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093『玉代と松陰を語る』
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漆黒のブリュンヒルデQ
093『玉代と松陰を語る』
お~れが居たんじゃお嫁にゃいけぬ 分かっちゃいるんだ妹よ~♪
今日もぉ~涙の 今日も~涙の 日が落ちる 日が~落ち~る♪
『あなた、同じフレーズばっかり』
『え、あ、ほんとだ(^_^;)』
『『アハハハ』』
「「フフフフフ(* ´艸`)」」
「二人ともほんなこて楽しそうやなあ(^^)」
「ほんとだね」
孫と姪(設定だけど)としても、階下のリビングで祖父母が楽しそうにしていると嬉しい。
ついつい、テスト勉強の手も停まってしまう。
「しかし、なんでお祖父ちゃん『男はつらいよ』ばっかり歌ってるんだろうね?」
「え、ひょっとして自覚なかとか?」
「え、わたし!?」
「そうじゃ、ひるで、昨日から何度も寅次郎って呟いとっ」
「あ……ああ……」
世田谷城址公園で出会って、ちょっと気になっている。
吉田寅次郎……吉田松陰。
わたしにとっては隣のテリトリーになる、吉田神社の御祭神だ。
わたしは、迷える霊や妖には、名前を付けて本来の場所に戻してやるんだけども、松陰は違う。
迷える霊にゆっくり時間をかけて思い出させているんだ。
思い出すまでは、自分の松陰神社に通わせて、いろいろ教えているらしい。
松本という男と、三遊亭円突という落語家の警防団に出会ったが、二人とも充実した目をしていた。
気になったわたしは、何度も――吉田寅次郎――と呟いていたらしい。
「でも、なんでそれが『男はつらいよ』になるんだ?」
「だって、主役ん寅さんな車寅次郎じゃらせんか」
「え……あ、トラさんも下の名前は寅次郎だったか!?」
「そうじゃ、お祖おやっどんは、寅さんの映画好いちょっでね、ネトフリでよう観ちょっじゃ」
「松陰の方の寅次郎は、鹿児島でも有名とか人気だったりするの?」
「ああ、吉之助どんたちは好いちょったみて。明治維新ん元になった人物じゃっで」
「そうか、でも、安政の大獄で処刑されるんだよね」
「うん、黒船がやってきたとき、アメリカに密航しようとして失敗したんじゃ」
「あの時、ペリーは日本と条約結ぶことが第一で、密航者をかくまって連れていってくれるはずないんだけどね。日本史で習ったよ。松陰ほどの学者なら分からないはずはないんだけど」
「そうやなあ、喋るったぁ片言んオランダ語で、言葉も通じん」
「なんだか、その辺が、抜けてるようで……戦略的な観点からみると……」
「みると?」
「その……一種のバカに見える」
「あはは、そうじゃ、あん時ん松陰はバカやった。小船をおっとって黒船に漕ぎよせっとどん、途中で露ベソが壊れて櫂が使えんくなっせぇ、ふんどしで応急修理してん。松陰は黒船に上がったときはフルチンやった!」
「プ、ほんとか( ´艸`)!?」
「ああ、こんエピソードは西郷どんたち、かごんまん者はわっぜ好いちょっ」
「間抜けにしか思えないんだけど(^_^;)」
「ひっではブァルキリアん姫騎士じゃっでね、物事を戦略的、戦術的にしか見ちょらんとじゃ。人間には、そげん可愛らしさも大事じゃち思う」
「そうか……で、その『ひっで』というのは何よ?」
「ああ、ごめんなせ。薩摩弁でひるでは発音しにくうて『ひっで』になってしまうんじゃ」
「ん……なんかひっでぇ」
「「アハハハハハ」」
結局のところ、ふたりで馬鹿笑いしておしまいになりそうになって、下からお祖母ちゃんの呼ぶ声がした。
『ひるでぇ、お友だちがいらっしゃったわよぉ!』
え、ともだち?
