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70『まあやはマッタリ日常系が好きなんだけど』
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くノ一その一今のうち
70『まあやはマッタリ日常系が好きなんだけど』そのいち
日本人をバカにしてんのか!?
十日ぶりの撮影所、台本を読んでムカついた。
歴史活劇ドラマ『吠えよ剣』は、甲州の回を終わって江戸に戻ってきている。
幕府も遅まきながらも、勝海舟を実質的な総裁にして陸軍を創設した。
その幕府陸軍の教官として多数の教官がフランスから送られてくるんだけども、その一人がミッヒ。
ミッヒはジョルジュっていうフランス軍少尉の役。
「なんで、ドイツ人がフランスの軍人やってんのよ!?」
「フランスとドイツは地続きなんだぜ、国境付近は歴史的にもドイツになったりフランスになったりってところがあって、不思議じゃないよ」
「だって、ジョルジュって完ぺきフランス人の名前でしょうが」
「ドイツ語読みならゲオルグだよ」
「ああ、そう」
ドン
自販機のカフェオレのスイッチを乱暴に叩く。
ゴロン、ピピピピピピ……ピ……パンパカパーン!
「あ、当たった!」
自販機のルーレットが当たりになって、二つ目のカフェオレをゲット。
「あら、二人とも仲良しになったのね(^▽^)」
まあやが次の撮影に備えて移動してきた。
「あ、ごめん、遅くなって。て、こいつとは仲良しじゃないから」
「そーお、先週は、仕事以外口もきいてなかったのに」
「え、あ、そうだっけ?」
「おはようございます、まあやさん」
「ボンジュール」
「あ、こいつドイツ人だし」
「役はフランス人でしょ、雰囲気よ雰囲気。三十分後、衣装合わせだから、よろしくね」
「うん、これ飲んだら行く」
一人で次のスタジオに向かうまあや。
「ミッヒ、あんた、わたしとは口きかなかったの?」
「あ、だって、社長や嫁持ちさんが化けたソノッチだっただろう」
「え、分かってたの?」
二人とも細胞レベルの変身名人だから、めったにバレることはないんだけど。
「そういうのを見抜くのが、僕の特技であったりするわけだよ」
こいつの、ランツクネヒトとしての力は奥が深いようだ……。
ドラマは、幕府陸軍の教官としてやってきたジョルジュ少尉が千葉道場に通って北辰一刀流を勉強するという設定になっている。
衣装合わせの後、道場での稽古風景。
10人5組で、打ち合い稽古。その後は門下生みんなでご飯をいただくシーン。
「日本のごはん、どれも美味しいけど、これは慣れませ~~ん」
と納豆をかき混ぜるジョルジュ。
「あら、こないだはくさやの干物に打ち勝ったのに?」
「ジョルジュ、納豆を食べんと北辰一刀流の精神は理解できんぜよ」
龍馬に意地悪を言われるジョルジュ。
「それなら、ムッシュ龍馬もエスカルゴを食べるべきだぞ(,,>∀<,,)!」
「でんでん虫は食いもんじゃなかろうがあ」
「納豆も食いもんじゃないよ、ムッシュ!」
「なにを言う、納豆は大豆だ、仏蘭西でも納豆はたべるじゃろうがあ!」
「じゃ、今度はエスカルゴの納豆和えを作ります」
「「それは勘弁!」」
さな子の提案に日仏の剣術使いが音を上げて、一発でOKが出る。
「来週分、一部差し換えになります」
監督が、新しい台本の束を置いた。
「あらら、江戸城の回が最初にくるのね」
まあやが、ちょっと残念そう。
しばらくは千葉道場のシーンが続いて、いまみたいな『千葉道場の日常』的なやり取りが続くことになっていたから。
まあやは、ドラマでもリアルでも、みんなで仲良くマッタリというのが好きなんだ。
わたしも、台本を繰ってみて気が付いた。
ミッヒとわたしの出番が、しばらく無い。
ひょっとして、また裏の仕事……それも、ミッヒといっしょだったりするぅ(;'∀')?
気配に顔を上げると、脚本の三村紘一がニヤニヤ笑ってる。
言うまでもなく、三村紘一は徳川物産の課長代理服部半三の仮の姿で、徳川忍者団のフィクサーなんだ。
「あら、わたしの出番も……」
まあやもビックリした。
なんか、いやな予感しかしないよ(-_-;)。
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
ミッヒ(ミヒャエル) ドイツのランツクネヒト(傭兵)
70『まあやはマッタリ日常系が好きなんだけど』そのいち
日本人をバカにしてんのか!?
