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3『ノリスケの復活』

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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

3『ノリスケの復活』




 死んだんじゃねーのかよっ!?

 ボス!

 信号でいっしょになったノリスケにケリを入れる。

「イッテーなあ! 病み上がりにする挨拶かよっ!」

 バス!

 そう返しながらノリスケもケリを返す、これでコミニケーションのスイッチが入る。

「蹴んなよ、インフルエンザが伝染んじゃねーか!」
「伝染んねーよ! だいいちインフルエンザじゃねーし!」
「バカが伝染る~!」
「ウッセー、だれがバカだ!」

 バス! ボス!

 ふたたび蹴りあいになったところで信号は青だ。

「食堂で女子とスペメン食ってたろ?」

「ノワッ!」

 歩道の段差でつまづいてタタラを踏む。

「なに動揺してんだよ」
「してねー、つまづいただけだっつーの!」
「で、ラブラブになった女子ってだれなんだあ(。¬д¬。)?」
「んな目で見んな!」
「堂本にいたぶられてるとこを、おめえがレスキューしたって話じゃねーか」
「ゲ!? なんで知ってんだよ?」
「唯我独尊のオメガがツーショットで昼飯、それもスペメンなんて親密さが噂にならねーわけねーじゃねーか。ほらよ」

「ゲーーーー!!」

 ノリスケが示したスマホには、俺とシグマが仲良くスペメン食ってるところが映っていた。

 俺のモットーは――世間様とは付かず離れずのモブ人間――なんだ、こんな写真撮られることは、だんぜん俺らしくない。

「らしくねーことするから撮られるんじゃねーか。ま、親友の俺としては、おめーのヘタレモブ根性は心配のタネだったから嬉しいんだけど、女子の方は向かいの奴が目隠しになって顔がよく分かんねーからさ」

「ノリスケがいたら、こういう展開にはなってねーよ」

 撮られたことで鈍い後悔が湧いてきて、つい子どもみたいなことを口走ってしまう。

「あ、ちょっと、そういうのはキモイんですけどぉ……」

 女みたいに鞄を胸に抱えて引きやがる。

「おめーの方がキモイわ!」


 そのとき視線を感じた。


 一つ向こうの十字路にシグマが現れたのだ。

 なんてこった、この十字路から先は通学路が重なっていたんだ。

 二年間、いや、シグマは一年生だから一年間同じ道歩いてて見覚えが無かったんだ(;'∀')。

 ま、モブの注意力ってこんなもんだけど、で、なんで動揺してんだ、俺!?

「え……ひょっとして、あの子か!?」
「ちょ、声でかい!」

 ノリスケの声が災いしたんだろ、一瞬目が合ったシグマは怒ったような顔になり、プイとそっぽ向いて、学校への坂道をスタスタ上って行った。

「あ………」

「身長150、上から70、51、77……ってとこ、小柄な小悪魔風、可愛いんだけど、お口が、なんの不足か尖がっちゃって、ちょっち残念賞……ま、朝に弱いタイプかもしんねーな……ゲフッ!」

 俺は本気でケリを入れていたのだった。
 
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