わたしはブァルキリアの姫騎士、百戦錬磨の戦乙女、我が家に近づく者は子ネコ一匹でも事前に察知できる。
気が付かなかったのは、その『ともだち』が、相当の怪しの者か、玉代とのバカ話に興じすぎていたか……「はーい」と返事して下りる階段の窓から見える向かいの窓、ねね子が興味津々の顔でこっちを見ていた。
☆彡 主な登場人物
武笠ひるで(高校二年生) こっちの世界のブリュンヒルデ
福田芳子(高校一年生) ひるでの後輩 生徒会役員
福田るり子 福田芳子の妹
小栗結衣(高校二年生) ひるでの同輩 生徒会長
猫田ねね子 怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
門脇 啓介 引きこもりの幼なじみ
おきながさん 気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
スクネ老人 武内宿禰 気長足姫のじい
玉代(玉依姫) ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
お祖父ちゃん
お祖母ちゃん 武笠民子
レイア(ニンフ) ブリュンヒルデの侍女
主神オーディン ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
093『玉代と松陰を語る』
お~れが居たんじゃお嫁にゃいけぬ 分かっちゃいるんだ妹よ~♪
今日もぉ~涙の 今日も~涙の 日が落ちる 日が~落ち~る♪
『あなた、同じフレーズばっかり』
『え、あ、ほんとだ(^_^;)』
『『アハハハ』』
「「フフフフフ(* ´艸`)」」
「二人ともほんなこて楽しそうやなあ(^^)」
「ほんとだね」
孫と姪(設定だけど)としても、階下のリビングで祖父母が楽しそうにしていると嬉しい。
ついつい、テスト勉強の手も停まってしまう。
「しかし、なんでお祖父ちゃん『男はつらいよ』ばっかり歌ってるんだろうね?」
「え、ひょっとして自覚なかとか?」
「え、わたし!?」
「そうじゃ、ひるで、昨日から何度も寅次郎って呟いとっ」
「あ……ああ……」
世田谷城址公園で出会って、ちょっと気になっている。
吉田寅次郎……吉田松陰。
わたしにとっては隣のテリトリーになる、吉田神社の御祭神だ。
わたしは、迷える霊や妖には、名前を付けて本来の場所に戻してやるんだけども、松陰は違う。
迷える霊にゆっくり時間をかけて思い出させているんだ。
思い出すまでは、自分の松陰神社に通わせて、いろいろ教えているらしい。
松本という男と、三遊亭円突という落語家の警防団に出会ったが、二人とも充実した目をしていた。
気になったわたしは、何度も――吉田寅次郎――と呟いていたらしい。
「でも、なんでそれが『男はつらいよ』になるんだ?」
「だって、主役ん寅さんな車寅次郎じゃらせんか」
「え……あ、トラさんも下の名前は寅次郎だったか!?」
「そうじゃ、お祖おやっどんは、寅さんの映画好いちょっでね、ネトフリでよう観ちょっじゃ」
「松陰の方の寅次郎は、鹿児島でも有名とか人気だったりするの?」
「ああ、吉之助どんたちは好いちょったみて。明治維新ん元になった人物じゃっで」
「そうか、でも、安政の大獄で処刑されるんだよね」
「うん、黒船がやってきたとき、アメリカに密航しようとして失敗したんじゃ」
「あの時、ペリーは日本と条約結ぶことが第一で、密航者をかくまって連れていってくれるはずないんだけどね。日本史で習ったよ。松陰ほどの学者なら分からないはずはないんだけど」
「そうやなあ、喋るったぁ片言んオランダ語で、言葉も通じん」
「なんだか、その辺が、抜けてるようで……戦略的な観点からみると……」
「みると?」
「その……一種のバカに見える」
「あはは、そうじゃ、あん時ん松陰はバカやった。小船をおっとって黒船に漕ぎよせっとどん、途中で露ベソが壊れて櫂が使えんくなっせぇ、ふんどしで応急修理してん。松陰は黒船に上がったときはフルチンやった!」
「プ、ほんとか( ´艸`)!?」
「ああ、こんエピソードは西郷どんたち、かごんまん者はわっぜ好いちょっ」
「間抜けにしか思えないんだけど(^_^;)」
「ひっではブァルキリアん姫騎士じゃっでね、物事を戦略的、戦術的にしか見ちょらんとじゃ。人間には、そげん可愛らしさも大事じゃち思う」
「そうか……で、その『ひっで』というのは何よ?」
「ああ、ごめんなせ。薩摩弁でひるでは発音しにくうて『ひっで』になってしまうんじゃ」
「ん……なんかひっでぇ」
「「アハハハハハ」」
結局のところ、ふたりで馬鹿笑いしておしまいになりそうになって、下からお祖母ちゃんの呼ぶ声がした。
『ひるでぇ、お友だちがいらっしゃったわよぉ!』
え、ともだち?
わたしはブァルキリアの姫騎士、百戦錬磨の戦乙女、我が家に近づく者は子ネコ一匹でも事前に察知できる。
気が付かなかったのは、その『ともだち』が、相当の怪しの者か、玉代とのバカ話に興じすぎていたか……「はーい」と返事して下りる階段の窓から見える向かいの窓、ねね子が興味津々の顔でこっちを見ていた。
☆彡 主な登場人物
武笠ひるで(高校二年生) こっちの世界のブリュンヒルデ
福田芳子(高校一年生) ひるでの後輩 生徒会役員
福田るり子 福田芳子の妹
小栗結衣(高校二年生) ひるでの同輩 生徒会長
猫田ねね子 怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
門脇 啓介 引きこもりの幼なじみ
おきながさん 気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
スクネ老人 武内宿禰 気長足姫のじい
玉代(玉依姫) ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
お祖父ちゃん
お祖母ちゃん 武笠民子
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