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64『三人の中坊女子』
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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
64『三人の中坊女子』オメガ
調子よく六つ目をゲットしたところでため息が出た。
「アハハハ、おまえもか」
楽しそうにノリスケが笑う。
「三年連続でクレ-ンゲームだぜ」
「いや、六年連続だ」
「あーーーだったな」
俺とノリスケは、連休というとアキバにくり出す。
ぼんやり過ごすにはアキバが一番だ。あちこち見て回った末にゲーセンになる。
と言っても、いきなりゲームに飛びついたりはしない。とりあえずは人がやっているのを見物する。
見物してるうちに、やりたいゲームがはっきりしてくる。
どっちかてーと格ゲーが好きなんだけど、ゲームやキャラによって好き嫌いがある。その日の気分というのもあるしな。
新しい筐体が入っていれば、とりあえずは足が向くが、長蛇の列になっていたりすると敬遠する。
俺もノリスケも、とことん没頭したりはしないんだ。ゲームで散財したり熱くなるのは性に合わない。
そんなゲーセンの締めがクレーンゲームなんだ。たいてい一個か二個しか取れないんだけど、手元には六つの縫いぐるみとプライズフィギュア。持って帰るには持て余す。
「よかったら、もらってくれる?」
とったばかりの景品を、となりの筐体で悪戦苦闘している中坊女子たちに示す。
「あ、別にナンパとかじゃないから(^_^;)」
「俺たち景品目当てじゃないから持て余すんだ、どう?」
三人の中坊女子は目配せしあう。
「あ、ありがとう」
ポニテが礼を言って、眼鏡っ子とセミロングが受け取ってくれた。
正直、そのへんにオキッパにしてもいいんだけど、不審物と思われても困る。
今日日はなんにだって爆弾とかが仕込める、俺たちが置いたものが、そう思われるのも嫌だしね。
中坊女子に気を使わせるのもやなんで、その足でゲーセンを出た。
「そういや、昨日は東京中の電車が停まっちまったんだよな」
ここんとこミサイルとか北○○のことがかまびすしい。
学校でも避難訓練がミサイル対応になってきた。おかげで木田さんを保健室に運んで、お祖父さんの徳川さんが木田さんともどもお礼に来ることにもなった。
ノリスケも図書室の本が縁で一年の女子と付き合いだして、すこし悩んでいる。
俺を朝寝坊させてしまうくらいの長電話ですっきりしたのか、その話題には触れない。俺もノリスケが切り出さない限り聞きもしない。
昭和通り口にさしかかったところでスマホが振動した。
「お、風信子からだ」
スマホには――相談したいことがあるので来てほしい――のメールが入っていた。
「神さまの思し召しかな、ま、今日は切り上げようか」
連休に男二人という状況は世間一般的にはシケているんだろうけど、俺もノリスケもそういう感性じゃない。
でも、このまま解散というのも凹んでしまう。
――ノリスケもいっしょでいいか?――
そう返事を打つと、折り返し――その方がいいわよ!――と返ってくる。
改札に向かおうとすると、さっきの中坊女子たちがオロオロしている。
「どうかした?」
声を掛けると、三人とも泣き出しそうな顔を向けてきた。
「財布がないんです……」
眼鏡っ子が狼狽えている。
「熱中しちゃうと注意力散漫になるんで、貴重品はまとめてあたしが持ってたんです」
「彼女がいちばん冷静だから」
「ゲーセンで景品の袋もらって……」
「あ、その時に?」
「ゲーセンもどったけど、スタッフにも聞いたけど……」
悪いことをした。男二人から景品をもらうというイレギュラーが災いしたんだ。
「君たち、どこまで帰るの?」
「えと……」
目配せすると、三人で息を揃えた。
「「「浦安です」」」
歩いて帰れる距離じゃない。けっきょく浦安までの切符を買って渡してやった。
「ありがとうございます」
「家に着いたらご連絡して、後日お金をお返しします」
「住所とかメアドとか教えてもらっていいですか?」
「あ、う……」
「いいよ、困ったときはお互いさまってか、いきなり景品渡されてびっくりもしたんだろうし」
ノリスケが言うので、俺も笑顔で頷いた。
「すまん、あの子以外のことは気に掛けたくないんだ」
改札を潜りながら、親友はポツリと言った。
