上 下
46 / 100

46『しっかりものの留年生』

しおりを挟む
泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

46『しっかりものの留年生』小菊 



 なんで神楽坂高校なんか受けたんだろう。


 入学二日目にして頭の中は「?」と「!」でいっぱいだ。

 入試の日は、みんな、あたしよりも賢そうで大人びて見えたのに、入学二日目の今日はバカで子供っぽく見えてしまう。

 高校生にもなってブカブカの制服なんてありえないけど、ま、中には発育途上の人もいるだろうから、それはそれ。
 
 でもさ、みんな下手なコスプレに見えてしまうってのは、なんともねえ、みっともねえ……韻を踏んでしまった。


 二日目の今日は、まだ授業は無くて、いろいろ書類とか書くのと体育館でオリエンテーション。


 クラスの子は男子も女子も漂白したみたいに青白いかハイジみたいにホッペの赤い顔。緊張してんだろうけどバッカみたい。

 二三人ずつ二組ほどペチャクチャ喋ってるのがウザったい。

 どうやら同じ中学から来た者同士たまたま同じクラスになったんだろーけど、新学期早々って空気読んで、らしくしてろよ。

 あたしの前の増田さん、配りもの回すときには「はい」とか「どうぞ」とかくらい言ってよね。

 あたしは「ども」とか「うん」とか返してるよ。

 配り物で机の上が一杯になって、増田さんが消しゴム落っことした。「はい」って言って拾ってあげた。こんなさりげないことが互いの距離を詰めてくれるから、ちゃんと目を見て微笑んで返してあげたのよ。だのに、増田さんは目も合わさずに「あ」よ「あ」。

 担任の田中先生。

 うだつの上がらない顔は仕方ないわよ。

 でもね、一本調子のベシャリはなんとかなんないの!? 二分も聞いてると眠気を催すのよ!

 ま、配ったプリントのまんまの説明だから読んでりゃ分かるんだけどね。

 いい加減にしてほしいのがプリントの枚数。

 配り物は男子の列から。先生は、人数を読んで列ごとに置いて「後ろに回して」と言うんだけど、あたしの列が最後のせいか、残ったプリントをまんま置いてしまうのよね。

 で、毎回余ってしまう配り物を教卓のとこまで持っていかなければならない。

 何回か持って行ったとき、次は生徒手帳だって分かった。

 生徒手帳というのは身分証を兼ねていて写真を貼らなきゃいけない。で、その写真は、まだ先生の書類箱に入ったまんま。

「先生、写真を先に配ったほうがいいですよ。他にも健康調査票とか生活指導のとか、写真貼るのはまとめた方がいいです」

「え、あ、あ、そうだね(;'∀')」

 生徒から言われると怒り出す先生も居るんだけど、田中先生は聞いてくれる……のはいいんだけど、そんなアワアワしないでほしい。

 休憩時間に廊下に出てみると、クラスの枠を超えてあちこちで話の輪が出来ている。

 みんな出身中学や友だち同士で喋っている。

 場慣れしない感じが初々しいとも言えるけど、なんともイモに見えてしょうがない。

――え、アキバに寄れるんだ!―― ――そっちは新宿?―― なんてのが聞こえてくる。

 電車通学の子たちだ。

 あたしが神楽坂に決めたのはいろんな事情があるんだけど、電車通学のことは頭に無かった。

 交通費気にせず定期であちこち行けるのは魅力だ。また家に帰って、ソファーにひっくり返ってため息をつきそうだ。


 オリエンテーションでもプリントばっか。


 いちおうザッとは見るけど、読み切れないし、全部理解なんかできっこないって!

 それに、今度は枚数が足りなくなったりしてるしーヽ(`Д´)ノプンプン

 さすがに先生のとこまで取りにはいかないけど、肩のところまで手を上げて――足りませーん!――と、アピール。

 すると、田中先生は手持ちがないのか狼狽えて周囲をキョロキョロ。

 そんな先生に気づいて、誰かが持ってきてくれる気配がする。

「はい、おまちどう」

 ありがとう……声に出かけてビックリ。

「なんで、あんたが!?」
「小菊!?」

 何の因果か腐れ童貞のお人よしが雑用に使われていた。

 すぐに口はつぐんだけど、これで噂が立ってしまった。

 あたしは、しっかりものの留年生で、二年生の彼氏がいるんだとさ! 



☆彡 主な登場人物

妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
百地美子 (シグマ)     高校二年
妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
妻鹿由紀夫          父
鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子            高校三年 幼なじみの神社の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
増田さん           小菊のクラスメート

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

あーきてくっちゃ!

七々扇七緒
ライト文芸
『ゆるーく建築を知れる』📐北海道札幌市を舞台とした『ゆるふわ×建築』日常系のストーリーです🏠✨ 北海道内でも人気が高く、多くの女子が入学を夢見る『才華女子高等学校』。多くのキラキラした学科がある中、志望調査で建築学科を志望した生徒はわずか3人?! 「10人以上志望者がいないと、その年度の建築学科は廃止になる」と宣告された、うらら達3人。 2年生から本格的な学科分けがあり、それまでにメンバーをあと7人増やさなければならない。うらら達は建築の楽しさを周りにも伝えるため、身近な建築の不思議や謎を調査する活動をすることに決めたのだった――。 🌸🌸🌸 人間にとって欠かせない衣食住、その中の『住』にあたる建築物は私たちにとって身近な存在です。でも、身近すぎて気づかないこと、知らないことって多いと思いませんか? 「なんで、こんな所に穴があるんだろう?」 「なんで、ここはヘコんでるんだろう?」 「なんで、この壁とあの壁は叩くと音が違うんだろう?」 「そもそも、建物ってどうやって作ってるんだろう!?」 建築には、全ての形に意味があります。 (意味ないことをしたらお金と手間がかかるからやらない) 一件難しく感じるかもしれませんが、 この小説では女子高生たちとゆる~く建築の豆知識をお伝えしながら、すこ~しでも良いので建築に興味を持ってくれたらうれしいな~ という気持ちで、建設業で働く私がの~んびり書いていく作品です。 ごゆっくりお楽しみくださいませ✨ ☆注意☆ この作品に登場するイラストは、AIイラストを作成するアプリで作っています。 背景など作中と少し異なる表現があるかと思いますがご了承ください。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

処理中です...