はない。呼び方にどんな気持ちを載せるかが重要だ。犬という言葉に蔑みの心を載せれば『スパイ』とか『卑しい奴』ということになるが、親しみの心を載せれば『人類の友』『良き相棒』になるだろうが」
「そうか、そうだな。桃太郎にとって犬は猿・雉と並んで仲間だもんな。うん、悪かったタングのネエチャン。オレもネエチャンのこと犬って思うよ!」
「お、おう(^_^;)」
こんなに喋るタングニョーストは初めてだ。なんか微笑ましくって笑ってしまう(^_^;)。
「そんな話をしているから、変な動物がやってきたぞ」
ヒルデが顎をしゃくる、腰のエクスカリバーには触らないので警戒はしていないようだ。
「やあ、キミは雪舟ねずみ君ではないですか!?」
「これは、イザナギの命さま」
「あ、微妙に長いからイザナギでいいよ」
「恐縮です、岡山の観光課から『イザナギノミコト御一行様が来られる』と聞いてご案内にまいりました」
「『せっしゅうねずみ』ってなんだ、イザナギのおっちゃん?」
「ああ、総社市っていうのは画聖の評判も高い雪舟さんの故郷なんだよ。雪舟さんというのは、絵の好きな小僧さんでね、毎日絵ばかり描いているので、『これでは立派な坊さんには成れない』と案じた和尚さんが雪舟を本堂の柱に括り付けてたんだ」
「なんか、虐待だな(^_^;)」
「それで、雪舟は悲しくて涙がポロポロ出てきてね、雪舟は、その涙を足の親指に付けて本堂の床に鼠の絵を描いたんだ。夜になって、心配した和尚さんが見に行くと、なんと、その涙で描いた鼠が動き出した!『これほどまでに絵が好きで上手なら、もっと絵の勉強をさせてやろう』って絵を描くことを許したんだ。そうだったね、雪舟ねずみ君」
「はい、いえ、わたしなどはつまらない鼠ですが、雪舟さまは偉大な水墨画家になられ、残された六つの作品は国宝の指定を受けております」
「「「「なるほどぉ(゚д゚)!
「雪舟さまから、日本の文化や歴史を大事にするお方がいればお助けするように申しつかっております。あちらに車を用意いたしましたので、どうぞお乗りください」
ということで、雪舟ねずみ君のワゴン車で、鬼ノ城を目指すことになった。
「フフフフ」
「なんだよ、気持ちわりーぞ、タングニョ-ストのネエチャン?」
「おまえ、蛮族という言葉には反応したが魔族はスルーだったな」
「ったりめーだろ、オレは魔法なんて使わねえからな」
「そうかぁ、キビダンゴで仲間を増やしたり、怪我人も出さずに鬼退治を済ませたり、微妙に魔法のにおいがするぞ」
「え、そうなのか?」
「ちょっと強引で礼儀知らずだが、そういう力はありそうだ」
「あ、オレは、まだ鬼退治してねえし(-_-;)」
「桃太郎二号くん」
「なんだよ、イザナギのおっさん?」
「桃太郎の元は吉備津彦です。吉備津彦は神だから、一号も二号も元はいっしょだと思います。チャンスがあったら、吉備津彦神社に行きましょう」
「えらい神社なのか?」
「備前の一の宮です。桃太郎の本籍地と言っていいでしょう」
「そ、そうなのか」
その時、カーラジオが気になるニュースを流し始めた。
『一の谷、屋島と苦杯をなめてきた平家ですが、今度は、長門の国に本拠地を移しました。今回は前回以上に水軍に力を注ぎ、壇ノ浦を主戦場にするべく準備と訓練を進めております。二回の敗戦に、平家軍は人事を刷新すべく、有能な人材を求めており、水面下では屋島の戦いにおいて見事に扇を射落とした那須与一を狙っている模様です。那須与一は的を射る立場から射られる立場になるのかと評判で……』
「どこかの夜市でナスビを売り出してんのか?」
桃太郎二号のトンチンカンで、その場は笑ってお終いだったが、重要な問題だと思った。
もし、平家が返り咲くようなことになれば、日の丸は、白地の赤丸ではなく赤地の白丸になってしまう。
いや、しかし今は、黄泉の国だ。いかにしてイザナミノミコトを取り戻すかなんだ。
そして、取りあえずは、鬼ノ城。
桃太郎二号に決着を付けさせなければならない。
「おお、見えてきたぞ!」
ヒルデが指差した尾根に鬼ノ城の城門が見えてきた。
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎
198『雪舟ねずみ』テル
総社市に着いたのはいいが、ちょっと困った。
ここから先は中国山地なのだ。
オノコロ島からここまでは、淡路島、あるいは四国の海沿いをたどり、岡山から総社市までは桃太郎鉄道に乗るだけでよかった。
しかし、山地を行くとなれば、今までのようなわけにはいかない。
「桃太郎二号、鬼ノ城までのルートは分からないのか?」
「えと……『ま』はいいけど『ろ』はダメだ」
「なんだ、それは?」
「あったまわりーなあ!『ま』と『ろ』じゃぜんぜんちげーだろ!」
「テル、それは鬼ヶ島の『ま』と鬼ノ城の『ろ』だよ」
「え、ああ、タングニョーストは察しがいいなあ」
「長年トール元帥の副官を務めている、魔族や蛮族とのコミニケーションには慣れているんだ。そうだろ、桃太郎二号」
「そ、そうだけどよ、オレって蛮族なのか?」
「気にするな、悪い意味ではない」
「蛮族のどこにいい意味があるんだ? 蛮の字には虫とか付いてるじゃねえか!」
「それは虫さんに失礼だろ」
「う」
「呼び方などに意味はない。呼び方にどんな気持ちを載せるかが重要だ。犬という言葉に蔑みの心を載せれば『スパイ』とか『卑しい奴』ということになるが、親しみの心を載せれば『人類の友』『良き相棒』になるだろうが」
「そうか、そうだな。桃太郎にとって犬は猿・雉と並んで仲間だもんな。うん、悪かったタングのネエチャン。オレもネエチャンのこと犬って思うよ!」
「お、おう(^_^;)」
こんなに喋るタングニョーストは初めてだ。なんか微笑ましくって笑ってしまう(^_^;)。
「そんな話をしているから、変な動物がやってきたぞ」
ヒルデが顎をしゃくる、腰のエクスカリバーには触らないので警戒はしていないようだ。
「やあ、キミは雪舟ねずみ君ではないですか!?」
「これは、イザナギの命さま」
「あ、微妙に長いからイザナギでいいよ」
「恐縮です、岡山の観光課から『イザナギノミコト御一行様が来られる』と聞いてご案内にまいりました」
「『せっしゅうねずみ』ってなんだ、イザナギのおっちゃん?」
「ああ、総社市っていうのは画聖の評判も高い雪舟さんの故郷なんだよ。雪舟さんというのは、絵の好きな小僧さんでね、毎日絵ばかり描いているので、『これでは立派な坊さんには成れない』と案じた和尚さんが雪舟を本堂の柱に括り付けてたんだ」
「なんか、虐待だな(^_^;)」
「それで、雪舟は悲しくて涙がポロポロ出てきてね、雪舟は、その涙を足の親指に付けて本堂の床に鼠の絵を描いたんだ。夜になって、心配した和尚さんが見に行くと、なんと、その涙で描いた鼠が動き出した!『これほどまでに絵が好きで上手なら、もっと絵の勉強をさせてやろう』って絵を描くことを許したんだ。そうだったね、雪舟ねずみ君」
「はい、いえ、わたしなどはつまらない鼠ですが、雪舟さまは偉大な水墨画家になられ、残された六つの作品は国宝の指定を受けております」
「「「「なるほどぉ(゚д゚)!
「雪舟さまから、日本の文化や歴史を大事にするお方がいればお助けするように申しつかっております。あちらに車を用意いたしましたので、どうぞお乗りください」
ということで、雪舟ねずみ君のワゴン車で、鬼ノ城を目指すことになった。
「フフフフ」
「なんだよ、気持ちわりーぞ、タングニョ-ストのネエチャン?」
「おまえ、蛮族という言葉には反応したが魔族はスルーだったな」
「ったりめーだろ、オレは魔法なんて使わねえからな」
「そうかぁ、キビダンゴで仲間を増やしたり、怪我人も出さずに鬼退治を済ませたり、微妙に魔法のにおいがするぞ」
「え、そうなのか?」
「ちょっと強引で礼儀知らずだが、そういう力はありそうだ」
「あ、オレは、まだ鬼退治してねえし(-_-;)」
「桃太郎二号くん」
「なんだよ、イザナギのおっさん?」
「桃太郎の元は吉備津彦です。吉備津彦は神だから、一号も二号も元はいっしょだと思います。チャンスがあったら、吉備津彦神社に行きましょう」
「えらい神社なのか?」
「備前の一の宮です。桃太郎の本籍地と言っていいでしょう」
「そ、そうなのか」
その時、カーラジオが気になるニュースを流し始めた。
『一の谷、屋島と苦杯をなめてきた平家ですが、今度は、長門の国に本拠地を移しました。今回は前回以上に水軍に力を注ぎ、壇ノ浦を主戦場にするべく準備と訓練を進めております。二回の敗戦に、平家軍は人事を刷新すべく、有能な人材を求めており、水面下では屋島の戦いにおいて見事に扇を射落とした那須与一を狙っている模様です。那須与一は的を射る立場から射られる立場になるのかと評判で……』
「どこかの夜市でナスビを売り出してんのか?」
桃太郎二号のトンチンカンで、その場は笑ってお終いだったが、重要な問題だと思った。
もし、平家が返り咲くようなことになれば、日の丸は、白地の赤丸ではなく赤地の白丸になってしまう。
いや、しかし今は、黄泉の国だ。いかにしてイザナミノミコトを取り戻すかなんだ。
そして、取りあえずは、鬼ノ城。
桃太郎二号に決着を付けさせなければならない。
「おお、見えてきたぞ!」
ヒルデが指差した尾根に鬼ノ城の城門が見えてきた。
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
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