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37『女子高生怪盗ミナコ・3』
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時かける少女
37『女子高生怪盗ミナコ・3』
戯れに恋はすまじき……長火鉢に煙管(きせる)をコンとやって、お爺ちゃんが言った。
「なんのことよ?」
「トボケんじゃねえ、爺ちゃん、この二月から、ずっと見てたんだぜ……」
新しいタバコを詰めて、煙管に火を付けた。
「だから、なによ?」
「ミナコがコナ掛けてるつもりのあんちゃんよ。保科正隆とかいう、ちょい遊び人気取りの青二才」
爺ちゃんは、口からドーナツ形の煙を吐き出し、ミナコの首を絞めるような格好になった。
「なんで、爺ちゃんが保科クンのこと……」
「藤三アニイの代わりにAのムショ出たときから分かってるさ」
爺ちゃんは、長火鉢の引き出しから、クラクションに驚いて仲良くびっくりしているミナコと保科クンのアップの写真が出てきた。
ザップーン!
ウオータースライダーから飛び出したミナコは水面で二回転半して着水した。あたりにいたガキンチョが目を丸くしてたまげている。別に派手なパフォーマンスをやろうとして、やったわけではない。
今日は、保科クンから、ヅブリ映画の『風邪ひきぬ』を誘われていたが、理由を付けて断った。主観的には恋の手練手管である。四回に一度くらいのペースで、デートの申し出を断る。一段優位に立ちながら、相手の気持ちを引きつけておくための初歩のテクニック……の、つもりであった。
でも、爺ちゃんの指摘が影響していない……とは言えなかった。
爺ちゃんは、保科クンの家の間取り、防犯カメラの位置、金庫の場所から番号、主要取引銀行のキャッシュカードの番号まで調べ上げていた。ミナコが半年の付き合いの中で、まだ調べ上げていない内容まで含まれていた。
「あたしの目標は、もっと高いの!」
行きがかり上タンカは切ってきた……言い訳であることは自覚していた。学校一番のセレブである保科クンの家から、ほんの二三百万いただいて、家のセキュリティーを調べる稽古台にしようとしたのである。
だから、目的は、ほとんど果たしたと言ってもいい。それをダラダラ続けているのは、手段だった保科クンとの恋人ごっこが、いつのまにか本気になってきた……図星かもしれない……そう思う自分が居た。
「目標は、保科グループの株券よ!」
と、カマしてしまった。
爺ちゃんは、方頬で笑いながら、やれるもんならやってみろという顔をした。
別に爺ちゃんに対する意地からだけではなかった、保科クンへの思いは、あくまで本業のための手段に過ぎない。
そう自分に言い聞かせ、それを証明するための目標値のインフレーションのつもりであった。
目標のため……だから、まだクチビルまでしか許していなかった。
「そういうもんは、もっと大事な時のためにとっとくもんだ」
爺ちゃんに説教されるまでもなく、この稼業のイロハとしてミナコは理解していた。でも、爺ちゃんの一言は鋭く響き、予定を変更して、一人で、このプールにやってきたのである。
ミナコは、凄腕の泥棒であると共に十七歳の女子高生なのだ。
目の端に気配を感じた。映画を観にいってるはずの保科クンが、視野の端に入ってきたのだ!
それも、清楚なワンピ水着がよく似合うカワイイ子を連れているではないか!
37『女子高生怪盗ミナコ・3』
戯れに恋はすまじき……長火鉢に煙管(きせる)をコンとやって、お爺ちゃんが言った。
「なんのことよ?」
「トボケんじゃねえ、爺ちゃん、この二月から、ずっと見てたんだぜ……」
新しいタバコを詰めて、煙管に火を付けた。
「だから、なによ?」
「ミナコがコナ掛けてるつもりのあんちゃんよ。保科正隆とかいう、ちょい遊び人気取りの青二才」
爺ちゃんは、口からドーナツ形の煙を吐き出し、ミナコの首を絞めるような格好になった。
「なんで、爺ちゃんが保科クンのこと……」
「藤三アニイの代わりにAのムショ出たときから分かってるさ」
爺ちゃんは、長火鉢の引き出しから、クラクションに驚いて仲良くびっくりしているミナコと保科クンのアップの写真が出てきた。
ザップーン!
ウオータースライダーから飛び出したミナコは水面で二回転半して着水した。あたりにいたガキンチョが目を丸くしてたまげている。別に派手なパフォーマンスをやろうとして、やったわけではない。
今日は、保科クンから、ヅブリ映画の『風邪ひきぬ』を誘われていたが、理由を付けて断った。主観的には恋の手練手管である。四回に一度くらいのペースで、デートの申し出を断る。一段優位に立ちながら、相手の気持ちを引きつけておくための初歩のテクニック……の、つもりであった。
でも、爺ちゃんの指摘が影響していない……とは言えなかった。
爺ちゃんは、保科クンの家の間取り、防犯カメラの位置、金庫の場所から番号、主要取引銀行のキャッシュカードの番号まで調べ上げていた。ミナコが半年の付き合いの中で、まだ調べ上げていない内容まで含まれていた。
「あたしの目標は、もっと高いの!」
行きがかり上タンカは切ってきた……言い訳であることは自覚していた。学校一番のセレブである保科クンの家から、ほんの二三百万いただいて、家のセキュリティーを調べる稽古台にしようとしたのである。
だから、目的は、ほとんど果たしたと言ってもいい。それをダラダラ続けているのは、手段だった保科クンとの恋人ごっこが、いつのまにか本気になってきた……図星かもしれない……そう思う自分が居た。
「目標は、保科グループの株券よ!」
と、カマしてしまった。
爺ちゃんは、方頬で笑いながら、やれるもんならやってみろという顔をした。
別に爺ちゃんに対する意地からだけではなかった、保科クンへの思いは、あくまで本業のための手段に過ぎない。
そう自分に言い聞かせ、それを証明するための目標値のインフレーションのつもりであった。
目標のため……だから、まだクチビルまでしか許していなかった。
「そういうもんは、もっと大事な時のためにとっとくもんだ」
爺ちゃんに説教されるまでもなく、この稼業のイロハとしてミナコは理解していた。でも、爺ちゃんの一言は鋭く響き、予定を変更して、一人で、このプールにやってきたのである。
ミナコは、凄腕の泥棒であると共に十七歳の女子高生なのだ。
目の端に気配を感じた。映画を観にいってるはずの保科クンが、視野の端に入ってきたのだ!
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