74 / 100
74『盗撮すんじゃないわよ!』
しおりを挟む
泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
74『盗撮すんじゃないわよ!』小菊
喋る前には空気を吸わなきゃならない。
あたしは、一瞬遅れてしまった。
「先輩と食べてくる!」
「ア、アハハ……(#^▽^#)」
フライングした増田さんの一言にはくすぐったい笑顔で返すしかなかった。
今日の3・4時間目は初の調理実習で、クラスは緊張と期待でソワソワしている。
なんせ、高校に入って初めての調理実習で、こういうイレギュラーな実習の時は、普段の成績や様子からでは推し量れない結果が出るものなんだよ。
中学の時も、クラスでイジメラレ傾向にあったS君が仕込みの段階から美味しそうな匂いをさせてカレーを作った。玉ねぎのみじん切りも料理番組の先生みたいだったし。そのために女子たちから「S君の女子力すごいよ!」ということで俄然注目され、あっという間に人気者になってしまったことがある。
高校にもなると、そこそこお料理の出来る子は結構いる。
だから、S君のようにクラスのスターダムに昇るとこまではいかないけど、増田さんの中では会心の出来であった。
おそらく、味見するまでは「先輩と食べてくる!」ということは考えていなかった。
瞬間的に閃いたことなので、破壊力は抜群。
あらかじめ考えていたら、引っ込み思案の増田さんは「先輩と食べてくる!」にはならない。
入学二日目から、お昼はあたしといっしょ。その習慣を壊す勇気は増田さんには無い。
で、先輩というのは、言うまでもなくノリスケよ!
作品のちらしずしをタッパに詰めて教室に戻る道すがら、ひょっとしてと渡り廊下から目線を下ろしたところに二人は居た。
中庭の藤棚の下、仲良くベンチに腰掛けて食べているよ~(n*´ω`*n)。
ノリスケは誰に対しても垣根のないやつで、あのフレンドリーさに偽りはない。
増田さんも、あたしには見せたことのない自然な親しさで接している。
う~ん、でも微かな媚を感じるのは、あたしのヒガミ?
いや、相手がノリスケでヒガムわけないんだけど、なんだろね、この感じ?
月曜にこっそり教えてくれたけど、連休の後半は神社の風信子さんたちと一緒に奥多摩に行ってきたんだ。
ま、うちの腐れ童貞とかシグマとかいっしょだったから、そうそう飛躍することってないと思うんだけど……。
あたしはスマホを出して藤棚の二人を撮ることにした。
カシャ! カシャカシャカシャ!
シャッター音に驚いて柱を挟んだ隣を見る。
「な、なにやってんのよ!」
なんと、あたしより先に腐れ童貞が二人の様子を連写しているじゃないの( ゚д゚ )。
「い、いつから、そこに居やがるんだ(;'∀')!?」
質問には答えないで糾弾してきやがった。
「盗撮すんじゃないわよ!」
「なにが盗撮だ、お前だってスマホ構えて撮る気マンマンじゃねーか!」
「あたしとあんたとじゃ撮る意味が違うのよ!!」
「声デカ……」
「ウ……」
兄妹仲良くしたくもないのに、柱の陰に密着して身を隠した。
「ノリスケに頼まれたんだよ、もっと増田さんを自由にしてやるためにな」
え、なにそれ……?