今日もミサイルは飛んでこないようだ。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
64『三人の中坊女子』オメガ
調子よく六つ目をゲットしたところでため息が出た。
「アハハハ、おまえもか」
楽しそうにノリスケが笑う。
「三年連続でクレ-ンゲームだぜ」
「いや、六年連続だ」
「あーーーだったな」
俺とノリスケは、連休というとアキバにくり出す。
ぼんやり過ごすにはアキバが一番だ。あちこち見て回った末にゲーセンになる。
と言っても、いきなりゲームに飛びついたりはしない。とりあえずは人がやっているのを見物する。
見物してるうちに、やりたいゲームがはっきりしてくる。
どっちかてーと格ゲーが好きなんだけど、ゲームやキャラによって好き嫌いがある。その日の気分というのもあるしな。
新しい筐体が入っていれば、とりあえずは足が向くが、長蛇の列になっていたりすると敬遠する。
俺もノリスケも、とことん没頭したりはしないんだ。ゲームで散財したり熱くなるのは性に合わない。
そんなゲーセンの締めがクレーンゲームなんだ。たいてい一個か二個しか取れないんだけど、手元には六つの縫いぐるみとプライズフィギュア。持って帰るには持て余す。
「よかったら、もらってくれる?」
とったばかりの景品を、となりの筐体で悪戦苦闘している中坊女子たちに示す。
「あ、別にナンパとかじゃないから(^_^;)」
「俺たち景品目当てじゃないから持て余すんだ、どう?」
三人の中坊女子は目配せしあう。
「あ、ありがとう」
ポニテが礼を言って、眼鏡っ子とセミロングが受け取ってくれた。
正直、そのへんにオキッパにしてもいいんだけど、不審物と思われても困る。
今日日はなんにだって爆弾とかが仕込める、俺たちが置いたものが、そう思われるのも嫌だしね。
中坊女子に気を使わせるのもやなんで、その足でゲーセンを出た。
「そういや、昨日は東京中の電車が停まっちまったんだよな」
ここんとこミサイルとか北○○のことがかまびすしい。
学校でも避難訓練がミサイル対応になってきた。おかげで木田さんを保健室に運んで、お祖父さんの徳川さんが木田さんともどもお礼に来ることにもなった。
ノリスケも図書室の本が縁で一年の女子と付き合いだして、すこし悩んでいる。
俺を朝寝坊させてしまうくらいの長電話ですっきりしたのか、その話題には触れない。俺もノリスケが切り出さない限り聞きもしない。
昭和通り口にさしかかったところでスマホが振動した。
「お、風信子からだ」
スマホには――相談したいことがあるので来てほしい――のメールが入っていた。
「神さまの思し召しかな、ま、今日は切り上げようか」
連休に男二人という状況は世間一般的にはシケているんだろうけど、俺もノリスケもそういう感性じゃない。
でも、このまま解散というのも凹んでしまう。
――ノリスケもいっしょでいいか?――
そう返事を打つと、折り返し――その方がいいわよ!――と返ってくる。
改札に向かおうとすると、さっきの中坊女子たちがオロオロしている。
「どうかした?」
声を掛けると、三人とも泣き出しそうな顔を向けてきた。
「財布がないんです……」
眼鏡っ子が狼狽えている。
「熱中しちゃうと注意力散漫になるんで、貴重品はまとめてあたしが持ってたんです」
「彼女がいちばん冷静だから」
「ゲーセンで景品の袋もらって……」
「あ、その時に?」
「ゲーセンもどったけど、スタッフにも聞いたけど……」
悪いことをした。男二人から景品をもらうというイレギュラーが災いしたんだ。
「君たち、どこまで帰るの?」
「えと……」
目配せすると、三人で息を揃えた。
「「「浦安です」」」
歩いて帰れる距離じゃない。けっきょく浦安までの切符を買って渡してやった。
「ありがとうございます」
「家に着いたらご連絡して、後日お金をお返しします」
「住所とかメアドとか教えてもらっていいですか?」
「あ、う……」
「いいよ、困ったときはお互いさまってか、いきなり景品渡されてびっくりもしたんだろうし」
ノリスケが言うので、俺も笑顔で頷いた。
「すまん、あの子以外のことは気に掛けたくないんだ」
改札を潜りながら、親友はポツリと言った。
今日もミサイルは飛んでこないようだ。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
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