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63『撮影所の大浴場』
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くノ一その一今のうち
63『撮影所の大浴場』そのいち
グヌヌ……
思わず唸ってしまった。
撮影所の自室に戻って、もらったマップを開いてみると、そこに地下通路の出入り口がいっぱい書かれていた。
つまり、どこから侵入しようとお見通しということだ。
『今日は、もうお風呂に入ってお休みください。晩ご飯はお部屋の方にお持ちします』
えいちゃんの言葉に甘えてお風呂をいただく。
部屋にもお風呂はあるんだけど、あえて、大浴場にいく。
大部屋俳優用の大浴場は、けして豪華ではなく、昔のお風呂屋さんという感じ。
大浴槽にはジャグジーも付いていて、凝った背中を当てるとめちゃくちゃ気持ちがいい。
『ジャグジーなら、お部屋のお風呂にも付いてるんですよ』
最初は『いっしょに入るなんてとんでもないです(;'∀')!』と言っていたのを説得して、わたしの横に浸かってもらっている。えいちゃんは、付き人というよりは、もう同志だ。
二次元のペラペラなので、そのままわたしの横に浸かると紙のポスターを横から見たようなので、ちゃんと横向きの二次元になってくれる。
「でも、正面の鏡には、ちゃんと前向きに映ってるね」
『切り替えてるんです』
「わたしの視線に合わせて?」
『はい、カメラに合わせるのは役者の基本です』
「すごい!」
ブンブンブン
『あ、ブンブン首振るの止めてもらっていいですか、ちょっと追随するの大変なんで(^_^;)』
「あ、ごめん。忍者なんで、つい試したくなって(^_^;)」
『お風呂の水は表の長瀬川から引いてるんですよ』
「そうなんだ」
『長瀬川は昔々は大和川だったんです。江戸時代に今の大和川に付け替えられて、その名残が長瀬川なんです。だから、源流は大和の奥の方で、とってもゆかしい水なんですよ』
「じゃあ、このペンキ絵?」
『はい、そのころの江戸時代の景色を描いてあります』
「きれいに描けてるわねえ……」
『美術さんが描いたんです。反対側は西の景色で、古き良き大阪が偲ばれるんですよ』
なるほど、単に東洋一の撮影所であるだけでは無くて、大阪の地理や文化を偲ばれるように出来ているんだ。
『大部屋の役者さんは日本各地や外国から来てる人も居ますからね、お風呂に浸かりながら大阪のあれこれを勉強できるようになってます』
「あ、なんか光ってるところがある」
『大阪城と空堀商店街ですね。見ている人の興味でクローズアップされる仕掛けになってます』
「どれどれ……」
ちょっと目を凝らすと、今日、半日かけて走り回ったところの映像や資料が浮かび上がってくる。
でも、まあ観光案内程度のことで、むろん地下通路のことなどは出てこない。
おや、あれは……?
長瀬川沿いを北に行ったところが仄かに光っている。
『関心のある場所に関連したところが光る仕掛けなんです……たぶん、小阪のあたりですね。長瀬の前は小阪に撮影所があったんですよ』
「そうなの?」
『はい、でも微妙にズレてるかなあ……』
と言うので、お風呂を上がってから所長の杵間さんに聞いてみた。
「ああ、あれは、撮影所の資料に直結してるからねえ、きっとロケハンしたときの……ああ、ここは『木村長門守』ってのを撮った時の資料だ。木村重成って豊臣方の若い大将なんだけどね、討ち取られて首実検したら、兜に香が焚き染めてあったんだ。討ち死にを覚悟して、臭い消しにしたんだね。なんせ夏の陣は暑い盛りだったからねえ」
「討ち死にした場所ですか?」
「いいや、討ち死にしたのは若江っていって、もうちょっと東。ここは、大坂城から煙が上がるのを見た重成が、馬の背中に立って秀頼に別れを告げた場所だよ『馬立』って言ったと思う」
「そうですか……」
「お、なにか閃いたって顔だね」
「ちょっとだけですけど」
「うん、明日の朝、またホームズの事務所を覗いて見るといいよ。なにかヒントがあるだろ」
よし、果報は寝て待て!
