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2[黎明の時・2]
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宇宙戦艦三笠
2[黎明の時・2]
なかなか寝付けなかった。
潰した当事者が言うのもなんだけど、ブンケンは学校での唯一の居場所だった。
と言っても、ブンケン以外でシカトされたり、学校そのものが嫌になっていたわけじゃない。一年生のトシを除いて樟葉も天音も横須賀国際高校の生徒としてはテキトーに順応して立ち回っている、むろん俺もな。
でも、なんちゅうか、本音で付き合えたのはブンケンの仲間だけ。でも、そのことをブンケン同士で言うのは気恥ずかしくって言ったことは無い。フランクに生きているようでも、高校生というのはめんどくせえもんだよな。
ブンケン(横須賀文化研究部)という地味なクラブは元来が横須賀を舞台にしたRPGの聖地巡礼のオタクが集まってできたクラブだけあって、仲間内の結びつきは強かった。
オレたちが入部したころ、NHKの『坂の上の雲』がネット配信で何度目かのブームになっていた。聖地巡礼みたいに戦艦三笠やロケ地を巡って部活のホームページに上げたり、SNSで動画をアップしたり、イベントなんかは実況したり。広告料やスパチャも少しはあったりして、部活の機材を揃えたり取材費に使えたりして充実していた。
でも高校生の悲しさ、半年もやると横須賀ネタが途切れてきた。調べると横須賀ネタは『坂の上の雲』の他は『つ〇きす』とかがあるんだけど、R指定なんで取り上げるわけにもいかない。純粋に自衛隊や米軍がらみのネタは歴史にしろリアルにしろ、ブンケンでは及びもつかないオタクや大人の人ばかりで太刀打ちできない。
それで頭を巡らせると、隣接する横浜や湘南を舞台にした映画やドラマやアニメはいくらでもあることに気付く。それで、放課後や休日に足を伸ばしてネタを仕込むんだけど、やはりニワカがアクセス稼ぎにでっち上げても、そうそうアタリをとれるもんじゃない。
「まあ、資金も少しはできたし、あとは君たちでがんばんなよ」
「うんうん、自分でやってこその部活だからね」
三年生の広瀬先輩、杉野先輩に励まされて、なんとか頑張ってきたけど。目立った成果もあげられず、部活の最低要件である――部員五人以上――も割ってしまって部室を明け渡すことになってしまった。
トシ
トシは、この春、たった一人の新入部員として入ってきた。
でも、一学期の終わりごろから不登校になっちまって、二学期になったら……という願いも虚しく、本物の引きこもりになっちまった。何度か家まで行ったけど、会うことさえできなかった。校門前で解散の一本締めをやったとき電柱三つ分先に来れたのはトシにしては上出来。
三人の結びつきは……正直ただの「同級生」になってしまいそうだな。天音も樟葉もわけもなく群れるのは良しとしないタイプだ。
寝られないままパソコンを点けた。立ち上がると習慣でブンケンのアイコンをクリックしてしまう。
あ……そうか。
削除したので何も出てこない。
「天音と同じことやってどーすんだよ……」
樟葉か天音とチャットとも思ったけど、午前0時半という時間を考えれば気が引ける。それに、こういう傷の舐めあいみたいなことは樟葉は苦手だし天音は嫌いだしな。
もう切ろう……そう思った時、画面に『後ろを見て』という文字が浮かび上がった。
え……なんだろう?
振り返ると……セーラー服にお下げという古典的な女生徒が、オレのベッドにハニカミながら座っていた。
「ども……」
「だれ……?」
「えー……神さまだったり……します(*´∀`*)」
「か、神さま!?」
「あ、一応って枕詞がつくけどね(^_^;)」
ハニカミながら、でも、どこか真剣な眼差しは、ジブリの『コクリコ坂から』に出てくるメルに似ている。
スーーーー
その子は座った姿勢のままオレの傍に寄ってきた……つまり座ったまま宙に浮いている。
「え……神さまが、なんの用……っすか?」
「宇宙戦艦三笠に乗ってもらえないかしら?」
「……は?」
「うん(^_^;)」
とたんに周りのものの存在が希薄になり、すぐに真っ白になったかと思うと急に椅子の存在が無くなり、20センチほど自由落下した。
わ!?
腹にズンときて落ちたところは、革張りのソフアーの上だった。
テーブルを挟んで右側に樟葉と天音。左側にはトシが居る。
で、二秒ほどして気づいた。天音が素っ裸。
で、次の瞬間天音の悲鳴が、世界中の熟睡者を起こすぐらいに響き渡った……。
キャーーーーーーーーー!!
☆ 主な登場人物
修一 横須賀国際高校二年
樟葉 横須賀国際高校二年
天音 横須賀国際高校二年
トシ 横須賀国際高校一年
2[黎明の時・2]
なかなか寝付けなかった。
潰した当事者が言うのもなんだけど、ブンケンは学校での唯一の居場所だった。
と言っても、ブンケン以外でシカトされたり、学校そのものが嫌になっていたわけじゃない。一年生のトシを除いて樟葉も天音も横須賀国際高校の生徒としてはテキトーに順応して立ち回っている、むろん俺もな。
でも、なんちゅうか、本音で付き合えたのはブンケンの仲間だけ。でも、そのことをブンケン同士で言うのは気恥ずかしくって言ったことは無い。フランクに生きているようでも、高校生というのはめんどくせえもんだよな。
ブンケン(横須賀文化研究部)という地味なクラブは元来が横須賀を舞台にしたRPGの聖地巡礼のオタクが集まってできたクラブだけあって、仲間内の結びつきは強かった。
オレたちが入部したころ、NHKの『坂の上の雲』がネット配信で何度目かのブームになっていた。聖地巡礼みたいに戦艦三笠やロケ地を巡って部活のホームページに上げたり、SNSで動画をアップしたり、イベントなんかは実況したり。広告料やスパチャも少しはあったりして、部活の機材を揃えたり取材費に使えたりして充実していた。
でも高校生の悲しさ、半年もやると横須賀ネタが途切れてきた。調べると横須賀ネタは『坂の上の雲』の他は『つ〇きす』とかがあるんだけど、R指定なんで取り上げるわけにもいかない。純粋に自衛隊や米軍がらみのネタは歴史にしろリアルにしろ、ブンケンでは及びもつかないオタクや大人の人ばかりで太刀打ちできない。
それで頭を巡らせると、隣接する横浜や湘南を舞台にした映画やドラマやアニメはいくらでもあることに気付く。それで、放課後や休日に足を伸ばしてネタを仕込むんだけど、やはりニワカがアクセス稼ぎにでっち上げても、そうそうアタリをとれるもんじゃない。
「まあ、資金も少しはできたし、あとは君たちでがんばんなよ」
「うんうん、自分でやってこその部活だからね」
三年生の広瀬先輩、杉野先輩に励まされて、なんとか頑張ってきたけど。目立った成果もあげられず、部活の最低要件である――部員五人以上――も割ってしまって部室を明け渡すことになってしまった。
トシ
トシは、この春、たった一人の新入部員として入ってきた。
でも、一学期の終わりごろから不登校になっちまって、二学期になったら……という願いも虚しく、本物の引きこもりになっちまった。何度か家まで行ったけど、会うことさえできなかった。校門前で解散の一本締めをやったとき電柱三つ分先に来れたのはトシにしては上出来。
三人の結びつきは……正直ただの「同級生」になってしまいそうだな。天音も樟葉もわけもなく群れるのは良しとしないタイプだ。
寝られないままパソコンを点けた。立ち上がると習慣でブンケンのアイコンをクリックしてしまう。
あ……そうか。
削除したので何も出てこない。
「天音と同じことやってどーすんだよ……」
樟葉か天音とチャットとも思ったけど、午前0時半という時間を考えれば気が引ける。それに、こういう傷の舐めあいみたいなことは樟葉は苦手だし天音は嫌いだしな。
もう切ろう……そう思った時、画面に『後ろを見て』という文字が浮かび上がった。
え……なんだろう?
振り返ると……セーラー服にお下げという古典的な女生徒が、オレのベッドにハニカミながら座っていた。
「ども……」
「だれ……?」
「えー……神さまだったり……します(*´∀`*)」
「か、神さま!?」
「あ、一応って枕詞がつくけどね(^_^;)」
ハニカミながら、でも、どこか真剣な眼差しは、ジブリの『コクリコ坂から』に出てくるメルに似ている。
スーーーー
その子は座った姿勢のままオレの傍に寄ってきた……つまり座ったまま宙に浮いている。
「え……神さまが、なんの用……っすか?」
「宇宙戦艦三笠に乗ってもらえないかしら?」
「……は?」
「うん(^_^;)」
とたんに周りのものの存在が希薄になり、すぐに真っ白になったかと思うと急に椅子の存在が無くなり、20センチほど自由落下した。
わ!?
腹にズンときて落ちたところは、革張りのソフアーの上だった。
テーブルを挟んで右側に樟葉と天音。左側にはトシが居る。
で、二秒ほどして気づいた。天音が素っ裸。
で、次の瞬間天音の悲鳴が、世界中の熟睡者を起こすぐらいに響き渡った……。
キャーーーーーーーーー!!
☆ 主な登場人物
修一 横須賀国際高校二年
樟葉 横須賀国際高校二年
天音 横須賀国際高校二年
トシ 横須賀国際高校一年
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