くノ一その一今のうち

武者走走九郎or大橋むつお

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61『商店街の秘密』

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くノ一その一今のうち

61『商店街の秘密』そのいち 




 商店街に出て、西に下った四辻、昆布屋の角にポストと並んで纏(まとい)が立っている。

 神田祭で神輿が担げない子どもたちが持つような小さな纏で、見通すと、商店街の辻々に立っているようで、おそらくは商店街振興のマスコットのようだ。

「うわあ、かわいい(^▽^)!」

 今や顔文字と並んで世界共通言語であるJK語で賛美の声を上げる。これさえ言っておけば、シゲシゲ見ようが写真に撮ろうが怪しまれることはない。

『先っぽに付いているのは千成瓢箪です』

 えいちゃんがチェックしてくれる。

 パッと見には鈴なりのジャガイモだが、ちょっと身を引いてみて見るとたしかに千成瓢箪。

『やっぱり太閤秀吉との関りを大事にしてるんですねえ』

 それだけではない、ポストと纏の後ろに石碑がある。

――旧町名継承碑――

 碑にはめ込まれた石板には、このあたり現在は谷町7丁目だけれど、昔は南空堀町と表記されていたとある。

 これがもう一つの鍵かもしれない!

 動画を撮るふりをしながら、もう一度観察。

 あ……( ゚Д゚)!

 千成瓢箪は真ん中に大きな瓢箪が逆立ちしていて、その周りを小さな瓢箪が取り巻いているんだけど、後ろの方、取り巻き瓢箪の一つが欠落している。

 これには意味があるはず。

 困った時の風魔の魔石。

 これまでも、草原の国やら甲府城の地下やらで、わたしを救ってくれた。

――南無八幡魔石大明神、我に、このからくりの秘密を解かせたまえ――

 密やかに念じる……んだけど、魔石は沈黙したまま。

 むむむ……魔石は謎解きとかの頭脳戦には向いていないのかもしれない。

『あ、お札の方が!』

 えいちゃんに促されてポケットのお札に触れると、ほんのりと暖かい。

――お願い、大和大納言さま、教えてください――

 念ずると、住居表示の『谷町七丁目』の七が微妙に浮かび上がって来る。

『あれですかね!』

 えいちゃんに促されて、七に触れてみるが何事も起こらない。

 あ、そうか、七はヒントだ……今度は瓢箪が欠落したところが薄く光る。

 ゲームだったら、ここに来るまでにキーアイテムの瓢箪を手に入れていて、ここではめ込む的なフラグが立つんだけど、持ってないから……そうだ!

 瓢箪列の欠けたところから七つ目の瓢箪をグリっと回してみる。

 カク

 ポンプの時と同じ手応え。

 一歩引いて見ると、横のポストの集配扉がわずかに開いている。

 ここだ!

 一瞬、周囲に気を飛ばし、人が見ていないことを確認、同時にポストの扉を全開にする。

 ポストの中は、薄暗く、地下に向かって消防士が出動で使うようなステンレスのバーが降りている。

 セイ!

 飛び込むと同時にバーを掴んで滑り降りる。

 カチャ

 同時に頭上の扉が閉まる音がする。

『キャ』

「大丈夫、人には見られていない」

 感覚的には三階分ほど下って、足が石畳を認識する。

 目を凝らすと、商店街の真下を通っている地下道のようで、横方向にいくつかの枝道が伸びて、立派な地下通路になっていた。

 

☆彡 主な登場人物

風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟

 
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