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33『猿飛佐助の陰謀』

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くノ一その一今のうち

33『猿飛佐助の陰謀』 




「なかなかの連係プレイだったが、ここまでだ」


 王子の姿をしたそいつは聞き覚えのある声で終了を告げた。

 燃え盛る車を間に挟んでいるので、城の中の者に気取られることはない。

 さっさと退散すべき状況なんだけど、動けば、僅かでも遅れた者がこいつと戦わなければならない。戦えば城内の者が駆けつけてきて厄介なことになる。

 話を聞くほかに手立てはない。

「わたしは豊臣本流の木下家に仕える猿飛佐助だ」

 佐助が王子に化けていた。なんのためだ?

「木下家は海外に力を伸ばしている。日和見の鈴木と違って世界の豊臣家を目指しているからだ。豊太閤の遺徳を帯してこその豊臣家再興、その意志と力を知ってもらうために、このドラマに付き合ってもらった。この草原の国は、いずれ木下の援助のもとに復興を遂げるだろう。復興を遂げた草原の国は、やがては木下、いや復興豊臣家の藩屏として豊臣の大陸進出の先駆けとなる。鈴木も豊臣の裔であることに変わりはない。我が木下家の行く末を黙って見ていてもらおう。黙って見ている限りには、鈴木に手出しすることはない。それではな。百地三太夫、嫁持ち。そして、風魔流二十一代目風魔その。これは木下家の最後の警告である。しかと伝えたぞ!」

 ドゴーーーン!!

 再び車が爆発した。

 佐助も我々も、車の断片が飛び散るのと同じ速度で、その場を離れた。



 来た時と同じC130輸送機に乗っている。



「あのう……もう帰るんだから、その擬装は解きません?」

 社長も嫁持ちさんも、まだわたしの姿のままだ、さすがに気持ちが悪い。

 しかし、そう言ったのは嫁持ちさんだ。わたしは同じことを言おうとして息を吸い込んだところなんだ。

「まだ早い……」

 そう言って、社長は綺麗な指で(わたしソックリなんだから、指は綺麗)わたしの背中に手を回した。

 首の後ろに手が回って、わたしソックリの顔が目の前に迫ってきた。

 自分自身にキスされるなんて、ちょっと悪夢なんですけど!

 クチャ

 幽けき音がした。

「ラクダに乗っているときにつけられたんだろう」

 社長の指先にはゴマ粒が潰れたほどの破片がくっ付いていた。

「そう言う社長の脇の下にも……」

「ちょっと、くすぐったいんですけど!」

「いや、だから、社長の方にも……」

「嫁持ちさんの方にも……」

 アハハハ キャハハハ ワハハハ

 三人のわたしが絡んでのクリック試合になってしまった。

―― 三人とも虫がつけられた ――

―― やっぱり佐助、油断がなりません ――

―― しかし ――

―― なんですか ――

―― 今のところ、誰がソノッチだか、奴には分かっていないということでもある ――

―― どうやら、それだけ脅威には感じているということですね ――

―― でも、社長、え、嫁持ちさん? ――

―― 嫁持ちは、わたし ――

―― じゃあ、わたしは? ――



 なんだか訳がわからなくなって、疲れ果てたころ立川基地に着いた。



 帰ってネットで確認すると、草原の国で、一時幽閉されていた王子が軍部と繋がった長老派を駆逐したと出ていた。

「ところで、王子、そのひょうたんは?」

 国営放送の記者は勝利宣言した王子のテーブルの上の1/12サイズのフィギュアほどのひょうたんを指さした。

「ああ、日本の友人からもらった七味唐辛子だよ。ケバブに合うよ」

 サラリと、そう答えた。



☆彡 主な登場人物

風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理       服部半三(中忍)
十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
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