57 / 230
57『さらばシュタインドルフ!』
しおりを挟む
RE・かの世界この世界
57『さらばシュタインドルフ!』テル
え、あいつか!?
ジャンケンの勝負は一発で付いた。
連れて行くなら、子どもながらにイケメンで品行方正なフレイがいいと思った。
フレイアも女の子なので、少々お転婆でも扱いやすいだろう。それが、わんぱく坊主のロキだ(-“- )。
ただのわんぱくなら、まだいい。
カエルを投げつけてきた首謀者、それも、捕まっても素直に認めずフレイやフレイアのせいにしようとした。
そういう性格が気に入らない。
それに、なんでジャンケンなんだ?
なんだか、院長先生にしてやられた感じがしないでもない。十三人の子どもたちの中から、よりにもよって。
単に、厄介者のロキを放り出したいから……そう勘ぐってしまうほど、ロキを連れて行くのには気が進まない。
皆さんの旅に神のご加護のあらんことを!
ウダウダ思っているうちに、院長先生とフリッグ先生は送別会の準備を整えてしまった。
「ロキ、みんなに旅立ちのご挨拶をなさい」
「そ、そんなのいいよ……」
「ロキ、元気でね」
「お便りちょうだいね」
「水には気を付けて」
「オネショすんなよ」
「ご飯の時は、ロキの席に写真を置いとくからね」
「そうだよ、旅に出ても、心は一つだからね」
「いつか帰って来いよ」
「ロキが居なくなってせいせいする!……と思ってたのに、寂しいよ」
最後の言葉はフレイアだ。なにか言おうとするのだが、涙を浮かべてアワアワするばかり。
いやなガキだと思っていたけど、こいつなりに受け入れられていたんだと、ちょっとだけ目頭が熱くなる。
……ロキ!
感極まってフレイアが抱き付く。すると、他の子どもたちも寄ってきて、泣きながら抱き付いて、モミクチャの団子になった。
「さあ、泣いてばかりいたら出発できなくなるわ。ゲートに並んでお見送りしましょう」
促された子供たちは、涙をぬぐいながらゲートに並んだ。
「ちょっと待って!」
フレイアが建物に戻って一分ほどで荷物を作って戻ってきた。
「枕がかわったら寝られないっていうから、枕と着替え。いいでしょ先生?」
「う、うん、構わないわよ」
先生は、渡すべき荷物を用意していたようだが、フレイアの気持ちを大事にするんだろう、フレイアには見えないように荷物を減らしている。二号よりは大きいと言え四号も狭苦しい戦車だ、荷物は少ない方がいい。
「わたしたちから渡す荷物はこれだけです、よろしくお願いします」
「お預かりします」
旅立ちに四号戦車はピッタリだ。
砲塔のキューポラだけではなく、側面のハッチ、操縦手と通信手のハッチからも半身を乗り出して、お別れの手を振る。
ゲートまでと言われた子どもたちは、坂を下って村の境まで付いてきた。
もう、涙涙でグシャグシャだ。
ついさっきまでは、このクソガキと思っていたけど、涙と鼻水でヨレヨレになったロキも可愛い。
「さ、ここまでですよ」
オーディンシュタインの効き目は村はずれの峠までだ。峠のてっぺんで二人の先生は促した。
五つのハッチから身を乗り出した我々は改めて敬礼。ポンプの修理に無理な魔法を使ったヒルデはヘロヘロだったが、なんとか笑顔で手を振っている。
峠を下ると、道は『く』の字に曲がってしまって孤児院のみんなは見えなくなる。
「全員車内へ、警戒しつつ前進!」
タングリスが車長として指示し、全員車内に収まる。
「ん? ロキ、お前のポケット……」
ケイトがロキの上着のポケットを指さした。
「え? あ、う、うわー!」
ポケットの中でグニグニ動くものがあって、ロキはアタフタと上着を脱いで。ハタハタと振る。
「バカ、車内でやるんじゃ……!」
注意するのが遅かった。
ポケットの中から転がり出てきたのは、子どもの拳ほどのシリンダーだった。
とうぜん車内は大騒ぎになるが、もっとビックリした。
「ポ、ポチ!?」
ロキが、シリンダーを名前で呼んだではないか!
☆ ステータス
HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
57『さらばシュタインドルフ!』テル
え、あいつか!?
ジャンケンの勝負は一発で付いた。
連れて行くなら、子どもながらにイケメンで品行方正なフレイがいいと思った。
フレイアも女の子なので、少々お転婆でも扱いやすいだろう。それが、わんぱく坊主のロキだ(-“- )。
ただのわんぱくなら、まだいい。
カエルを投げつけてきた首謀者、それも、捕まっても素直に認めずフレイやフレイアのせいにしようとした。
そういう性格が気に入らない。
それに、なんでジャンケンなんだ?
