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5『その修業に出る』

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くノ一その一今のうち

5『その修業に出る』 




 まだ幼いか……


 意識が飛ぶ寸前、お祖母ちゃんが呟いたような気がする。

 幼いって……さっきは代々十三歳で目覚めたとか言ってたじゃん、お祖母ちゃんは十五で、お母さんは、ついに目覚めなかったとか……。

 ヘックチ!

 自分のクシャミで目が覚めた。

 なんだか、スースーする……エアコン入れた?

 正面に天井……ということは、仰向けに寝てるんだ。

 グルッと目玉を回すと足もとにお祖母ちゃん。怖い顔で腕組みしている。

「やや小ぶりではあるが、体は十分に発育しておる……」

 え?

 なんだか裸を見られてる気がするんですけど……って……このスースー感は?

 マッパになってる!?

 ウワワワ(# ゚Д゚#)!

 慌てて起きて、脱がされた服を抱えて部屋の隅で丸くなる。

「ちょ、なんで裸に!?」

「狼狽えるな。魔石の声を聞こうとしたら気を失ったのでな、まだ熟してはおらぬのではないかと調べたのじゃ」

「い、いったい何を!? どこをさ!?」

「いろいろじゃ、しかし体の発育には問題はない」

「あ、あたりまえでしょ、もうじき十八なんだから!」

「これは、今のうちに修業に出ねばならんのう……その、明日から修業に参れ! くノ一の修業じゃ!」

「修業……って、学校あるんだけど。それに、お祖母ちゃんの世話だって。お祖母ちゃんご飯も作れないじゃん」

「それは大丈夫じゃ、儂もボケてはおられぬ」

「ボケ老人は『自分はボケてない』って言うもんだよ」

「しのが覚醒してボケてなぞおれぬわ。それに、学校も、きちんと通って卒業するのじゃ。学校が終わったら、毎日修業に通う。風魔本家当主の素養があれば、日に三時間でシフトを組めば間に合うであろう」

 なんかバイトのノリみたいに言う……



 で、そのあくる日の放課後。



 わたしは、カバンの中に魔石を忍ばせ、ブレザーの内ポケットに紹介状を入れて神田の街を歩いている。

 せめて住所とか電話番号とかぐらいは教えてよね……。

「靖国通りを西にいけば分かる」

 その一言だけで、小川町で下りて西に歩いている。

 探しているのは『百地芸能事務所』って、今どき全部漢字で表記するプロダクション。

 ここで、しばらく修業に通うことになった。

 近くまで行けば魔石が教えてくれるって……昨日はなんにも聞こえなくって気を失ったんですけどぉ。

 正直、信じてるわけじゃない。風間が風魔で、忍者の本家。どうでもいいです。

 お祖母ちゃんのボケが、ちょっち良くなって、世話しなくて済むのは助かる。

 あとは、うちの経済力に見合った短大行くか、就職とかして、将来の見通し付けたいのよ。

 ふつうの人生送りたいわけですよ。

 あたしが結婚とかするまで、お祖母ちゃん元気でいてもらって、子どもが二人ほどできて、子育ても一段落したころにポックリいってもらって、パートとかに行って、たまに食事に行ったり旅行をしたり、文化教室通ったり。

 そういうふうに、波風立てずにふつうの人生歩みたいわけですよ。

 今日は、どんな不幸な奴を見つけてもニャンパラリンなんて絶対やらない!

 まあ、見つけられなかったら、本気でコンビニとかのアルバイト見つけるか……くらいに思って神保町に差し掛かって来ると、いつの間にか南の方に道をギザギザに曲がって、見つけてしまった。

 三階建てのボロビルに、なにかの道場かって木の看板。『百地芸能事務所』

 サブいぼが立ってしまったよ……。



☆彡 主な登場人物

風間 その        高校三年生
風間 その子       風間そのの祖母

 
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