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67『スタートラック・7』
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ミナコ転生
67『スタートラック・7』
優しいラベンダーの香りでミナコは目が覚めた……。
「あら、気が付いたのね。具合の悪いところはない?」
「うん……コスモス、ずっと付いていてくれてたの?」
「船も順調だし、今は自動操縦。バルスも筋トレしてるわ」
「そう……ちょっと頭がボーっとする。期末テストの後の寝過ぎみたい」
「Sドリンク置いといた。すっきりするから飲んでみて。わたしが考案したスペシャル……船長、ミナコちゃんが目覚めました……はい、了解。それ飲んだらコクピットに来てちょうだい。先に行ってるから」
Sドリンクは、頭のモヤをいっぺんに吹き飛ばしてくれた。ハンベでサーチすると、体の中の疲労物質が消えて、頭の中にセロトニンが増えていることが分かった。量産したら儲かるかもと思ったら「特許はとってあるけど、量産ができなくて」と、ボトルがコスモスの声でぼやいた。
コクピットに行くと、ちょうどマーク船長が寝癖の付いた頭を手櫛で撫でながら出てきた……そして、その後ろから、ミナホがトレーナー風の上着を「いま着たとこ」という感じで襟元から、セミロングの髪を出しているところだった。
「そんな、スケベオヤジ見るような目で見んといてくれる」
「ミナホちゃん動くようになったのね」
ミナコは、二人の様子から、船長室で何に励んでいたのか想像して顔が赤くなった。
「船長、ミナコちゃんには説明してあげた方がいいんじゃないですか?」
コスモスがフォローしてくれる。
「ああ、ジャンク屋でパーツを見つけたんで、ついさっき直したとこなんや。ガイノイドは動かなきゃ、ただのお人形やからな」
「こんにちは、ミナコ。動けなかったけど、あなたのとはずっといっしょだったのよ」
「え……?」
「ミナホの意識はポチにシンクロさせといた。せやから、ミナコのことは基礎体温から知っとるで」
「え、じゃあ、ポチは?」
よたよたとポチが船長室から出てきた。
「やっぱ、ミナホの意識を同居させるとくたびれるわ。オレのCPUは犬用なんだから。もう勘弁してくれよな、船長。ミナホのテストも過激だったからな。ちょっとクールダウンしてくるわ。じゃ、ミナコ、またな……」
ポチは、そう言うと後脚でガシガシと首を掻いて船長室に戻った。
「ミナホ、テストを兼ねて、ミナコに説明したって」
船長は、専用シートに座ると、リクライニングをいっぱいに倒して目をつぶった。
「わたしを見て、いっぺんで理解して欲しいから」
わたしと同じ顔のガイノイドに見つめられるのは、気持ちの良いものではない。
「とりあえずのバイトはこれで終わり。バイト代は今振り込んだわ、確認して」
「……え、なにこれ!?」
ハンベが教えてくれた数字は6の下に0が八つも付いていた。
「ミナホ、順序立てて説明してあげなきゃ」
コスモスがアドバイスする。
「火星ツアーは、最終テストだったの……ミナコのね」
「あたしのテスト?」
「ええ、これからの任務のね」
「ちょっと、これからって、バイトはもう終わったはずよ」
「バイトは、今日の昼過ぎまで。そうよね」
「だけど、火星ツアーは終わった……」
その時、コクピットから見える地球が、だんだん小さくなっていくことに気づいた。
「地球が……」
「この船の動力は、通常反重力エンジンだけど、火星でチュ-ンしてコスモエンジンにしたの」
「バイト代、こんなに要らないから、地球に帰して!」
「もちろん、昼過ぎには帰してあげる」
「だって、地球時間じゃ3月12日の午前5時よ。あんなに地球が遠くなって……」
地球は、もう月ほどに小さくなってしまった。
「船長、月の管制局からコース離脱の警報です」
バルスが落ち着いて言った。
「よし、テスト兼ねて、ちょっとジャンプするか」
「では、冥王星まで」
一瞬目の前が真っ白になった。
「……各部異常なし。冥王星の60度200万キロです」
「これって、ワープ……?」
「時計を見てご覧なさい」
ハンベが地球時間を教えてくれた。
3月11日午後11時半……5時間30分戻っている。
「これは、ミナコの知識にあるワープとはちがうの……#&%*@@*:*|¥##?」
ミナホが、たかがH系ガイノイドが、あたしの知識をはるかに超えたことを喋った。かろうじて最後の一言が「分かった?」というニュアンスであることだけが分かった。
