上 下
119 / 230

120『四号戦車試乗会・3』

しおりを挟む
RE・かの世界この世界

120『四号戦車試乗会・3』ブリュンヒルデ  

 


 丘の上はお祭り騒ぎになった。

 
 一回につき九人の子どもたちを乗せて丘に登る。

 その様子は町内どころか、ヘルム中は大げさだが三キロ離れた所からでも見えるのだ。

 ロートルの四号はエンジン音が大きく一キロ先からも聞こえ、五百メートルくらいだと試乗している子どもたちの歓声まで聞こえるらしい。

 その音やら歓声やら武骨な四号の姿を見た者たちが予想外に集まった。

 歩いてくる者やマウンテンバイクで登って来る若者、車でやってくる者。中にはブルドーザーやユンボに乗って、少しでも戦車に近い気分で登って来ようという者も居て、四回目の九人を運び終わった時には数百人のヘルムの者たちが集まってしまった。ローゼンシュタットの降誕祭も派手だったが、あれは、メデューサの災厄を除いては町が企画運営して、我々はゲストとして楽しむだけだった。

「……だれか仕切らないと収拾がつかんぞ」

 タングリスが呟いたのはもっともだが、これは―― 自分以外の誰かが ――という意味が隠れている。タングリスはタングニョーストと並んでトール元帥の副官が務まるほど有能な軍人だが、こういうことは苦手だ。と言って、他の者が得意というわけでもないが。

 じっさい、テルは視線を逸らすし、ヤコブは工具箱を弄りだす。ロキとケイトはMCが入るほどにおもしろいイベントになるのかとキョロキョロ。ポチまでも「探してくるう~!」と飛び立っていく。

「し、仕方がない。わたしがやってやろうじゃないか(^_^;)」

「それは良い考えです!」

 タングリスが白々しくガッツポーズをするのに送られて丘の上に雛壇状になった岩に駆け上がる。

 雛壇は二段になっていて、一段目に足を掛け、ジャンプして空中一回転。二段目に着地したときには漆黒の姫騎士の出で立ちになっていた。我ながら気合いが入ってしまった(^_^;)。

「よく来た皆の者! 我こそは主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士にして四号戦車の車長、ブリュンヒルデなるぞ!」

 調子よく名乗りを上げると、ファンファーレが鳴り響いた。

 パッパカッパッパッパーーーーーーン(^▽^)/

 いつのまにか雛壇の下にブラスバンドが並んでいる。ポチが自慢げにその上を飛んでいる。

「麓で練習していたら、面白そうなので登ってきたんです。この妖精さんに声をかけていただいて!」

 よく見ると、シュネーヴィットヘンで入港した時のハイスクールのブラバンだ。

 さらに目を凝らすと①~⑧までの小さなプラカードが並んで、そのプラカードごとに出演者たちが屯している。

「いったい、どこから集めてきたんだ?」

 得意そうに飛んでるポチに聞いてみる。

「なんか、この丘はいろんなグループの練習場になってるみたい!」

「よし、というわけで、ヘルム市民文化フェスティバルをやっちゃうぞ!」

 なんか、スゴイことになってきた。

 ブラバンのほかに、ジャズのビッグバンド、マジック友の会、大道芸研究会、大学のグリークラブ、チアリーディング、詩吟の会、現視研、ハングライダークラブと色々だ。

「よし、一チーム十分づつの出し物をやってもらうぞ! なに? そんなに長くはできない。そっちは、もっと時間をくれ? よし、出たとこ勝負でいっくぞお!」

 オオーーーーーー!!

 突如始まった『ヘルム文化フェスティバル』はノッケからのハイテンションになってきたぞ! 




☆ ステータス

 HP:12000 MP:150 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・80 マップ:8 金の針:0 所持金:5500ギル(リポ払い残高29000ギル)
 装備:剣士の装備レベル30(トールソード) 弓兵の装備レベル29(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

わたしゃ既に死んでいる

旬乃助
ファンタジー
孤独な人生を送った主人公と孤独だった神・・・二人を結びつけるものとは 92才で人生を終えた主人公 満足往く最後を迎えたはずが、、、 何処までもつづく雲の上 独りの少女に ボッチ認定される やっとお迎えが来た日から始まる 異世界ファンタジー

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~

一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】 悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……? 小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位! ※本作品は他サイトでも連載中です。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~

なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。 そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。 少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。 この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。 小説家になろう 日間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 週間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 月間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 四半期ジャンル別  1位獲得! 小説家になろう 年間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 総合日間 6位獲得! 小説家になろう 総合週間 7位獲得!

処理中です...