十日ぶりの撮影所、台本を読んでムカついた。
歴史活劇ドラマ『吠えよ剣』は、甲州の回を終わって江戸に戻ってきている。
幕府も遅まきながらも、勝海舟を実質的な総裁にして陸軍を創設した。
その幕府陸軍の教官として多数の教官がフランスから送られてくるんだけども、その一人がミッヒ。
ミッヒはジョルジュっていうフランス軍少尉の役。
「なんで、ドイツ人がフランスの軍人やってんのよ!?」
「フランスとドイツは地続きなんだぜ、国境付近は歴史的にもドイツになったりフランスになったりってところがあって、不思議じゃないよ」
「だって、ジョルジュって完ぺきフランス人の名前でしょうが」
「ドイツ語読みならゲオルグだよ」
「ああ、そう」
ドン
自販機のカフェオレのスイッチを乱暴に叩く。
ゴロン、ピピピピピピ……ピ……パンパカパーン!
「あ、当たった!」
自販機のルーレットが当たりになって、二つ目のカフェオレをゲット。
「あら、二人とも仲良しになったのね(^▽^)」
まあやが次の撮影に備えて移動してきた。
「あ、ごめん、遅くなって。て、こいつとは仲良しじゃないから」
「そーお、先週は、仕事以外口もきいてなかったのに」
「え、あ、そうだっけ?」
「おはようございます、まあやさん」
「ボンジュール」
「あ、こいつドイツ人だし」
「役はフランス人でしょ、雰囲気よ雰囲気。三十分後、衣装合わせだから、よろしくね」
「うん、これ飲んだら行く」
一人で次のスタジオに向かうまあや。
「ミッヒ、あんた、わたしとは口きかなかったの?」
「あ、だって、社長や嫁持ちさんが化けたソノッチだっただろう」
「え、分かってたの?」
二人とも細胞レベルの変身名人だから、めったにバレることはないんだけど。
「そういうのを見抜くのが、僕の特技であったりするわけだよ」
こいつの、ランツクネヒトとしての力は奥が深いようだ……。
ドラマは、幕府陸軍の教官としてやってきたジョルジュ少尉が千葉道場に通って北辰一刀流を勉強するという設定になっている。
衣装合わせの後、道場での稽古風景。
10人5組で、打ち合い稽古。その後は門下生みんなでご飯をいただくシーン。
「日本のごはん、どれも美味しいけど、これは慣れませ~~ん」
と納豆をかき混ぜるジョルジュ。
「あら、こないだはくさやの干物に打ち勝ったのに?」
「ジョルジュ、納豆を食べんと北辰一刀流の精神は理解できんぜよ」
龍馬に意地悪を言われるジョルジュ。
「それなら、ムッシュ龍馬もエスカルゴを食べるべきだぞ(,,>∀<,,)!」
「でんでん虫は食いもんじゃなかろうがあ」
「納豆も食いもんじゃないよ、ムッシュ!」
「なにを言う、納豆は大豆だ、仏蘭西でも納豆はたべるじゃろうがあ!」
「じゃ、今度はエスカルゴの納豆和えを作ります」
「「それは勘弁!」」
さな子の提案に日仏の剣術使いが音を上げて、一発でOKが出る。
「来週分、一部差し換えになります」
監督が、新しい台本の束を置いた。
「あらら、江戸城の回が最初にくるのね」
まあやが、ちょっと残念そう。
しばらくは千葉道場のシーンが続いて、いまみたいな『千葉道場の日常』的なやり取りが続くことになっていたから。
まあやは、ドラマでもリアルでも、みんなで仲良くマッタリというのが好きなんだ。
わたしも、台本を繰ってみて気が付いた。
ミッヒとわたしの出番が、しばらく無い。
ひょっとして、また裏の仕事……それも、ミッヒといっしょだったりするぅ(;'∀')?
気配に顔を上げると、脚本の三村紘一がニヤニヤ笑ってる。
言うまでもなく、三村紘一は徳川物産の課長代理服部半三の仮の姿で、徳川忍者団のフィクサーなんだ。
「あら、わたしの出番も……」
まあやもビックリした。
なんか、いやな予感しかしないよ(-_-;)。
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
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