80 / 100
80『瑠璃波美美波璃瑠……どこで切るんだ?』
しおりを挟む
泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
80『瑠璃波美美波璃瑠……どこで切るんだ?』小菊
読んでいるとは思わなかった。
『くたばれ腐れ童貞!』は25日発売のトッパ6月号に載るので、関係者以外で読んでいる人はいないはず。
「言葉が生きているわ、ただのツンデレの裏がえし兄妹愛じゃなくて、若者のことなかれに対する憎しみが心地よかった。ほら『女のここ一番に素通りかましやがって、そこに直れ! 使う気のない道具なんかちょん切ってやる!』って、ハサミ持って家中追い掛け回すじゃない、その時の家の描写がさ、昔の置屋の雰囲気と兄貴のヘタレぶりとか、荒ぶる神みたくなった佳乃(主人公)とが重層的で、なんか、初めてVRで観たときみたいな迫力だったわ!」
「え、なんで知ってるんですか?」
「わたし、すごいと思ったら、なにがなんでも自分で確認しなきゃ気が済まないの。そんなわたしのペンネームは瑠璃波美美波璃瑠(るりはびびばりる)よ」
ええ( ゚Д゚)!?
その上から読んでも下から読んでもみたいなビビットペンネームは、突破新人賞の最終選考に残って最優秀を競い合った女子高生!
書類のペンネームでしか知らなかったけど、まさか同じ神楽坂高校の生徒だとは思わなかった。
「でも、なんで発表前の作品を知ってるんですか?」
「それは言えない。そういうことも含めて、わたしの力だと思って」
「そう……(^_^;)」
「そんな二人が一緒になれば、きっとすごい化学変化が起きると思わない?」
「えと……あたし部活とかで群れる気ないんで」
「あら……そう」
瑠璃波美美波璃瑠さんの瞳孔がさらに小さくなった。
すると、瑠璃波美美波璃瑠さんは両手でほっぺたをペシペシ叩いた。
叩くと、それにつれて瞳は大きくなって、ちょうど三回叩いたところでレギュラーな大きさになり、そのせいか、ひどく柔和な顔つきになった。
正直ホッとした。
あのまま瞳孔が縮んでいったら蛇みたくなって、いや、ほんとに蛇とかになって、呼び出された校舎裏で呑み込まれてしまうんじゃないかとビビった。
「じゃ、またね。わたしのことは瑠璃波美美波璃瑠でも和田友子でも好きな方で読んでちょうだい。ほんじゃ!」
瑠璃波美美波璃瑠さんは宇宙戦艦ヤマトのクルーみたいな敬礼をして回れ右をした。
回れ右の勢いが強すぎて、スカートが大きく翻り、脚の付け根近くまで見えてしまった。あまりきれいな脚なんで、ドキリとしてしまう。
「そだ、明日から中間テスト、がんばってね。一年の一学期は先生たち締めてくるから、気を抜くと欠点だらけになっちゃうからね」
「あの……」
「なに? ひょっとして気が変わった!?」
「いえ、そうじゃなくて、瑠璃波美美波璃瑠さんのお名前って、どこで切ったらいいんですか? やっぱ真ん中?」
「好きなようにぶった切ってちょうだい、書くことにかけては敵同士なんだから」
「あ、はい、いえ……」
それだけ言い残すと、瑠璃波美美波璃瑠、いや和田友子さんは、昇降口を出ていく友だちに「いっしょに帰ろ(^▽^)」と声を掛けてふつうに行ってしまった。
スマホでググると、瑠璃波美美が苗字で、波璃瑠が名前の、キラキラペンネームだと分かった。
瑠璃波美美波璃瑠さんの言葉通り初めての中間テストはムズイ。
数一の答案用紙、下1/3が空白のままに一昨日の瑠璃波美美波璃瑠さんとの出会いを思い出しているあたし。
そだ、瑠璃波美美波璃瑠じゃ舌を噛みそうなのでビハ……ビバさんと呼ぼう。数一のテスト時間で考え付いたベストの答えなのだった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
ビバさん(和田友子) 高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
80『瑠璃波美美波璃瑠……どこで切るんだ?』小菊
読んでいるとは思わなかった。
『くたばれ腐れ童貞!』は25日発売のトッパ6月号に載るので、関係者以外で読んでいる人はいないはず。
「言葉が生きているわ、ただのツンデレの裏がえし兄妹愛じゃなくて、若者のことなかれに対する憎しみが心地よかった。ほら『女のここ一番に素通りかましやがって、そこに直れ! 使う気のない道具なんかちょん切ってやる!』って、ハサミ持って家中追い掛け回すじゃない、その時の家の描写がさ、昔の置屋の雰囲気と兄貴のヘタレぶりとか、荒ぶる神みたくなった佳乃(主人公)とが重層的で、なんか、初めてVRで観たときみたいな迫力だったわ!」
「え、なんで知ってるんですか?」
「わたし、すごいと思ったら、なにがなんでも自分で確認しなきゃ気が済まないの。そんなわたしのペンネームは瑠璃波美美波璃瑠(るりはびびばりる)よ」
ええ( ゚Д゚)!?
