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13『祖父ちゃんのフライドポテト』
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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
13『祖父ちゃんのフライドポテト』
勉強し終わった後の飯が、こんなに美味いとは思わなかった。
祖父ちゃんが特製のサンドイッチとミックスジュースを作ってくれたのだ。
食べているのは、俺と松ネエ、それにシグマ。
小菊はいない。
「こんなサンドイッチ初めてです」
「パブやってたからね、お店の看板メニューだったのよね」
「うん、店を畳んでからは初めてだけど、こんなに美味いとは思わなかった」
三人ともニコニコ笑顔だ。
「ハハ、それは三人の時間が充実していたからさ」
そう言いながら祖父ちゃんが入って来た、手には短冊に切られたジャガイモいっぱいのザルを持っている。
「フライドポテトつくるんだ!」
松ネエはピョンと立ち上がりカウンターの中に。
昨日は女っぽくなった松ネエを眩しく思ったが、あの弾み方はオチャッピーのまんまだ。
「どうだ、小松も憶えてみるか?」
「うん、このレシピ覚えたら、大学行ってもアドバンテージ高い」
セミロングをポニテにまとめ、腕まくりすると、祖父ちゃんと並んで調理にかかる。
やっぱ、松ネエはオチャッピーがデフォルトだ。
「美子(よしこ)ちゃん、これ食べてくつろいだら、一気呵成に練習問題するからね!」
「あ、はい!」
シグマも感化されて気を付けの返事をしている。
松ネエは、先月静岡の高校を卒業し、この四月から東京の大学に通う。
そのために、母親の実家である我が家に下宿することになった。
引っ越してくるのは入学の直前かと思っていたら、気の早いオチャッピーは三月早々に家にやってきたのだ。
で、俺は閃いたのだ。松ネエにシグマの勉強を見てもらおうって。
ジュッバーー!
油にジャガイモの短冊が投入される。
俺にとっては久しぶり、シグマは初めての豪快で陽気で美味しそうな音と匂いに引きつけられる。
「来てよかった……」
「そうだろ、勉強ってのは環境が大事なんだぜ」
我ながら聞いた風なことを言う。
松ネエがクスッと笑って俺の顔を見る。おたついて目が泳ぐのが情けない。
「正直、先輩は言葉の勢いで『任せておけ』って言ったんだと思ってたんです。だから、あの電話にはびっくりして」
「シグマにはメールじゃ温いと思ったんだ、直接電話で言わなきゃ断ってくると思った」
「はい、メールだったら反射的にお断りのメール返してましたね」
「だろ!」
「フフ、ゆう君、とっても楽しそうに電話してたもんね」
「ひ、人助けができるんだから嬉しくもなるよ(#'∀'#)」
「そうだよね、そういうのは江戸っ子の性(さが)だもんね」
松ネエは追及はしてこない、以前なら白旗を揚げるまで突っ込んできたんだけど、やっぱ大人になったんだろうか。
揚げたてのフライドポテトを食べながらの午後の部になった。
「すごい、練習問題全問正解よ!」
松ネエが感動した。
「そ、そですか」
シグマの反応は控えめだ。
「う~ん、美子ちゃんの数学苦手は先生が嫌いだからじゃないかな、これだけ出来るというのは素養はあるってことよ」
「あ、きっと松乃さんの教え方がいいんです!」
俺は両方だと思うぞ。
「じゃ、英語の方も見とこうか」
「あ、はい」
シグマはリュックから英語の教科書とノートを出した。
「どれどれ……」
松ネエの手が止まった。
「ん……?」
「miko momochi……あ、ごめん、ずっとよしこって呼んでた。美しい子と書いてミコって読むんだね」
「いいんです、よしこって読み方、なんだか新鮮で。普段はシグマでいいです、先輩もオメガだし」
「ゆう君のは苗字の妻鹿のもじりだけど、シグマってのは?」
「えと、おもに口がギリシャ文字のΣみたいだからです、昔から言われてるから、デフォルトなんです」
「いいの?」
「もちろん、意味なんて後付けでどんどん変わります。へたに嫌だなんて言ったら、呼ぶ方も呼ばれる方も暗いイメージになりますから」
「そっか、あたしは好きだわよミコちゃんの顔」
「俺も同感」
「う、嬉しいです(^▽^)!」
花が咲いたようにシグマの顔がほころんだ。
こんな表情をするシグマは初めてだ、一瞬シグマと小菊を取り換えられればと思ったぞ。
すると、カウンターの中でお祖父ちゃん以外の気配がした。
いつのまにか小菊が居て、揚げたてのフライドポテトをホチクリホチクリ食べていたのだった(^_^;)。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校二年
百地美子 (シグマ) 高校一年