ベッドに入ったら五秒で寝てしまった。
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
63『撮影所の大浴場』そのいち
グヌヌ……
思わず唸ってしまった。
撮影所の自室に戻って、もらったマップを開いてみると、そこに地下通路の出入り口がいっぱい書かれていた。
つまり、どこから侵入しようとお見通しということだ。
『今日は、もうお風呂に入ってお休みください。晩ご飯はお部屋の方にお持ちします』
えいちゃんの言葉に甘えてお風呂をいただく。
部屋にもお風呂はあるんだけど、あえて、大浴場にいく。
大部屋俳優用の大浴場は、けして豪華ではなく、昔のお風呂屋さんという感じ。
大浴槽にはジャグジーも付いていて、凝った背中を当てるとめちゃくちゃ気持ちがいい。
『ジャグジーなら、お部屋のお風呂にも付いてるんですよ』
最初は『いっしょに入るなんてとんでもないです(;'∀')!』と言っていたのを説得して、わたしの横に浸かってもらっている。えいちゃんは、付き人というよりは、もう同志だ。
二次元のペラペラなので、そのままわたしの横に浸かると紙のポスターを横から見たようなので、ちゃんと横向きの二次元になってくれる。
「でも、正面の鏡には、ちゃんと前向きに映ってるね」
『切り替えてるんです』
「わたしの視線に合わせて?」
『はい、カメラに合わせるのは役者の基本です』
「すごい!」
ブンブンブン
『あ、ブンブン首振るの止めてもらっていいですか、ちょっと追随するの大変なんで(^_^;)』
「あ、ごめん。忍者なんで、つい試したくなって(^_^;)」
『お風呂の水は表の長瀬川から引いてるんですよ』
「そうなんだ」
『長瀬川は昔々は大和川だったんです。江戸時代に今の大和川に付け替えられて、その名残が長瀬川なんです。だから、源流は大和の奥の方で、とってもゆかしい水なんですよ』
「じゃあ、このペンキ絵?」
『はい、そのころの江戸時代の景色を描いてあります』
「きれいに描けてるわねえ……」
『美術さんが描いたんです。反対側は西の景色で、古き良き大阪が偲ばれるんですよ』
なるほど、単に東洋一の撮影所であるだけでは無くて、大阪の地理や文化を偲ばれるように出来ているんだ。
『大部屋の役者さんは日本各地や外国から来てる人も居ますからね、お風呂に浸かりながら大阪のあれこれを勉強できるようになってます』
「あ、なんか光ってるところがある」
『大阪城と空堀商店街ですね。見ている人の興味でクローズアップされる仕掛けになってます』
「どれどれ……」
ちょっと目を凝らすと、今日、半日かけて走り回ったところの映像や資料が浮かび上がってくる。
でも、まあ観光案内程度のことで、むろん地下通路のことなどは出てこない。
おや、あれは……?
長瀬川沿いを北に行ったところが仄かに光っている。
『関心のある場所に関連したところが光る仕掛けなんです……たぶん、小阪のあたりですね。長瀬の前は小阪に撮影所があったんですよ』
「そうなの?」
『はい、でも微妙にズレてるかなあ……』
と言うので、お風呂を上がってから所長の杵間さんに聞いてみた。
「ああ、あれは、撮影所の資料に直結してるからねえ、きっとロケハンしたときの……ああ、ここは『木村長門守』ってのを撮った時の資料だ。木村重成って豊臣方の若い大将なんだけどね、討ち取られて首実検したら、兜に香が焚き染めてあったんだ。討ち死にを覚悟して、臭い消しにしたんだね。なんせ夏の陣は暑い盛りだったからねえ」
「討ち死にした場所ですか?」
「いいや、討ち死にしたのは若江っていって、もうちょっと東。ここは、大坂城から煙が上がるのを見た重成が、馬の背中に立って秀頼に別れを告げた場所だよ『馬立』って言ったと思う」
「そうですか……」
「お、なにか閃いたって顔だね」
「ちょっとだけですけど」
「うん、明日の朝、またホームズの事務所を覗いて見るといいよ。なにかヒントがあるだろ」
よし、果報は寝て待て!
ベッドに入ったら五秒で寝てしまった。
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長 豊国神社に祀られている秀吉の弟
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