その上から読んでも下から読んでもみたいなビビットペンネームは、突破新人賞の最終選考に残って最優秀を競い合った女子高生!
書類のペンネームでしか知らなかったけど、まさか同じ神楽坂高校の生徒だとは思わなかった。
「でも、なんで発表前の作品を知ってるんですか?」
「それは言えない。そういうことも含めて、わたしの力だと思って」
「そう……(^_^;)」
「そんな二人が一緒になれば、きっとすごい化学変化が起きると思わない?」
「えと……あたし部活とかで群れる気ないんで」
「あら……そう」
瑠璃波美美波璃瑠さんの瞳孔がさらに小さくなった。
すると、瑠璃波美美波璃瑠さんは両手でほっぺたをペシペシ叩いた。
叩くと、それにつれて瞳は大きくなって、ちょうど三回叩いたところでレギュラーな大きさになり、そのせいか、ひどく柔和な顔つきになった。
正直ホッとした。
あのまま瞳孔が縮んでいったら蛇みたくなって、いや、ほんとに蛇とかになって、呼び出された校舎裏で呑み込まれてしまうんじゃないかとビビった。
「じゃ、またね。わたしのことは瑠璃波美美波璃瑠でも和田友子でも好きな方で読んでちょうだい。ほんじゃ!」
瑠璃波美美波璃瑠さんは宇宙戦艦ヤマトのクルーみたいな敬礼をして回れ右をした。
回れ右の勢いが強すぎて、スカートが大きく翻り、脚の付け根近くまで見えてしまった。あまりきれいな脚なんで、ドキリとしてしまう。
「そだ、明日から中間テスト、がんばってね。一年の一学期は先生たち締めてくるから、気を抜くと欠点だらけになっちゃうからね」
「あの……」
「なに? ひょっとして気が変わった!?」
「いえ、そうじゃなくて、瑠璃波美美波璃瑠さんのお名前って、どこで切ったらいいんですか? やっぱ真ん中?」
「好きなようにぶった切ってちょうだい、書くことにかけては敵同士なんだから」
「あ、はい、いえ……」
それだけ言い残すと、瑠璃波美美波璃瑠、いや和田友子さんは、昇降口を出ていく友だちに「いっしょに帰ろ(^▽^)」と声を掛けてふつうに行ってしまった。
スマホでググると、瑠璃波美美が苗字で、波璃瑠が名前の、キラキラペンネームだと分かった。
瑠璃波美美波璃瑠さんの言葉通り初めての中間テストはムズイ。
数一の答案用紙、下1/3が空白のままに一昨日の瑠璃波美美波璃瑠さんとの出会いを思い出しているあたし。
そだ、瑠璃波美美波璃瑠じゃ舌を噛みそうなのでビハ……ビバさんと呼ぼう。数一のテスト時間で考え付いたベストの答えなのだった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
ビバさん(和田友子) 高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
家政夫くんと、はてなのレシピ
真鳥カノ
ライト文芸
12/13 アルファポリス文庫様より書籍刊行です!
***
第五回ライト文芸大賞「家族愛賞」を頂きました!
皆々様、本当にありがとうございます!
***
大学に入ったばかりの泉竹志は、母の知人から、家政夫のバイトを紹介される。
派遣先で待っていたのは、とてもノッポで、無愛想で、生真面目な初老の男性・野保だった。
妻を亡くして気落ちしている野保を手伝ううち、竹志はとあるノートを発見する。
それは、亡くなった野保の妻が残したレシピノートだった。
野保の好物ばかりが書かれてあるそのノートだが、どれも、何か一つ欠けている。
「さあ、最後の『美味しい』の秘密は、何でしょう?」
これは謎でもミステリーでもない、ほんのちょっとした”はてな”のお話。
「はてなのレシピ」がもたらす、温かい物語。
※こちらの作品はエブリスタの方でも公開しております。
ピアノの家のふたりの姉妹
九重智
ライト文芸
【ふたりの親愛はピアノの連弾のように奏でられた。いざもう一人の弾き手を失うと、幸福の音色も、物足りない、隙間だらけのわびしさばかり残ってしまう。】
ピアノの響く家には、ふたりの姉妹がいた。仲睦ましい姉妹は互いに深い親愛を抱えていたが、姉の雪子の変化により、ふたりの関係は徐々に変わっていく。
(縦書き読み推奨です)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
徹夜明けの社畜 ヤンキー姉さんと海へ行く
マナ
青春
IT土方で今日も徹夜している社畜のボクは、
朝方栄養ドリンクを買いに会社からコンビニへ行く。
そこで出会ったいかにもヤンキーという感じの女の人に声を掛けられ、
気付いたら一緒に海へと向かっているのだった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ママは週末VTuber ~社長が私のファンですか?~
富士とまと
ライト文芸
深山結衣(38):高校生の息子を持つシングルマザー
東御社長(40):隠れオタクのイケメン/
深山はある日息子に頼まれてVチューバーデビューをすることに。中堅建築会社で仕事をしながら週末は生放送。取引先の女嫌いの東御社長になぜか目をつけられて……。
アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?
無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。
どっちが稼げるのだろう?
いろんな方の想いがあるのかと・・・。
2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。
あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる