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20『ホッソリまあやとフックラそのちゃん』
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くノ一その一今のうち
20『ホッソリまあやとフックラそのちゃん』
おはようございます!
むこうから挨拶されてびっくり!
専用スタントになったとは言え、泡沫芸能プロのアルバイト、挨拶するのはこちらの方だ。
「今日からね、楽屋はソノちゃんといっしょにしなさいって、事務所の指示なの!」
子犬みたいにピョンピョン近づいて来て手を取るまあや。
「ま、そういうことだから、よろしくお願いしますね。風間そのさん」
ほとんど口もきいたことのないマネージャーが、まあやに対するのと同じくらいの笑顔で頭を下げて行ってしまった。
その変わりように、ちょっと呆然としていると、チャランと目の前でカギが振られる。
「さ、行くわよ。これで、いままでの十倍はお喋りできるわ!」
「あ、待ってくださーい!」
和室の楽屋に入ると、座布団に座ってニコニコ笑顔のまあや。
「引っ越したんだって?」
その一言で分かる。まやは、徳川物産にいったことを言ってるんだ。
「はい、徳川物産の総務二課ってところに出向で……」
「それ、事務所ぐるみの引っ越しだったんでしょ?」
「あ、もう知ってるんですね(^_^;)」
そうなんだ、出向二日目、会社のビルに百地芸能のトラックが停まってるので不思議に思ったら、なんと百地芸能ぐるみ総務二課に引っ越してきた。
経営の詳しいところまでは分からないけど、百地芸能は、会社ぐるみ徳川物産の傘下に入ってしまったらしい。
資材やなんやかやは、まだしばらくは神田にオキッパで、社長は、とうぶん神田の方にいるらしい。
『しばらくはお金の心配しなくていいんだよ!』
経理担当の金持ちさんは手放しで喜んでいる。
『さすがに一流企業は美人が多いねえ』
日に三度は社員食堂に通う嫁もちさんは目尻を下げている。
『肩が凝る!』
力持ちさんは、Tシャツに雪駄履きを禁止されて、ちょっと窮屈そう。
「アハハ、そうなんだ。百地事務所の人たちって、みんな愉快な人ばかりだもんね」
まあやは、面白そうに聞いてくれるので、こっちまで嬉しくなってくる。
「まあやさんが、笑ってると、こっちまで幸せな気になってきます」
「嬉しいこと言ってくれる。ねえ、二人きりの時は友だち言葉でやっていこうよ」
「え、いいんですか?」
「うん、プライベートな時間までアイドル扱いは、ね……そのちゃんとは、もう他人じゃないような気がしてるし」
「はい! あ、うん!」
「じゃあ、これからは、ただのまあやね」
「え、でも、わたしのことは『そのちゃん』だし」
「まあやちゃん……微妙に長いでしょ。それに、身内の中じゃまあやだし」
じゃあ、わたしのことは『そのっち』……と思ったけど、まあやなりの親しみの表現だと、言葉を呑み込む。
「ねえ、まあや」
「なに?」
「その……ちょっと、ほっそりしてきた?」
「え?」
あ、女優さんに容貌上の変化を指摘してはいけなかったかな?
「あ、やっぱ、わかっちゃうんだ」
「あ、いや、その……」
「うん、このごろ間食減ってきて。これまでは、本番の日は緊張して、お八つとか食べつくしてたんだけど、ちょっと減ってきて」
あ、そう言えば、テーブルの上のお菓子箱、今日は手つかずだ。
「うん、緊張すると食べちゃうほうだったから、たぶん、いいことだと思う」
「そうなんだ、よかった!」
「あ、そうだ、会社から言われてるんだけど……代役やる時は、これ付けてもらえないかなって……」
「なに……コンタクト?」
「あ、うん……そのちゃんは、体格的にはわたしによく似てるから、このコンタクト付けたら、ロングでなら顔出しもできるんじゃないかって(^_^;)」
コンタクトとは言え、身体的なものを強制するのは、ちょっと落ち着かないんだ。まやはいい子だ。
「やってもらえるかなあ?」
「うん、さっそくやってみるね……」
おおお!
「そのちゃん、いけるかもよ!」
「う、うん……」
ほっそりしたのはまあやの方だけど、わたしの方はふっくらして、頬の厚みも遜色がない。
わたしのは、バイトも順調で、生活が安定してきたからだ。
そして、鏡に中のわたしは、瞳の大きさも一緒になって、姉妹ぐらいの近さになってきた。
「うん、よし! 眉を書き足そう!」
まあやの心に火が付いた。
ペンシルを取り出して、少し書き足すと……
おおおおおお!
そっくりになってきた!
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母
百地三太夫 百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三
20『ホッソリまあやとフックラそのちゃん』
おはようございます!
むこうから挨拶されてびっくり!
専用スタントになったとは言え、泡沫芸能プロのアルバイト、挨拶するのはこちらの方だ。
「今日からね、楽屋はソノちゃんといっしょにしなさいって、事務所の指示なの!」
子犬みたいにピョンピョン近づいて来て手を取るまあや。
「ま、そういうことだから、よろしくお願いしますね。風間そのさん」
ほとんど口もきいたことのないマネージャーが、まあやに対するのと同じくらいの笑顔で頭を下げて行ってしまった。
その変わりように、ちょっと呆然としていると、チャランと目の前でカギが振られる。
「さ、行くわよ。これで、いままでの十倍はお喋りできるわ!」
「あ、待ってくださーい!」
和室の楽屋に入ると、座布団に座ってニコニコ笑顔のまあや。
「引っ越したんだって?」
その一言で分かる。まやは、徳川物産にいったことを言ってるんだ。
「はい、徳川物産の総務二課ってところに出向で……」
「それ、事務所ぐるみの引っ越しだったんでしょ?」
「あ、もう知ってるんですね(^_^;)」
そうなんだ、出向二日目、会社のビルに百地芸能のトラックが停まってるので不思議に思ったら、なんと百地芸能ぐるみ総務二課に引っ越してきた。
経営の詳しいところまでは分からないけど、百地芸能は、会社ぐるみ徳川物産の傘下に入ってしまったらしい。
資材やなんやかやは、まだしばらくは神田にオキッパで、社長は、とうぶん神田の方にいるらしい。
『しばらくはお金の心配しなくていいんだよ!』
経理担当の金持ちさんは手放しで喜んでいる。
『さすがに一流企業は美人が多いねえ』
日に三度は社員食堂に通う嫁もちさんは目尻を下げている。
『肩が凝る!』
力持ちさんは、Tシャツに雪駄履きを禁止されて、ちょっと窮屈そう。
「アハハ、そうなんだ。百地事務所の人たちって、みんな愉快な人ばかりだもんね」
まあやは、面白そうに聞いてくれるので、こっちまで嬉しくなってくる。
「まあやさんが、笑ってると、こっちまで幸せな気になってきます」
「嬉しいこと言ってくれる。ねえ、二人きりの時は友だち言葉でやっていこうよ」
「え、いいんですか?」
「うん、プライベートな時間までアイドル扱いは、ね……そのちゃんとは、もう他人じゃないような気がしてるし」
「はい! あ、うん!」
「じゃあ、これからは、ただのまあやね」
「え、でも、わたしのことは『そのちゃん』だし」
「まあやちゃん……微妙に長いでしょ。それに、身内の中じゃまあやだし」
じゃあ、わたしのことは『そのっち』……と思ったけど、まあやなりの親しみの表現だと、言葉を呑み込む。
「ねえ、まあや」
「なに?」
「その……ちょっと、ほっそりしてきた?」
「え?」
あ、女優さんに容貌上の変化を指摘してはいけなかったかな?
「あ、やっぱ、わかっちゃうんだ」
「あ、いや、その……」
「うん、このごろ間食減ってきて。これまでは、本番の日は緊張して、お八つとか食べつくしてたんだけど、ちょっと減ってきて」
あ、そう言えば、テーブルの上のお菓子箱、今日は手つかずだ。
「うん、緊張すると食べちゃうほうだったから、たぶん、いいことだと思う」
「そうなんだ、よかった!」
「あ、そうだ、会社から言われてるんだけど……代役やる時は、これ付けてもらえないかなって……」
「なに……コンタクト?」
「あ、うん……そのちゃんは、体格的にはわたしによく似てるから、このコンタクト付けたら、ロングでなら顔出しもできるんじゃないかって(^_^;)」
コンタクトとは言え、身体的なものを強制するのは、ちょっと落ち着かないんだ。まやはいい子だ。
「やってもらえるかなあ?」
「うん、さっそくやってみるね……」
おおお!
「そのちゃん、いけるかもよ!」
「う、うん……」
ほっそりしたのはまあやの方だけど、わたしの方はふっくらして、頬の厚みも遜色がない。
わたしのは、バイトも順調で、生活が安定してきたからだ。
そして、鏡に中のわたしは、瞳の大きさも一緒になって、姉妹ぐらいの近さになってきた。
「うん、よし! 眉を書き足そう!」
まあやの心に火が付いた。
ペンシルを取り出して、少し書き足すと……
おおおおおお!
そっくりになってきた!
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母
百地三太夫 百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
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忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
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