なんだか、院長先生にしてやられた感じがしないでもない。十三人の子どもたちの中から、よりにもよって。
単に、厄介者のロキを放り出したいから……そう勘ぐってしまうほど、ロキを連れて行くのには気が進まない。
皆さんの旅に神のご加護のあらんことを!
ウダウダ思っているうちに、院長先生とフリッグ先生は送別会の準備を整えてしまった。
「ロキ、みんなに旅立ちのご挨拶をなさい」
「そ、そんなのいいよ……」
「ロキ、元気でね」
「お便りちょうだいね」
「水には気を付けて」
「オネショすんなよ」
「ご飯の時は、ロキの席に写真を置いとくからね」
「そうだよ、旅に出ても、心は一つだからね」
「いつか帰って来いよ」
「ロキが居なくなってせいせいする!……と思ってたのに、寂しいよ」
最後の言葉はフレイアだ。なにか言おうとするのだが、涙を浮かべてアワアワするばかり。
いやなガキだと思っていたけど、こいつなりに受け入れられていたんだと、ちょっとだけ目頭が熱くなる。
……ロキ!
感極まってフレイアが抱き付く。すると、他の子どもたちも寄ってきて、泣きながら抱き付いて、モミクチャの団子になった。
「さあ、泣いてばかりいたら出発できなくなるわ。ゲートに並んでお見送りしましょう」
促された子供たちは、涙をぬぐいながらゲートに並んだ。
「ちょっと待って!」
フレイアが建物に戻って一分ほどで荷物を作って戻ってきた。
「枕がかわったら寝られないっていうから、枕と着替え。いいでしょ先生?」
「う、うん、構わないわよ」
先生は、渡すべき荷物を用意していたようだが、フレイアの気持ちを大事にするんだろう、フレイアには見えないように荷物を減らしている。二号よりは大きいと言え四号も狭苦しい戦車だ、荷物は少ない方がいい。
「わたしたちから渡す荷物はこれだけです、よろしくお願いします」
「お預かりします」
旅立ちに四号戦車はピッタリだ。
砲塔のキューポラだけではなく、側面のハッチ、操縦手と通信手のハッチからも半身を乗り出して、お別れの手を振る。
ゲートまでと言われた子どもたちは、坂を下って村の境まで付いてきた。
もう、涙涙でグシャグシャだ。
ついさっきまでは、このクソガキと思っていたけど、涙と鼻水でヨレヨレになったロキも可愛い。
「さ、ここまでですよ」
オーディンシュタインの効き目は村はずれの峠までだ。峠のてっぺんで二人の先生は促した。
五つのハッチから身を乗り出した我々は改めて敬礼。ポンプの修理に無理な魔法を使ったヒルデはヘロヘロだったが、なんとか笑顔で手を振っている。
峠を下ると、道は『く』の字に曲がってしまって孤児院のみんなは見えなくなる。
「全員車内へ、警戒しつつ前進!」
タングリスが車長として指示し、全員車内に収まる。
「ん? ロキ、お前のポケット……」
ケイトがロキの上着のポケットを指さした。
「え? あ、う、うわー!」
ポケットの中でグニグニ動くものがあって、ロキはアタフタと上着を脱いで。ハタハタと振る。
「バカ、車内でやるんじゃ……!」
注意するのが遅かった。
ポケットの中から転がり出てきたのは、子どもの拳ほどのシリンダーだった。
とうぜん車内は大騒ぎになるが、もっとビックリした。
「ポ、ポチ!?」
ロキが、シリンダーを名前で呼んだではないか!
☆ ステータス
HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!
林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。
夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。
そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ?
「モンスターポイント三倍デーって何?」
「4の付く日は薬草デー?」
「お肉の日とお魚の日があるのねー」
神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。
※他サイトにも投稿してます
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~
なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。
そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。
少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。
この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。
小説家になろう 日間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 週間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 月間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 四半期ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 年間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 総合日間 6位獲得!
小説家になろう 総合週間 7位獲得!
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
お姉様(♂)最強の姫になる~最高のスペックでの転生を望んだら美少女になりました~
深水えいな
ファンタジー
高貴な家柄、圧倒的なパワー、女の子にモテモテの美しい容姿、俺の転生は完璧だ!女の子であるという、一点を除けば。お姫様に転生してしまった最強お姉様が、溺愛する妹と共に無双する!爽快コメディーファンタジーです!!
※なろう、カクヨムで公開したものを加筆修正しています
ゆとりある生活を異世界で
コロ
ファンタジー
とある世界の皇国
公爵家の長男坊は
少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた…
それなりに頑張って生きていた俺は48歳
なかなか楽しい人生だと満喫していたら
交通事故でアッサリ逝ってもた…orz
そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が
『楽しませてくれた礼をあげるよ』
とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に…
それもチートまでくれて♪
ありがたやありがたや
チート?強力なのがあります→使うとは言ってない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います
宜しくお付き合い下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる