くノ一その一今のうち

武者走走九郎or大橋むつお

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73『謁見』

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くノ一その一今のうち

73『謁見』そのいち 




「今から国王に会ってもらう」


 車寄せでバスを降りると、トヨタを下りた王女が待ち構えて告げる。

 遠足で目的地に着いて、先生が、取りあえずの注意をしている感じでおかしい。

「謁見の形式なので、身なりには気を付けてもらう。特段に着替える必要はないが、ネクタイはまっすぐ、ボタンは上まで止めて、上着のボタンも締めて欲しい。基本的に、聞かれたことのみ応えて、発問は控えてもらう。その後は王妃と会食。二時間ほどはかかる。途中トイレにはいけないから、10分間のトイレ休憩にする」

 ほんとうに引率の先生だ(^_^;)

 トイレ休憩が終わって、いよいよ謁見。帝国ホテルの結婚式場か(行ったことないけど)と思うくらいに高級感漂う広さと豪華さ。

 二段高くなった、その上にクッションで脇と背中をサポートされた玉座に王様が座っている。脇に控えているのは、おそらくはドクターだろう。

「父上、日本より『バトル オブ ハイランド』の撮影隊の方々が来られましたので、お連れいたしました」

「うん、ごくろう。みなさん、はるばる日本からお越しいただき、まことにありがとう。国王のアデノシン・サンリンサンです。高原の国を代表して歓迎いたします」

 王女の目配せを受けて、まず徳川社長が挨拶し、みながそれに倣ってまあやの番になる。

「鈴木まあやです、縁あって、今回主演を務めさせていただきます」

「鈴木とは……」

「あ、はい、日本で一番ありふれた苗字です(^_^;)」

「……苗字はそうでしょうが、身にまとわれた雰囲気は尋常なものではない。まあやさん、今少し顔を上げて目を合わせてはくださらんか」

「は、はひ(#'∀'#)」

 アセアセで顔を上げたまあやに王様は目を丸くされた。

「おお、似ている。若いころの母にそっくりだ、今少し近くでお顔を見せて下さらんか」

「は、はい……」

 三歩ほど前に出ると、控えのドクターが――そこまで――という目配せをして、まあやは足を止めた。

「アデリア」

「はい」

「まあやさんの横に並んでみなさい」

「はい」

「……ここには、撮影隊の方々の他にはドクターのホイヘンスしかおらん。ホイヘンスはおまえの侍医でもある、サングラスをとりなさい」

「はい……」

 ゆっくりとサングラスを外す王女。

「わたしの顔だけを見てどうする、みなさんにも顔を見ていただきなさい」

「そ、それは……」

「王命である」

「はい!」

 わ!?

 おずおずと振り向いた顔に息を呑んだ!



 め、めちゃめちゃ可愛い!!

 

☆彡 主な登場人物

風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
アデリヤ         高原の国第一王女

 
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