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59『古戦場のピクニック』

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妹が憎たらしいのには訳がある

59『古戦場のピクニック』     




「あ~ たまに来る田舎もいいもんだなあ~」

「命の洗濯だあ~」

 う~~~ん

 男二人がランチのバスケットを持ったままノビををした。

 わたしたちは、ひょんなことで友だちになり、みんなでお好み焼きパーティーをやったあと、今日のピクニックの話になった。

 で、木下クンの提案で、多摩の自然公園のピクニックに来ている。

 自然公園といっても奥多摩のような完全な自然公園ではない。今世紀の初頭まで団地が林立していた多摩市、八王子市、町田市にまたがるニュータウンの北西部である。

 人口の減少、高齢化にともないニュータウンの過疎化が進み、先の極東戦争では首都圏内で唯一戦場になったこともあり、1/3にあたる1000ヘクタールあまりが自然に戻され、多摩自然公園……のようにされた。

 戦場跡であったので、そのままの状態で保存しようという声も高かったが「平和を希求する日本の象徴」として、自然公園のように作り替えられ、昭和の昔には多くの人の営みがあったことなど、痕跡も留めていない。

 コンクリートやアスファルトなどは、クラスター砲(物質を分子の次ぎに大きいクラスターのレベルまで分解するショックガン。

 その威力は、一発で10000平米ほどに展開した戦車部隊を、鉄とセラミックのクラスターに分解し、核とは無関係なのに極地核兵器とまで恐れられ。戦後は国際法で使用が禁止された。

 なぜなら、人間さえタンパク質やカルシウムのクラスターに分解してしまう。今では対クラスターの技術も進んでいるのだが、象徴的に禁止兵器とされている)を民生用に転用したクラスター破砕機で素材にまで分解され、自然の岩のようにされて、十数年たった今では苔むして、見かけは完全な自然に戻っている。

 わたしは無意識に、その「自然な姿」をCPの中で元の形に復元して見ていた。

――ここは、ジブリの『耳をすませば』のモデルになった公団住宅のあたりだ――

「なに思い出にふけってんのよ」

 優子にたしなめられた。義体の能力を使えば、パッシブセンサーに捉えられる可能性がある。

「優子だって、こないだ宗司クン助けたじゃん」

「あれは、一瞬の出来心。真由、もう10分もサイトシーングしてるよ」

「ああ、やっぱ、あれは出来心だったのか!」

 意外なところで、宗司クンが傷ついた。

「あたりまえでしょ、あんなのほっといたら、事故になって、みんなが迷惑するんだからね」

「ねえ、ここらへんでお昼にしようよ!」

 宗司クンの気を引き立てるように、春奈が明るく言った。

「うわー、豪華なランチパックじゃないの!」

「夕べから、川口さんといっしょに作ったんです」

 宗司クンが際どいことを言う。

「それって、原因、結果?」

 木下クンが、意地悪な質問をする。

「いやあ、作っているうちにアイデアが膨らんで、あれも、これもって……」

 宗司クンが頭を掻く。

「あ、結果ですからね、結果。宗司クンには下心なんかありません!」

「そういう言い方って、想像力をかきたてんのよね」

 真由まで調子にのりだした。

「ここに、カントリーロードが走っていた」

 ちっこいPCを出して、木下クンが言った。

 覗いてみると、PCには今の風景と、ニュータウンがあったころの風景が、重なって映し出されていた。

「この道を挟んで、杉本が雫を呼び止めるんだ」

「知ってる、で、神社ですれ違いの告白になるんだよね!」

 と、わたしが言おうとしたことを春奈が先を越した。

「しかし、木下クンのPC技術はすごいね」

「実は、他にも使い道が……」

 地図にグリーンのドットが現れた。

「なにこれ?」

「多摩奇襲作戦で、敵のロボットが破壊された場所」

「今でも残ってんの!?」

 優子がすっとんきょうな声を上げ、驚いた小鳥が二三羽飛び立っていった。

「本体は回収されたけどね、部品が地中に埋まってる……こいつを掘り出して、オークションにかければいい値段になるんだけどね」

「ひょっとして、木下クン、そのために、わたしたちを連れてきたとか?」

「少しはあるけどね、みんな地中深くだ。大がかりな重機でもなきゃ無理さ。たとえできても採算が合わない…………ん、これは?」


 モニターに赤いドットが現れた。


「こいつ、生きてるよ!」

「え、何が?」

 みんなが寄ってきた。

「これは国防軍のレベルCの機密なんだけど。奥多摩奇襲作戦で補足した敵のロボットと撃破したロボットの数が一つ合わないんだ。カウントミスということになっているけど、こいつはスリーパーだったんだ……」

「寝てたの?」

 春奈が、あどけない質問をする。

「今までは、グリーンの残骸と認識されていたんだ……」

「なあ、このドット動いてないか?」

 宗司が、信号機が変わったぐらいの関心で言った。

「ヤベエ、こっちに近づいている!」

 その時、地響きがして、やがて地震のような揺れになった。

「みんな、逃げよう!」


 ズボーーーーーーン!


 鈍い爆発音のようなのがして、現れた……そいつが。

 出来損ないのガンダムのようなロボットが……。


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