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
74『盗撮すんじゃないわよ!』小菊
喋る前には空気を吸わなきゃならない。
あたしは、一瞬遅れてしまった。
「先輩と食べてくる!」
「ア、アハハ……(#^▽^#)」
フライングした増田さんの一言にはくすぐったい笑顔で返すしかなかった。
今日の3・4時間目は初の調理実習で、クラスは緊張と期待でソワソワしている。
なんせ、高校に入って初めての調理実習で、こういうイレギュラーな実習の時は、普段の成績や様子からでは推し量れない結果が出るものなんだよ。
中学の時も、クラスでイジメラレ傾向にあったS君が仕込みの段階から美味しそうな匂いをさせてカレーを作った。玉ねぎのみじん切りも料理番組の先生みたいだったし。そのために女子たちから「S君の女子力すごいよ!」ということで俄然注目され、あっという間に人気者になってしまったことがある。
高校にもなると、そこそこお料理の出来る子は結構いる。
だから、S君のようにクラスのスターダムに昇るとこまではいかないけど、増田さんの中では会心の出来であった。
おそらく、味見するまでは「先輩と食べてくる!」ということは考えていなかった。
瞬間的に閃いたことなので、破壊力は抜群。
あらかじめ考えていたら、引っ込み思案の増田さんは「先輩と食べてくる!」にはならない。
入学二日目から、お昼はあたしといっしょ。その習慣を壊す勇気は増田さんには無い。
で、先輩というのは、言うまでもなくノリスケよ!
作品のちらしずしをタッパに詰めて教室に戻る道すがら、ひょっとしてと渡り廊下から目線を下ろしたところに二人は居た。
中庭の藤棚の下、仲良くベンチに腰掛けて食べているよ~(n*´ω`*n)。
ノリスケは誰に対しても垣根のないやつで、あのフレンドリーさに偽りはない。
増田さんも、あたしには見せたことのない自然な親しさで接している。
う~ん、でも微かな媚を感じるのは、あたしのヒガミ?
いや、相手がノリスケでヒガムわけないんだけど、なんだろね、この感じ?
月曜にこっそり教えてくれたけど、連休の後半は神社の風信子さんたちと一緒に奥多摩に行ってきたんだ。
ま、うちの腐れ童貞とかシグマとかいっしょだったから、そうそう飛躍することってないと思うんだけど……。
あたしはスマホを出して藤棚の二人を撮ることにした。
カシャ! カシャカシャカシャ!
シャッター音に驚いて柱を挟んだ隣を見る。
「な、なにやってんのよ!」
なんと、あたしより先に腐れ童貞が二人の様子を連写しているじゃないの( ゚д゚ )。
「い、いつから、そこに居やがるんだ(;'∀')!?」
質問には答えないで糾弾してきやがった。
「盗撮すんじゃないわよ!」
「なにが盗撮だ、お前だってスマホ構えて撮る気マンマンじゃねーか!」
「あたしとあんたとじゃ撮る意味が違うのよ!!」
「声デカ……」
「ウ……」
兄妹仲良くしたくもないのに、柱の陰に密着して身を隠した。
「ノリスケに頼まれたんだよ、もっと増田さんを自由にしてやるためにな」
え、なにそれ……?
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
食いしんぼっち(仮)
あおみなみ
ライト文芸
「去るまちも、行くまちも、桜はまだ咲かないけれど」
就職のため、生まれ育った街を離れ、ひとり暮らしをすることになった「私」。
地元の名物やおいしいものを思いつくまま食べて、ブログに記録し始める。
舞台背景は「2014年」を想定しています。
かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉
菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。
気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。
姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。
全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。
我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!
真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。
そこで目撃してしまったのだ。
婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。
よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!
長くなって来たので長編に変更しました。
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
可不可 §ボーダーライン・シンドローム§ サイコサスペンス
竹比古
ライト文芸
先生、ぼくたちは幸福だったのに、異常だったのですか?
周りの身勝手な人たちは、不幸そうなのに正常だったのですか?
世の人々から、可ではなく、不可というレッテルを貼られ、まるで鴉(カフカ)を見るように厭な顔をされる精神病患者たち。
USA帰りの青年精神科医と、その秘書が、総合病院の一角たる精神科病棟で、或いは行く先々で、ボーダーラインの向こう側にいる人々と出会う。
可ではなく、不可をつけられた人たちとどう向き合い、接するのか。
何か事情がありそうな少年秘書と、青年精神科医の一話読みきりシリーズ。
大雑把な春名と、小舅のような仁の前に現れる、今日の患者は……。
※以前、他サイトで掲載していたものです。
※一部、性描写(必要描写です)があります。苦手な方はお気を付けください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる