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151『大神官の住まい』
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RE・かの世界この世界
151『大神官の住まい』テル
広場に面した三階建てのアパルトメントだった。
「半神がやってくるまでは役目がら神殿に住んでいたのですが、いまは単身者用の2DKです。狭いところですが気楽になさってください」
気楽と言われても、そもそも椅子が二脚しかなく、姫にお座りいただくと、我々は立っているしかない。
「大神官様、椅子をお持ちしました!」
元気な声が廊下や階段からしてきたと思うと、少女たちがズカズカと入ってきて、要領よく全員分の椅子を並べてくれた。
「ありがとう。みなさんに神のご加護があらんことを」
マシガナ大神官が礼を言うと、少女たちは見かけの可憐さには似合わない豪快さで笑った。
「ガハハハ、神のご加護は半神どもが居なくなってからいただきますよ」
「あんたたち、大神殿ごとノヤをやっつけてくれた人たちだろ?」
「その皆さんが集まって、ヨトゥンヘイムにはびこった半神どもをやっつける作戦会議をぶつんだから、期待してるよ!」
「じゃね、なにか必要なことがあったら言ってくださいな」
「じゃ、わたしらは、瓦礫の片づけに行ってますから」
ガハハハハハ
豪快に笑いながら少女たちは広場に向かった。
「ギャップに驚いたでしょうが、あの子たちは定年で引退した神殿護衛隊の女戦士たちなんです」
「あんなに若いのに引退?」
姫の驚きにマシガナ大神官は微笑みを返すのみだ。
「あの子たちは、大神官様同様に若返ったんですね」
「はい、もう腰の曲がった者もおりましたから、あの変化を喜んでおるようです」
わたしには分かった。喜んで見せることでヨトゥンヘイムの人々が落ち込まないようにしているのだ。あれ以上若返ったら幼女戦士になってしまって瓦礫どころか小石一つ持てなくなってしまうだろう。
「ひとつ聞いていいですか?」
ロキの肩に止まっていたポチが手を挙げた。
「なにかな、可愛い妖精さん」
「もともと若かった人たちはどうしたんですか? 街の空を飛んでも見かけないんですけど?」
「居なくなってしまいました……若い者が、その年齢以上に若返ってしまったら……」
「存在そのものが無くなってしまう……ということですか?」
「ヨトゥンヘイムの人口は半分に減ってしまいました。減った分だけ半神たちが入り込み、いずれは半神族が取って代わるでしょう。ぶしつけなお願いですが、半神族を駆逐してはいただけますまいか」
「お気持ちは分かりますが、少し考えさせていただけませんか」
思ったのだ。
巨人族が衰退したのは巨人族が無謀な進撃をしたからだ。いわば自業自得。
我々が成し遂げたいのはユグドラシルの復活なのだ。特定の種族の肩入れをすることではない。
かと言って、人も街も際限なく若返って、いずれは消えてしまうというのも見過ごしにはできない。単に人道上の問題であるだけでなく、ヨトゥンヘイムが滅びるということは、ユグドラシルの大きな部分が死ぬことで、いずれは世界樹ユグドラシルを枯死させてしまうことにならないだろうか。
その迷いが分かったのか、ヒルデが大人びた口調で告げた。
「どこか野営に適したところはないでしょうか、広場では落ち着かないので、我々だけで考えてみたいと思うのですが」
「いやはや、ごもっともです。わたしも、つい余計なことを喋ってしまいました。町はずれにカテンの森があります。野営にも適しております。人を呼んで案内させましょう」
大神官は、広場の瓦礫撤去をしている少女戦士に向かって手を振った。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
ペギー 荒れ地の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
151『大神官の住まい』テル
広場に面した三階建てのアパルトメントだった。
「半神がやってくるまでは役目がら神殿に住んでいたのですが、いまは単身者用の2DKです。狭いところですが気楽になさってください」
気楽と言われても、そもそも椅子が二脚しかなく、姫にお座りいただくと、我々は立っているしかない。
「大神官様、椅子をお持ちしました!」
元気な声が廊下や階段からしてきたと思うと、少女たちがズカズカと入ってきて、要領よく全員分の椅子を並べてくれた。
「ありがとう。みなさんに神のご加護があらんことを」
マシガナ大神官が礼を言うと、少女たちは見かけの可憐さには似合わない豪快さで笑った。
「ガハハハ、神のご加護は半神どもが居なくなってからいただきますよ」
「あんたたち、大神殿ごとノヤをやっつけてくれた人たちだろ?」
「その皆さんが集まって、ヨトゥンヘイムにはびこった半神どもをやっつける作戦会議をぶつんだから、期待してるよ!」
「じゃね、なにか必要なことがあったら言ってくださいな」
「じゃ、わたしらは、瓦礫の片づけに行ってますから」
ガハハハハハ
豪快に笑いながら少女たちは広場に向かった。
「ギャップに驚いたでしょうが、あの子たちは定年で引退した神殿護衛隊の女戦士たちなんです」
「あんなに若いのに引退?」
姫の驚きにマシガナ大神官は微笑みを返すのみだ。
「あの子たちは、大神官様同様に若返ったんですね」
「はい、もう腰の曲がった者もおりましたから、あの変化を喜んでおるようです」
わたしには分かった。喜んで見せることでヨトゥンヘイムの人々が落ち込まないようにしているのだ。あれ以上若返ったら幼女戦士になってしまって瓦礫どころか小石一つ持てなくなってしまうだろう。
「ひとつ聞いていいですか?」
ロキの肩に止まっていたポチが手を挙げた。
「なにかな、可愛い妖精さん」
「もともと若かった人たちはどうしたんですか? 街の空を飛んでも見かけないんですけど?」
「居なくなってしまいました……若い者が、その年齢以上に若返ってしまったら……」
「存在そのものが無くなってしまう……ということですか?」
「ヨトゥンヘイムの人口は半分に減ってしまいました。減った分だけ半神たちが入り込み、いずれは半神族が取って代わるでしょう。ぶしつけなお願いですが、半神族を駆逐してはいただけますまいか」
「お気持ちは分かりますが、少し考えさせていただけませんか」
思ったのだ。
巨人族が衰退したのは巨人族が無謀な進撃をしたからだ。いわば自業自得。
我々が成し遂げたいのはユグドラシルの復活なのだ。特定の種族の肩入れをすることではない。
かと言って、人も街も際限なく若返って、いずれは消えてしまうというのも見過ごしにはできない。単に人道上の問題であるだけでなく、ヨトゥンヘイムが滅びるということは、ユグドラシルの大きな部分が死ぬことで、いずれは世界樹ユグドラシルを枯死させてしまうことにならないだろうか。
その迷いが分かったのか、ヒルデが大人びた口調で告げた。
「どこか野営に適したところはないでしょうか、広場では落ち着かないので、我々だけで考えてみたいと思うのですが」
「いやはや、ごもっともです。わたしも、つい余計なことを喋ってしまいました。町はずれにカテンの森があります。野営にも適しております。人を呼んで案内させましょう」
大神官は、広場の瓦礫撤去をしている少女戦士に向かって手を振った。
☆ ステータス
HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)
☆ 主な登場人物
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ケイト(小山内健人) テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
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ユーリア ヘルム島の少女
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