明神男坂のぼりたい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
100 / 109

100〔The Summer Vacation・7〕

しおりを挟む
明神男坂のぼりたい

100〔The Summer Vacation・7〕 

                   
  

 角を曲がってジャンク通りに出るとえらいことになっていた!

 ジャンク通りのオッチャン、オバチャン、オネーチャン、オタクにメイドさんたちが100人近く集まっての大歓迎。

『歓迎AKR47 鈴木明日香さん!』『ジャンク通りアイドル白石佳代子!』なんかのノボリやボードが生い茂った夏草みたいにそよいでる。わたしを見つけて「キャー!」とか「ワー!」とか声が上がると、ほとんど百姓一揆!?

 人波の中にカヨちゃんと目が合って、一瞬で予定変更、百姓一揆のみなさんを引き連れ、十分にジャンク通りのロケーションを撮りながらAKRのスタジオへ。途中百姓一揆のみなさんは、自分の店の前に来くると、カメラを強引に店の方にパンさせる。自分たちも口々にお店のPR。だけど100人余りが、てんでに好き勝手に言うから、全体としてのガヤの勢いしか伝わらないんですけどね(^_^;)。

 カヨちゃんが、ジャンク通り期待のアイドルだということがよ~く分かった。

「東京音頭に手を加えます!」

 スタジオに着いて、レッスンの準備ができると、夏木先生が宣言した。

「ディープなファンの方々からご指摘を受けました。東京音頭は昭和七年にできたんだけど、以来、基本形は守られつつ、いろんなパターンがあるのね。ヤクルトスワローズの応援歌になってたりビビットなものなんかあったりするのよ。基本的なリズムだけ踏まえておけば、あとはやったもん勝ちの自由です。その自由と要所要所での統一感を出すレッスンをやります。テンポは基本の1・5倍でしたが、ラストは2倍にして、一気に盛り上げます。曲もニューミュージック風にアレンジしました。明日香は曲の練習ね。一時間で仕上げて、いっくぞー!」

「「「「オーーー!」」」」

 AKRはいつもこの調子。その時その時のお客さんの反応や、テレビの数字などで、イケルと思えるところはどんどん変えて、イマイチなとこはあっさり切られる。

 あたしはニューバージョンになった曲と歌詞を覚える。アレンジしたとは言え、基本は東京音頭なので、体を動かさないと曲も歌詞も勢いが出ない。この一時間のレッスンはきつかった。もう途中で取材カメラが回っていることさえ忘れてしまう。

 OKが出ると、あたしはTシャツの裾を大きくパカパカ……しすぎてブラがカメラに映ってしまった。ラッシュで気が付いて「ここカット」ってディレクターは言っていたけど。あてにはなりません(-_-;)。

「すげーなあ!」

 テレビのディレクターが思わず言うくらい、あたしたちの休憩時間はすさまじい。

「はい、休憩!」

 その声がかかったとたん、あたしらの女の子らしさはスイッチ切ったみたいに無くなってしまう。スポーツドリンクをオッサンみたいにがぶ飲みする子。バスタオルでTシャツまくり上げ汗を拭きまくる子。シャワー室へ駈け込んで、ダイレクトに体を冷やす子。二台のカメラは、そんな子らを追い掛け回して大忙し。

「もう、明日香を写してくださいよ。これ『AKR47 佐藤明日香の24時間』いうタイトルなんでしょ!?」

「あ、そうだった!」

 思い出したディレクターが、急きょあたしにインタビュー。

「車で言うとF1耐久レースですね。何百キロいうスピードで走りまくって、ピットインしてるのが今ですよ。体は一つだけど、エモーションは何人前もあるんです。一遍には出しません。F1が休憩のたんびに、ドライバーが入れ替わるように、新しいエモーション注入。え……教えられたこと……ちがいますね。この二か月間で、あたしたち自身で自然に会得した心と体のローテーションですね。キザに言うと青春の完全燃焼のさせ方ですか!?」

 我ながらうまいこと言葉が出てくる。そう言ってみんなを見ると、バテかけてるメンバーの姿が、いかにも美少女戦士束の間の休息に見えてくるぞ。

 午後からは、東京音頭がバージョンアップした分、バランスをとるためにVACATIONも手直し。
 ヘゲヘゲになったとこで、市川ディレクターから嬉しい知らせ。

「ユニオシから予算が付いたんで、週末は三日かけて、プロモの撮り直し。ハワイで!」

 一瞬間があって、みんなから歓声があがった……!

 キャーーーーー(≧∇≦)!!

 ワンコかニャンコみたくピョンピョン喜ぶ!

 その中に、さつきと出雲阿国が見えたような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...