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89『再び草原の国』
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くノ一その一今のうち
89『再び草原の国』そのいち
散らばった破片に見覚えがある。
以前、米軍の輸送機で草原の国に潜入した時に戦った跡だ。
破片の向こうに城壁が聳えている。
大きい!
以前来た時は、城外で戦っただけで、中に入ることはしなかった。
あの時は月も半ば雲間に隠れ、城壁は篝のある正面がぼんやり浮かぶ程度で、その果てまでは見通せなかった。
作戦の目的は王子の奪還であり、やっと奪い還した王子は猿飛佐助が化けていたものだった。正体を現した佐助と城外で戦った、その時の跡が片づけられることも無く、そのままになっている(32『王子を逃がす』33『猿飛佐助の陰謀』)
あの戦いは、おそらくは時間稼ぎ。そして、鈴木豊臣家への警告。
あるいはブラフ。
すでに敵は高原の国への工作には失敗している。
B国の同時多発の爆破には成功しているけど、機甲旅団は壊滅させた。
テストの点数で言えば30点。赤点のオンパレードで追試験。
しかし、城壁の外から伺う限り、このまま赤点を認める風もなく、来たらば来たれと待ち受けている様子。
ようし、赤点を確定させてやる!
下忍には過ぎた判断かもしれないけれど、高原の国への攻撃を断念させるという命令は生きている。
取りあえず潜入、懐の鉤爪に手を伸ばす。
『空から行きましょう!』
魔石を包んでいるえいちゃんが力強く提案する。
「空から?」
『はい、ちょっと自信がつきました。空からの偵察にも慣れました、機甲旅団も空から攻撃できましたし、ソノッチ一人ぐらいなら城内に運べると思います!』
「そうか、じゃあ……」
すぐにその場から飛び立つようなことはしない。
姿勢を低くし、岩や灌木の陰を拾いながら城の西側に周る。とっくに太陽は西に傾いているので、太陽を背に侵入するには西側に出なければならないのだ。
長い……皇居は東西方向に、永田町―桜田門―日比谷と地下鉄で二駅分、1.5キロほどだけど、この草原の城は優に2キロ四方、それ以上はありそうだ。
ようやく南東の櫓が見えて城の西側。
300mほど走ると、城壁の向こう側にさんざめきや車の音、陽気な呼び込みの声やらがしはじめて……どうやら西側は商業地域のようだ。
よし!
えいちゃんを西風に載せ、わたしは、軽く地面を蹴った。
グーーン
太陽を背に、無事に西の城壁を超えた……
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
ミッヒ(ミヒャエル) ドイツのランツクネヒト(傭兵)
アデリヤ 高原の国第一王女
サマル B国皇太子 アデリヤの従兄
89『再び草原の国』そのいち
散らばった破片に見覚えがある。
以前、米軍の輸送機で草原の国に潜入した時に戦った跡だ。
破片の向こうに城壁が聳えている。
大きい!
以前来た時は、城外で戦っただけで、中に入ることはしなかった。
あの時は月も半ば雲間に隠れ、城壁は篝のある正面がぼんやり浮かぶ程度で、その果てまでは見通せなかった。
作戦の目的は王子の奪還であり、やっと奪い還した王子は猿飛佐助が化けていたものだった。正体を現した佐助と城外で戦った、その時の跡が片づけられることも無く、そのままになっている(32『王子を逃がす』33『猿飛佐助の陰謀』)
あの戦いは、おそらくは時間稼ぎ。そして、鈴木豊臣家への警告。
あるいはブラフ。
すでに敵は高原の国への工作には失敗している。
B国の同時多発の爆破には成功しているけど、機甲旅団は壊滅させた。
テストの点数で言えば30点。赤点のオンパレードで追試験。
しかし、城壁の外から伺う限り、このまま赤点を認める風もなく、来たらば来たれと待ち受けている様子。
ようし、赤点を確定させてやる!
下忍には過ぎた判断かもしれないけれど、高原の国への攻撃を断念させるという命令は生きている。
取りあえず潜入、懐の鉤爪に手を伸ばす。
『空から行きましょう!』
魔石を包んでいるえいちゃんが力強く提案する。
「空から?」
『はい、ちょっと自信がつきました。空からの偵察にも慣れました、機甲旅団も空から攻撃できましたし、ソノッチ一人ぐらいなら城内に運べると思います!』
「そうか、じゃあ……」
すぐにその場から飛び立つようなことはしない。
姿勢を低くし、岩や灌木の陰を拾いながら城の西側に周る。とっくに太陽は西に傾いているので、太陽を背に侵入するには西側に出なければならないのだ。
長い……皇居は東西方向に、永田町―桜田門―日比谷と地下鉄で二駅分、1.5キロほどだけど、この草原の城は優に2キロ四方、それ以上はありそうだ。
ようやく南東の櫓が見えて城の西側。
300mほど走ると、城壁の向こう側にさんざめきや車の音、陽気な呼び込みの声やらがしはじめて……どうやら西側は商業地域のようだ。
よし!
えいちゃんを西風に載せ、わたしは、軽く地面を蹴った。
グーーン
太陽を背に、無事に西の城壁を超えた……
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
ミッヒ(ミヒャエル) ドイツのランツクネヒト(傭兵)
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