船長が眠そうな顔でニヤリと笑い、ミナコのスタートラックが始まった。
67『スタートラック・7』
優しいラベンダーの香りでミナコは目が覚めた……。
「あら、気が付いたのね。具合の悪いところはない?」
「うん……コスモス、ずっと付いていてくれてたの?」
「船も順調だし、今は自動操縦。バルスも筋トレしてるわ」
「そう……ちょっと頭がボーっとする。期末テストの後の寝過ぎみたい」
「Sドリンク置いといた。すっきりするから飲んでみて。わたしが考案したスペシャル……船長、ミナコちゃんが目覚めました……はい、了解。それ飲んだらコクピットに来てちょうだい。先に行ってるから」
Sドリンクは、頭のモヤをいっぺんに吹き飛ばしてくれた。ハンベでサーチすると、体の中の疲労物質が消えて、頭の中にセロトニンが増えていることが分かった。量産したら儲かるかもと思ったら「特許はとってあるけど、量産ができなくて」と、ボトルがコスモスの声でぼやいた。
コクピットに行くと、ちょうどマーク船長が寝癖の付いた頭を手櫛で撫でながら出てきた……そして、その後ろから、ミナホがトレーナー風の上着を「いま着たとこ」という感じで襟元から、セミロングの髪を出しているところだった。
「そんな、スケベオヤジ見るような目で見んといてくれる」
「ミナホちゃん動くようになったのね」
ミナコは、二人の様子から、船長室で何に励んでいたのか想像して顔が赤くなった。
「船長、ミナコちゃんには説明してあげた方がいいんじゃないですか?」
コスモスがフォローしてくれる。
「ああ、ジャンク屋でパーツを見つけたんで、ついさっき直したとこなんや。ガイノイドは動かなきゃ、ただのお人形やからな」
「こんにちは、ミナコ。動けなかったけど、あなたのとはずっといっしょだったのよ」
「え……?」
「ミナホの意識はポチにシンクロさせといた。せやから、ミナコのことは基礎体温から知っとるで」
「え、じゃあ、ポチは?」
よたよたとポチが船長室から出てきた。
「やっぱ、ミナホの意識を同居させるとくたびれるわ。オレのCPUは犬用なんだから。もう勘弁してくれよな、船長。ミナホのテストも過激だったからな。ちょっとクールダウンしてくるわ。じゃ、ミナコ、またな……」
ポチは、そう言うと後脚でガシガシと首を掻いて船長室に戻った。
「ミナホ、テストを兼ねて、ミナコに説明したって」
船長は、専用シートに座ると、リクライニングをいっぱいに倒して目をつぶった。
「わたしを見て、いっぺんで理解して欲しいから」
わたしと同じ顔のガイノイドに見つめられるのは、気持ちの良いものではない。
「とりあえずのバイトはこれで終わり。バイト代は今振り込んだわ、確認して」
「……え、なにこれ!?」
ハンベが教えてくれた数字は6の下に0が八つも付いていた。
「ミナホ、順序立てて説明してあげなきゃ」
コスモスがアドバイスする。
「火星ツアーは、最終テストだったの……ミナコのね」
「あたしのテスト?」
「ええ、これからの任務のね」
「ちょっと、これからって、バイトはもう終わったはずよ」
「バイトは、今日の昼過ぎまで。そうよね」
「だけど、火星ツアーは終わった……」
その時、コクピットから見える地球が、だんだん小さくなっていくことに気づいた。
「地球が……」
「この船の動力は、通常反重力エンジンだけど、火星でチュ-ンしてコスモエンジンにしたの」
「バイト代、こんなに要らないから、地球に帰して!」
「もちろん、昼過ぎには帰してあげる」
「だって、地球時間じゃ3月12日の午前5時よ。あんなに地球が遠くなって……」
地球は、もう月ほどに小さくなってしまった。
「船長、月の管制局からコース離脱の警報です」
バルスが落ち着いて言った。
「よし、テスト兼ねて、ちょっとジャンプするか」
「では、冥王星まで」
一瞬目の前が真っ白になった。
「……各部異常なし。冥王星の60度200万キロです」
「これって、ワープ……?」
「時計を見てご覧なさい」
ハンベが地球時間を教えてくれた。
3月11日午後11時半……5時間30分戻っている。
「これは、ミナコの知識にあるワープとはちがうの……#&%*@@*:*|¥##?」
ミナホが、たかがH系ガイノイドが、あたしの知識をはるかに超えたことを喋った。かろうじて最後の一言が「分かった?」というニュアンスであることだけが分かった。
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