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37[20年の歳月]
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宇宙戦艦三笠
37[20年の歳月] 修一
体が鉛のように重い……手足も痺れたように動かない……視界もボケている。
でも、どうやら20年の眠りから覚めたんだ……そう理解するのに30分ほどかかったんじゃないだろうか。
「オ! 艦長の目が覚めたニャー!」
一瞬ネコミミの女の子の顔が覗いたかと思うと、パタパタと音が続いて、ネコミミが四つに増えた。
ネコの惑星……いや、耳以外は人間だし?
「ウフフ、寝ぼけているニャ」「可愛いニャ」「おひさニャ!」
あ……シロメ……クロメ……チャメ……ミケメ……?
「おーい、はやくはやく、艦長目覚めたニャ(^▽^)/」
あ……
パタパタパタ……ネコメイドたちだと認識できた瞬間、四人とも誰かを呼びに行く気配。
プシュっと音がしてカプセルの蓋が開く、恐る恐る上体を起こし、首をひねって息を呑んだ。
え……!?
「もう、大丈夫ですよ」
優しい声が聞こえたが、誰の声であるのか思い出すのに数秒かかった。
えっ……え?…………ええ!?
後ろでニコニコ笑顔で並んでいるネコメイドたちと、あまりにかけ離れた姿に言葉が出ない。
目の前にいるのは、スケルトンだった。
くたびれたユニホームと声からなんとか本人だと想像する。
「クレアなのか?、その姿は……?」
「生体組織のメンテナンスに使うエネルギーも三笠の蘇生に使いました。三笠がダルを抜けたら、元に戻します。しばらく見苦しいでしょうが辛抱してください」
「ごめん、他の乗員は?」
「こちらです」
クレアが案内してくれたのは浴室だ。浴室は戦闘時には戦死者の安置室になる、血が流れてもシャワーで洗い流せるためで、日露戦争の時は数十名の戦死者が安置された。余計な知識が悪い予感をさせる。
「換気と密閉性に優れた施設だからです。艦長も一昨日まではここに収容していたんですよ」
「そ、そうか……」
よかった、とりあえずは生きているようだ(^_^;)
救命カプセルは、船内で使う場合、状態を視認できるように半面が透明になっている。樟葉と天音のカプセルを見てドキリとした。
「なんで裸?」
「服は、体を締め付けます。そこから皮膚や内臓に負担をかけてしまうので、みなさんが眠りについたあと、裸にしました」
「オレは、服を着てるけど」
「蘇生の兆候が見えたので、昨日服を着せました」
「え、クレアが着せてくれたの(#^_^#)?」
「はい、ちゃんと着せたつもりなんですけど、不具合があったら、ご自分で直してください」
「クレアこそ、そのスケルトン、なんとかしろよ。他の三人が目を覚ましたら、オレよりビックリするぜ」
「ダルを抜けるまで気が抜けません」
「そうか……トシのカプセルは?」
「トシさんのカプセルは、こちらです」
トシのカプセルは、隣のキャビンに移されていた。
「お早う。東郷君が一番だったわね」
みかさんがカプセルに寄り添ってくれていた。悪い予感がした。トシのカプセルには白い布がかけられているのだ。
「トシは……?」
「カプセルとの相性が悪くて五年しかもたなかった。ごめんなさいね……」
「そんな!」
白布を剥ぎ取った。
透明なカプセルの中にいたのは、ミイラ化したトシの変わり果てた姿だった。
「どうにもならなかったの……?」
「秋山君を助けようと思ったら、その分三笠の復旧が遅れる。カプセルは20年しかもたないのよ」
「機関長を助けようとしたら、全員助からなかったです」
「そうなんだ……」
