上 下
31 / 50

31[水の惑星アクアリンド・1]

しおりを挟む
宇宙戦艦三笠

31[水の惑星アクアリンド・1] 修一  




「両舷10時と2時の方向に敵艦体!」「距離4パーセク!」

 Jアラートみたいな警報とともに当直のクレアとウレシコワが叫んだ。


「両舷共に10万隻、クルーザーとコルベットの混成艦隊、あと1パーセクで射程に入ります」

「敵艦隊、共にエネルギー充填中の模様。モニターに出します」


 クレアとウレシコワが的確に分析し、報告を上げてくる。モニターには、敵艦一隻ずつのエネルギー充填の様子がグラフに表され、まるで、シャワーのようなスピードでスクロールされている。

「全艦の充填には3分ほどだな。両舷前方にバリアー展開!」

 俺が命じたときに、砲術長の天音が遅れて駆け込んできた。

「ごめん! ミカさんバリアーお願い!」

 天音は、濡れた髪のまま、いきなり船霊のミカさんに頼んだ。

「天音、冷静に。ボタンぐらい留めてからきなさいよ(#`_´#)!」

 樟葉に怒られる。

 天音は、ざっと体を拭いたあとにいきなり戦闘服を着て、第一第二ボタンが外れたままだった。俺とトシの視線が自然に天音の胸元に向く。さすがに、0・2秒で、天音はボタンを留めた。

 が、その0・2秒が命とりになった!

「敵、全艦光子砲発射。着弾まで15秒!」

「ミカさん、バリアー!」

「大丈夫、間に合うわ」

 ミカさんは冷静に言った。

「カウンター砲撃セット!」

 カウンター砲撃とは、三笠の隠し技で、敵の攻撃エネルギーを瞬時に三笠のエネルギー変換し、着弾と同時に、そのエネルギーの衝撃を和らげて、攻撃力に変えるという優れ技である。カタログスペック通りにいけば、三笠は無事で、敵は鏡に反射した光を受けるように、自分の攻撃のお返しを受けるはずだった。

「着弾まで2秒。対衝撃閃光防御!」

 クルーは、ゴーグルを下ろし、身を縮め持ち場の機器に掴まった。



 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!



 ウワアアアアアアアア!!

 震度7ぐらいの衝撃がきた!

 天音が急場に留めたボタンが、みんな弾け飛んだ。瞬間胸が露わになった天音だったが、余裕ぶって見ている余裕はなかった。

 三笠はシールドで受け止めたエネルギーの大半を攻撃力に変換。カウンター砲撃を行った。主砲、舷側砲から、毎秒100発の斉射で光子砲が放たれた。

 しかし、両舷で100万発を超える敵弾のエネルギーは変換しきれず。舷側をつたって、シールドの無い艦の後方に着弾し、いくらかの被害が出てしまった。


「敵、6万隻を撃破。シールドを張りながら撤退していきます」

「各部、被害報告!」

「推進機、機関共に異常無し!」

「主砲、舷側砲異常なし!」

「右舷ガンルームに被弾。隔壁閉鎖」

「……後部水タンクに被弾。残水10」
 
「天音、シャワー済ましといてよかったね。飲料用に一週間もつかどうかだよ……」

 樟葉が優しくフォローするが、責任感と癇癪の強い天音は唇を噛んでいる。

「ここらへんで、水を補給できる星はないかしら?」

 ウレシコワが、真っ直ぐにレイマ姫に声を掛けた。

「右舷の2パーセクさアクアリンドがあるじゃ……」

「「「「アクアリンド……」」」」

「んだ……覚悟が必要じゃ」

 アクアリンドは、表面の90%が水という星であったが、グリンヘルドもシュトルハーヘンも手を付けないだけの理由があったのだ……。


☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 クレア         ボイジャーのスピリット
 ウレシコワ       ブァリヤーグの船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鋼月の軌跡

チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル! 未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

処理中です...