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017『転校生』

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漆黒のブリュンヒルデ

017『転校生』 

 

 

 なんでおまえが!?

 
 拍手で迎えられた転校生を見て、思わず叫びそうになった。

「じゃ、自己紹介」

 担任の京極先生に促されて正面を向いた顔は、あの猫田ねね子だ。

「今日から、皆さんと一緒に勉強します。猫田ねね子です。よろしくお願いします(o^―^o)ニコ」

 ペコリと頭を下げて、黒板に『猫田ねね子』と丸文字で書くと、クラスのあちこちから暖かい笑い声があがる。

「ニャハハ、マンガみたいな名前だけど、偉い人が付けてくれた名前で、自分的にはオキニです。呼び方は『猫田』でも『ねね子』でもかまいませ~ん」

 教室のあちこちから「かわいい!」「持って帰りたい!」「うふふ」「あはは」の声が上がる。

「席は、窓側の後ろから二番目。武笠さん、面倒見てあげてね」

 ゲ、なんでわたしの前なのだ!?

「武笠さん、よろ~(^▽^)/」

 笑顔で、そう言うと、トコトコとわたしの前の席に着いた。

 クラスみんなの注目が集まる。ちょ、ちょっと迷惑だぞ(-_-;)

 
 昼休み、校内を案内してやる風を装ってねね子を屋上に連れ出す。

 
「屋上は、生徒は立ち入り禁止なのニャ」

 開錠魔法で屋上のカギを開けると、イタズラっ子そうな目でわたしを見る。

「うるさい、なんで転校なんかしたことになってるんだ!?」

「名前なのニャ」

「名前だと?」

「女学生に名前つけてやったニャ?」

「ああ、あの表札泥棒か」

「安西信子ニャ」

「単なる思い付きだ」

「猫田ねね子よりはいいニャ。ちゃんとした人間の名前ニャ」

「嫌なら、別の名前を付けてやる。付けてやるから、さっさと学校から消え失せろ」

「それはないニャ」

「なんでだ!?」

「安西信子」

「単なる思い付きだ」

「あれが、あいつの本来の名前なのニャ」

「本来の名前だと?」

「ひるでには力があるのニャ」

「妖(あやかし)に人間の名前があるというのか? こないだのは、ただの三億円だったじゃないか」

「元は人間だった妖もいるニャ」

「しかし、ただの思い付きだぞ」

「だから力なのニャ、これからもそういうことがあるからニャ。ま、いいことしたんだから、お昼ご飯奢って欲しいニャア(⌒∇⌒)」

「学校に猫メシはないぞ」

「ニャハハ、人の姿の時は人のご飯食べるニャ、Aランチがいいニャ!」

「絞め殺すぞお!」

「ニャハハ、ひるで怖いニャ~!」

 絞めてやろうとしたら、元来がネコ、ニャンパラリンと空中二回転で避けられる。

 
 ねね子ぉ! 猫田さ~ん! ねね子ちゃ~ん! 武笠さんといっしょなんだ! よかったねー!

 
 地上にいる同級生たちがねね子を発見する。なんだか、楽し気にじゃれ合っているように見えてしまった感じだ。

 孤高の美少女で前生徒会長である武笠ひるでといっしょだということで、珍しくも好ましい組み合わせと歓迎されているらしい。

 しかたなく、ねね子にAランチを奢ってやる。

 ムムム……妙な展開になってきたぞ。
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