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24『因幡の白兎・2』

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誤訳怪訳日本の神話

24『因幡の白兎・2』    

 

 
 腹いせで言うんじゃないけど、八十神たちは全員ヤガミヒメにふられっちまうよ。

 
 傷の癒えたウサギは真顔で言いました。

「そうなのか?」

「そうだよ、通りすがりウサギをこんな目にあわせるなんて根性が歪んでる証拠だよ。そんな根性悪にヤガミヒメが『うん』と言うわけないじゃないか」

「じゃ、ヤガミヒメは誰とだったら『うん』と言うんだい?」

「それは、オオナムチ、あんただよ」

「え、ぼくが(^_^;)!?」

「さあ、あたしはもう大丈夫だから、ヤガミヒメのところに行きなよ!」

 ウサギに背中を押され、先を急ぎ、総スカンをくった兄たちを尻目に告白して、目出度くオオナムチはヤガミヒメと結ばれました。

 めでたしめでたし……。

 これが記紀神話の『因幡の白兎』に関わる凡その記述です。

 
 ここから筆者の妄想であります。

 
 白兎は、ちょっと小悪魔的なツンデレ美少女に違いありません。

 そもそもウサギがサメたちに赤裸にされたのには理由があります。

 元は隠岐の島にいたウサギなのですが、対岸の島根鳥取の方に行きたくて仕方がなかったのです。

 そこで、サメたちに提案します。

「あたし、身内ってか親類がすっごく多いのよ。親類の多い動物って優秀だって言うわよね。あんたたちサメはどうなのよ?」

「俺たちだって、親類は多いぜ! 優秀なんだぜ! ウサギの何倍も優秀なんだぜ!」

「へー、そうなんだ。だったら、いつか比べっこしようじゃないか」

「そうだ、いつでも立ちあってやるぞ」

 サメたちは口々にサメ族の優位を主張します。

「いつなんて言ってちゃダメよ。本当に多いんなら、いま集めてみなさいよ」

「い、今からか?」

「おう。じゃ集合かけてやらあ。みんな集まれえ!」

 呼びかけに応じて、隠岐の海辺にたくさんのサメが集まります。

「おお、たくさん集まったわね!」

「どうだ、おどろいたか?」

「う~ん、でもさ、国会前に集まるデモも『主催者発表』で何万人とか言うけど、実際は千人ほどだったりするのよね……」

「だったら数えてみろよ!」

「そっか、だよね。だったら、向こう岸の因幡の方に向かって並んでみてよ、数えてあげるから」

「よし分かった!」

 サメたちは横一列に並んで、ウサギが、その上をピョンピョン跳んで数えます。

 あと何匹かで因幡の岸に着くところで、ウサギは呟いてしまいます。

「サメってバカだよね。あたしは、向こう岸の因幡に行きたかっただけなんだよね。それをまんまと騙されてやんの」 

「テメー、俺たちのこと騙しやがったなあ!」

 うっかり呟いたのが聞こえてしまい。ウサギは怒りまくったサメたちによって皮を剥がれて赤裸になってしまったのです。

 
 この部分を前説に書いておくと、八十神たちの意地悪は因果応報ということになって、納得のおとぎ話になります。

 たぶん、それぞれ独立した教訓的な話だったのでしょう。

 そんな小悪魔的なウサギでも治療法を教えてオオナムチは助けてやり、その優しさがあるのでヤガミヒメを獲得することに読者はめでたしめでたしと頷くのでしょう。

 
 高校生になって太宰治の『カチカチ山』を読みました。

 ウサギは、月の女神アルテミスにも比肩される美少女で。中年のオッサンタヌキが無謀にも惚れてしまいます。

 ウサギは、タヌキごときが自分に惚れるのが許せなくて、さんざん意地悪をします。

 タヌキに薪を背負わせてカチカチ山に差しかかったところで、タヌキの薪に火をつけて大やけどを負わせます。

 洞穴の巣でウンウン唸っているタヌキに薬売りに化けて「火傷によく効くから」ということでカラシを渡します。

 カラシを火傷に刷り込まれたタヌキは、再び死ぬような苦痛を味わいます。

 そして、最後はタヌキを騙して泥の船に乗せて川に沈めて殺してしまいます。

 泥が溶けて水中に投げ出されたタヌキは泳げません。「た、助けてくれえ!」 溺れるタヌキをウサギは櫂を何度も振り下ろしてブチ殺してしまうのです。

 断末魔のタヌキは叫びます。

「惚れたが悪いかあ!」

 最後の一撃でタヌキが沈んでしまうと、ウサギは額の汗を拭って一言呟きます。

「ほ、ひどい汗……」

 このウサギと共通する小悪魔性というか底意地の悪さを感じるのは、過去に何度もタヌキと同類の経験があるからかもしれませんなあ(^_^;)。

 太宰の『カチカチ山』を読んだ後、久しぶりに『因幡の白兎』を読んで溜飲が下がった昔を懐かしく思い出すのでありました。

 
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