妻鹿小菊 中三 オメガの妹
ノリスケ 高校二年 雄一の数少ない友だち
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
13『祖父ちゃんのフライドポテト』
勉強し終わった後の飯が、こんなに美味いとは思わなかった。
祖父ちゃんが特製のサンドイッチとミックスジュースを作ってくれたのだ。
食べているのは、俺と松ネエ、それにシグマ。
小菊はいない。
「こんなサンドイッチ初めてです」
「パブやってたからね、お店の看板メニューだったのよね」
「うん、店を畳んでからは初めてだけど、こんなに美味いとは思わなかった」
三人ともニコニコ笑顔だ。
「ハハ、それは三人の時間が充実していたからさ」
そう言いながら祖父ちゃんが入って来た、手には短冊に切られたジャガイモいっぱいのザルを持っている。
「フライドポテトつくるんだ!」
松ネエはピョンと立ち上がりカウンターの中に。
昨日は女っぽくなった松ネエを眩しく思ったが、あの弾み方はオチャッピーのまんまだ。
「どうだ、小松も憶えてみるか?」
「うん、このレシピ覚えたら、大学行ってもアドバンテージ高い」
セミロングをポニテにまとめ、腕まくりすると、祖父ちゃんと並んで調理にかかる。
やっぱ、松ネエはオチャッピーがデフォルトだ。
「美子(よしこ)ちゃん、これ食べてくつろいだら、一気呵成に練習問題するからね!」
「あ、はい!」
シグマも感化されて気を付けの返事をしている。
松ネエは、先月静岡の高校を卒業し、この四月から東京の大学に通う。
そのために、母親の実家である我が家に下宿することになった。
引っ越してくるのは入学の直前かと思っていたら、気の早いオチャッピーは三月早々に家にやってきたのだ。
で、俺は閃いたのだ。松ネエにシグマの勉強を見てもらおうって。
ジュッバーー!
油にジャガイモの短冊が投入される。
俺にとっては久しぶり、シグマは初めての豪快で陽気で美味しそうな音と匂いに引きつけられる。
「来てよかった……」
「そうだろ、勉強ってのは環境が大事なんだぜ」
我ながら聞いた風なことを言う。
松ネエがクスッと笑って俺の顔を見る。おたついて目が泳ぐのが情けない。
「正直、先輩は言葉の勢いで『任せておけ』って言ったんだと思ってたんです。だから、あの電話にはびっくりして」
「シグマにはメールじゃ温いと思ったんだ、直接電話で言わなきゃ断ってくると思った」
「はい、メールだったら反射的にお断りのメール返してましたね」
「だろ!」
「フフ、ゆう君、とっても楽しそうに電話してたもんね」
「ひ、人助けができるんだから嬉しくもなるよ(#'∀'#)」
「そうだよね、そういうのは江戸っ子の性(さが)だもんね」
松ネエは追及はしてこない、以前なら白旗を揚げるまで突っ込んできたんだけど、やっぱ大人になったんだろうか。
揚げたてのフライドポテトを食べながらの午後の部になった。
「すごい、練習問題全問正解よ!」
松ネエが感動した。
「そ、そですか」
シグマの反応は控えめだ。
「う~ん、美子ちゃんの数学苦手は先生が嫌いだからじゃないかな、これだけ出来るというのは素養はあるってことよ」
「あ、きっと松乃さんの教え方がいいんです!」
俺は両方だと思うぞ。
「じゃ、英語の方も見とこうか」
「あ、はい」
シグマはリュックから英語の教科書とノートを出した。
「どれどれ……」
松ネエの手が止まった。
「ん……?」
「miko momochi……あ、ごめん、ずっとよしこって呼んでた。美しい子と書いてミコって読むんだね」
「いいんです、よしこって読み方、なんだか新鮮で。普段はシグマでいいです、先輩もオメガだし」
「ゆう君のは苗字の妻鹿のもじりだけど、シグマってのは?」
「えと、おもに口がギリシャ文字のΣみたいだからです、昔から言われてるから、デフォルトなんです」
「いいの?」
「もちろん、意味なんて後付けでどんどん変わります。へたに嫌だなんて言ったら、呼ぶ方も呼ばれる方も暗いイメージになりますから」
「そっか、あたしは好きだわよミコちゃんの顔」
「俺も同感」
「う、嬉しいです(^▽^)!」
花が咲いたようにシグマの顔がほころんだ。
こんな表情をするシグマは初めてだ、一瞬シグマと小菊を取り換えられればと思ったぞ。
すると、カウンターの中でお祖父ちゃん以外の気配がした。
いつのまにか小菊が居て、揚げたてのフライドポテトをホチクリホチクリ食べていたのだった(^_^;)。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校二年
百地美子 (シグマ) 高校一年
妻鹿小菊 中三 オメガの妹
ノリスケ 高校二年 雄一の数少ない友だち
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