「そこで相談があるの。三笠の復旧も終わったし、秋山君のクローンを作ろうかと思うの。これからの航海に機関長は欠かせないわ」
「どうしてオレに聞くんだよ。オレに黙ってやってくれたら、こんなショック受けずにすんだのに!」
「だって、あなたは艦長だもの、全てのことを知っておく必要があるわ」
「じゃ、クローンでもいいから再生してやってくれよ。トシは、やっと立ち直ったところなんだから」
「その前に、秋山……トシくんの最後をしっかり見ておいてあげて」
「う、うん……」
トシのカプセルの蓋が開けられた。
賞味期限が過ぎたスルメのような臭いがした。トシが胸に抱いているスマホを手に取った。
皮肉なことに、スマホの電池は残っていた。日本の電池技術はすごいぜ。
マチウケは、亡くなった妹の写真だった。
ホームセンターで自転車を買ってもらったばかりの写真。
嬉しくてたまらない顔でピースサインをしている。あまりにいい顔なので思わず撮ったのだろう。その数分後にバイクに跳ねられて死んでしまうとも知らずに。
「じゃ、カプセルを閉じて。再生するわ」
ミカさんは、ミイラ化したトシの皮膚のかけらに息を吹きかけた。目の前のベッドが人型に光った。
光が収まると、そこには寝息を立てているトシがいた。そして、みかさんが指を一振りすると、カプセルの中のミイラは、煙になって消えてしまった。
「ミイラがいたんじゃ、話のつじつまがあわないから。あくまで、トシくんは東郷君と同じように目覚めた……忘れないでちょうだいね。それからクレアさんも、それじゃあんまり。生体組織再生しときましょうね」
クレアが、元に戻ると同時にクローンのトシが、ベッドで目覚めて伸びをした。
「ああ……よく寝たあ。やっぱ先輩の方が目覚めるの早かったっすね。樟葉さんと天音さんは?」
「隣の部屋、あ、おい……」
「せんぱーい!」
お気楽に、トシは隣の浴室に行った。数秒後真っ赤な顔をしてトシが戻って来た。
「な、なにも着てないんですね(# ゚Д゚#)……で、ウレシコワさんは?」
「あ?」
虚を突かれたような気がした。ウレシコワのことは、今の今まで忘れていた。
ネコメイドたちが揃って目をそらせた。
☆ 主な登場人物
修一(東郷修一) 横須賀国際高校二年 艦長
樟葉(秋野樟葉) 横須賀国際高校二年 航海長
天音(山本天音) 横須賀国際高校二年 砲術長
トシ(秋山昭利) 横須賀国際高校一年 機関長
レイマ姫 暗黒星団の王女 主計長
ミカさん(神さま) 戦艦三笠の船霊
メイドさんたち シロメ クロメ チャメ ミケメ
テキサスジェーン 戦艦テキサスの船霊
クレア ボイジャーが擬人化したもの
ウレシコワ 遼寧=ワリヤーグの船霊
こうちゃん ろんりねすの星霊
37[20年の歳月] 修一
体が鉛のように重い……手足も痺れたように動かない……視界もボケている。
でも、どうやら20年の眠りから覚めたんだ……そう理解するのに30分ほどかかったんじゃないだろうか。
「オ! 艦長の目が覚めたニャー!」
一瞬ネコミミの女の子の顔が覗いたかと思うと、パタパタと音が続いて、ネコミミが四つに増えた。
ネコの惑星……いや、耳以外は人間だし?
「ウフフ、寝ぼけているニャ」「可愛いニャ」「おひさニャ!」
あ……シロメ……クロメ……チャメ……ミケメ……?
「おーい、はやくはやく、艦長目覚めたニャ(^▽^)/」
あ……
パタパタパタ……ネコメイドたちだと認識できた瞬間、四人とも誰かを呼びに行く気配。
プシュっと音がしてカプセルの蓋が開く、恐る恐る上体を起こし、首をひねって息を呑んだ。
え……!?
「もう、大丈夫ですよ」
優しい声が聞こえたが、誰の声であるのか思い出すのに数秒かかった。
えっ……え?…………ええ!?
後ろでニコニコ笑顔で並んでいるネコメイドたちと、あまりにかけ離れた姿に言葉が出ない。
目の前にいるのは、スケルトンだった。
くたびれたユニホームと声からなんとか本人だと想像する。
「クレアなのか?、その姿は……?」
「生体組織のメンテナンスに使うエネルギーも三笠の蘇生に使いました。三笠がダルを抜けたら、元に戻します。しばらく見苦しいでしょうが辛抱してください」
「ごめん、他の乗員は?」
「こちらです」
クレアが案内してくれたのは浴室だ。浴室は戦闘時には戦死者の安置室になる、血が流れてもシャワーで洗い流せるためで、日露戦争の時は数十名の戦死者が安置された。余計な知識が悪い予感をさせる。
「換気と密閉性に優れた施設だからです。艦長も一昨日まではここに収容していたんですよ」
「そ、そうか……」
よかった、とりあえずは生きているようだ(^_^;)
救命カプセルは、船内で使う場合、状態を視認できるように半面が透明になっている。樟葉と天音のカプセルを見てドキリとした。
「なんで裸?」
「服は、体を締め付けます。そこから皮膚や内臓に負担をかけてしまうので、みなさんが眠りについたあと、裸にしました」
「オレは、服を着てるけど」
「蘇生の兆候が見えたので、昨日服を着せました」
「え、クレアが着せてくれたの(#^_^#)?」
「はい、ちゃんと着せたつもりなんですけど、不具合があったら、ご自分で直してください」
「クレアこそ、そのスケルトン、なんとかしろよ。他の三人が目を覚ましたら、オレよりビックリするぜ」
「ダルを抜けるまで気が抜けません」
「そうか……トシのカプセルは?」
「トシさんのカプセルは、こちらです」
トシのカプセルは、隣のキャビンに移されていた。
「お早う。東郷君が一番だったわね」
みかさんがカプセルに寄り添ってくれていた。悪い予感がした。トシのカプセルには白い布がかけられているのだ。
「トシは……?」
「カプセルとの相性が悪くて五年しかもたなかった。ごめんなさいね……」
「そんな!」
白布を剥ぎ取った。
透明なカプセルの中にいたのは、ミイラ化したトシの変わり果てた姿だった。
「どうにもならなかったの……?」
「秋山君を助けようと思ったら、その分三笠の復旧が遅れる。カプセルは20年しかもたないのよ」
「機関長を助けようとしたら、全員助からなかったです」
「そうなんだ……」
「そこで相談があるの。三笠の復旧も終わったし、秋山君のクローンを作ろうかと思うの。これからの航海に機関長は欠かせないわ」
「どうしてオレに聞くんだよ。オレに黙ってやってくれたら、こんなショック受けずにすんだのに!」
「だって、あなたは艦長だもの、全てのことを知っておく必要があるわ」
「じゃ、クローンでもいいから再生してやってくれよ。トシは、やっと立ち直ったところなんだから」
「その前に、秋山……トシくんの最後をしっかり見ておいてあげて」
「う、うん……」
トシのカプセルの蓋が開けられた。
賞味期限が過ぎたスルメのような臭いがした。トシが胸に抱いているスマホを手に取った。
皮肉なことに、スマホの電池は残っていた。日本の電池技術はすごいぜ。
マチウケは、亡くなった妹の写真だった。
ホームセンターで自転車を買ってもらったばかりの写真。
嬉しくてたまらない顔でピースサインをしている。あまりにいい顔なので思わず撮ったのだろう。その数分後にバイクに跳ねられて死んでしまうとも知らずに。
「じゃ、カプセルを閉じて。再生するわ」
ミカさんは、ミイラ化したトシの皮膚のかけらに息を吹きかけた。目の前のベッドが人型に光った。
光が収まると、そこには寝息を立てているトシがいた。そして、みかさんが指を一振りすると、カプセルの中のミイラは、煙になって消えてしまった。
「ミイラがいたんじゃ、話のつじつまがあわないから。あくまで、トシくんは東郷君と同じように目覚めた……忘れないでちょうだいね。それからクレアさんも、それじゃあんまり。生体組織再生しときましょうね」
クレアが、元に戻ると同時にクローンのトシが、ベッドで目覚めて伸びをした。
「ああ……よく寝たあ。やっぱ先輩の方が目覚めるの早かったっすね。樟葉さんと天音さんは?」
「隣の部屋、あ、おい……」
「せんぱーい!」
お気楽に、トシは隣の浴室に行った。数秒後真っ赤な顔をしてトシが戻って来た。
「な、なにも着てないんですね(# ゚Д゚#)……で、ウレシコワさんは?」
「あ?」
虚を突かれたような気がした。ウレシコワのことは、今の今まで忘れていた。
ネコメイドたちが揃って目をそらせた。
☆ 主な登場人物
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メイドさんたち シロメ クロメ チャメ ミケメ
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