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96『微妙な気持ち』
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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
96『微妙な気持ち』小菊
我が家に外人さんがやって来た(;゚Д゚)。
それも十八歳のブロンドの女の子……第一印象は女の人なんだけど、自己紹介で十八と言われてぶっ飛んだ。
今どき外人の女の子なんて珍しくないんだけど、受ける印象がひどく大人びている、おまけに日本語ペラペラ。
「……ということで、しばらくお預かりすることになった、みんなよろしくな」
お祖父ちゃんの紹介が終わると、青い瞳を春の海のような穏やかさにして口を開いた。
「マッジ・ヘプバーンと申します、急な話でご迷惑をおかけするかもしれませんが、勤め先が見つかるまでの間ですので、なにぶんよろしくお願いいたします」
そうなんだ、マッジさんは急に決まったお務めの為に、松ネエと同じ便で東京にやって来た。
羽田からは、自分の勤め先に行く予定だったんだけど、勤め先が火事で焼けてしまうという不運。
とりあえず落ち着く場所が必要ということで、松ネエが電話してきてお祖父ちゃんが二つ返事で引き受けた。
「当たり前なら、いったんハワイに帰るところなんですが、不退転の決意でやってきたものですから無理を申しました」
「いやいや、是非にと言ったのはわたしの方だ。お節介なんだが、若い人の決意は応援したくてね」
お祖父ちゃんが頼もしそうに言う。あたしが突破新人賞を獲った時も似たような顔をしていたけど微妙に違う。
お祖父ちゃんが三十歳も若ければ「惚れたか?」と勘違いする。曰く言い難しなんだけど、言葉にしたら「頼もしそう」ということになる……しておく。
「部屋は、小松の隣の部屋を使ってもらう」
うちは無駄に部屋が多い、大昔置屋をやっていた名残なんだけどね。
あたしは、微妙な気持ちになった。
「あ、えと……あ、あそこは、あたしが使いたいんだけど(#゚Д゚#)!」
みんなの視線が集まった。
「えと……本を書くじゃない、今の部屋は通りに面してて、ちょっとね」
「おまえ、そんなこと言ってなかったじゃねえか」
「うっさいわね! 考えてたけど言い出せなかったんじゃない」
「だけどなあ」
「黙れ、腐れ童貞!」
本当は兄貴が正しい。今の今まで部屋を代わろうとは思ってなかった、お祖父ちゃんがいきなり言うもんだから、反射的に出てしまった。
うちは間数は多いけど、手入れや掃除をしないですぐに使える部屋は、そんなには無い。
「わたしが無理を言ってるんですから、パイン……小松さんと同じ部屋で結構です」
うちに来るまでは、松ネエと、そういう話になっていたらしい。
「ようし、マッジさんには小菊の部屋を使ってもらおう。じゃ、今から引っ越しだ」
お祖父ちゃんが宣告した。
身から出た錆。
夕べは遅くまでかかって引っ越し。とてもあたしとマッジさんだけではできないので、兄貴と松ネエも手伝ってくれる。一言も文句言わないで。
悔しいけど、二人の方が大人だ。
自己嫌悪で夕べは眠れなかった。
今朝起きると、町内恒例のドブ掃除をやっている。うちは間口も広いので一家総出、マッジさんもTシャツに短パンという出で立ちで手伝っている。
あ、つい寝過ごしちゃった……
声が小さすぎたのか、誰も反応しない。
急いで状況を判断、下水に撒く薬がまだのようなので「薬もらってくる!」と宣言して町会長さんちへ。
それからは、例年通り、手を洗ったり着替えたりしてからみんなでスイカを頂く。
そして、反省しながら、この文章を打ってんのよ。
も、文句ある(#°᷄д°᷅#)!?
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
マッジ・ヘプバーン ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
ビバさん(和田友子) 高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
96『微妙な気持ち』小菊
我が家に外人さんがやって来た(;゚Д゚)。
それも十八歳のブロンドの女の子……第一印象は女の人なんだけど、自己紹介で十八と言われてぶっ飛んだ。
今どき外人の女の子なんて珍しくないんだけど、受ける印象がひどく大人びている、おまけに日本語ペラペラ。
「……ということで、しばらくお預かりすることになった、みんなよろしくな」
お祖父ちゃんの紹介が終わると、青い瞳を春の海のような穏やかさにして口を開いた。
「マッジ・ヘプバーンと申します、急な話でご迷惑をおかけするかもしれませんが、勤め先が見つかるまでの間ですので、なにぶんよろしくお願いいたします」
そうなんだ、マッジさんは急に決まったお務めの為に、松ネエと同じ便で東京にやって来た。
羽田からは、自分の勤め先に行く予定だったんだけど、勤め先が火事で焼けてしまうという不運。
とりあえず落ち着く場所が必要ということで、松ネエが電話してきてお祖父ちゃんが二つ返事で引き受けた。
「当たり前なら、いったんハワイに帰るところなんですが、不退転の決意でやってきたものですから無理を申しました」
「いやいや、是非にと言ったのはわたしの方だ。お節介なんだが、若い人の決意は応援したくてね」
お祖父ちゃんが頼もしそうに言う。あたしが突破新人賞を獲った時も似たような顔をしていたけど微妙に違う。
お祖父ちゃんが三十歳も若ければ「惚れたか?」と勘違いする。曰く言い難しなんだけど、言葉にしたら「頼もしそう」ということになる……しておく。
「部屋は、小松の隣の部屋を使ってもらう」
うちは無駄に部屋が多い、大昔置屋をやっていた名残なんだけどね。
あたしは、微妙な気持ちになった。
「あ、えと……あ、あそこは、あたしが使いたいんだけど(#゚Д゚#)!」
みんなの視線が集まった。
「えと……本を書くじゃない、今の部屋は通りに面してて、ちょっとね」
「おまえ、そんなこと言ってなかったじゃねえか」
「うっさいわね! 考えてたけど言い出せなかったんじゃない」
「だけどなあ」
「黙れ、腐れ童貞!」
本当は兄貴が正しい。今の今まで部屋を代わろうとは思ってなかった、お祖父ちゃんがいきなり言うもんだから、反射的に出てしまった。
うちは間数は多いけど、手入れや掃除をしないですぐに使える部屋は、そんなには無い。
「わたしが無理を言ってるんですから、パイン……小松さんと同じ部屋で結構です」
うちに来るまでは、松ネエと、そういう話になっていたらしい。
「ようし、マッジさんには小菊の部屋を使ってもらおう。じゃ、今から引っ越しだ」
お祖父ちゃんが宣告した。
身から出た錆。
夕べは遅くまでかかって引っ越し。とてもあたしとマッジさんだけではできないので、兄貴と松ネエも手伝ってくれる。一言も文句言わないで。
悔しいけど、二人の方が大人だ。
自己嫌悪で夕べは眠れなかった。
今朝起きると、町内恒例のドブ掃除をやっている。うちは間口も広いので一家総出、マッジさんもTシャツに短パンという出で立ちで手伝っている。
あ、つい寝過ごしちゃった……
声が小さすぎたのか、誰も反応しない。
急いで状況を判断、下水に撒く薬がまだのようなので「薬もらってくる!」と宣言して町会長さんちへ。
それからは、例年通り、手を洗ったり着替えたりしてからみんなでスイカを頂く。
そして、反省しながら、この文章を打ってんのよ。
も、文句ある(#°᷄д°᷅#)!?
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
マッジ・ヘプバーン ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
ビバさん(和田友子) 高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
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