121 / 161
121『アキバ子』
しおりを挟む
やくもあやかし物語
121『アキバ子』
こっち こっちこっち
メイド将軍に阻まれ、途方に暮れていると、どこからともなく呼ぶ声がする。
「やくもさま、足もとです」
赤メイドが、口も動かさずに呟く。
「足もと?」
わたしも、口を動かさずに聞いてみる。
「マンホールです」
「「足もとの」」
赤・青の声が揃って、ソロっとマンホールを視野の端っこに捉える。
「あ、わたしみたいなのが居る!?」
ポケットから首だけ出した御息所が小さく驚く。
マンホールの蓋が少しズレていて、御息所と同じくらいの女の子が口の形で『こっちこっち』と言っている。
え、マンホールの中?
—— はい、マンホールです ――
「これは、裏アキバからのお誘いのようです」
「ラッキーです。裏アキバは、まだお味方のようです」
赤・青メイドは、そう決めつけると、カゴをマンホールの上に据えて「「お乗りください」」とカゴの簾を上げる。
「う、うん」
言われるままに乗ろうとしたら、カゴの底が開いていて、その下のマンホールも開いている。
「カゴに乗るふりをして、マンホールに入ってこいってことよ」
御息所が分析。
「よいしょっと」
カゴの底経由でマンホールに入ると、ガシャリと音がして、マンホールの蓋がしめられる。
あ、真っ暗!
ちょっとビックリして、よろける。
「おっと」
声が掛かったかと思うと、誰かが支えてくれる。
あれ? 御息所もお迎えの子も、1/12くらいの大きさ。わたしを抱きとめるなんてできない。
「ちょっとだけ、お手伝い」
「え?」
ちょうど非常灯のようなものが点いて、その姿が見える。
「「あ、メイドお化け」」
御息所と声が揃う。
「説明は後よ、ついて来て」
足元のお誘いに目配せすると、地下下水道……というにはキレイで、赤じゅうたんが敷かれた地下通路。
壁や天井も、チェックや水玉や花柄や縦縞、横縞のパッチワーク。
「この柄って……」
「考えない方がいい」
「う、うん」
地下通路を抜けると、アキバの駅前広場……なんだけど、アニメの背景画のように、よく言うときれい、あからさまに言うと実在感が無い。
「ここが裏アキバ」
「う、うん」
メイドお化けの短い説明に頷くしかないんだけど、ちっとも釈然としない。
「二丁目でもね、やくもに任せっきりではあんまりだって声があがってね、ま、それで、わたしが、ちょびっとだけ手伝うことになったわけ」
「嬉しい、手伝ってくれるの!?」
将門さまはあんなだし、赤・青メイドともマンホールで別れてしまうし、正直なところ、どうしようかって思ってたところ。
「手伝うと言っても、この裏アキバに渡りを付けるところまでよ。あ、その子がね……」
「わたし、裏アキバの妖精でアキバ子と言います」
「空き箱?」
「いえ、アキバの子どもで、アキバ子です」
「あ、えと……」
正直、1/12サイズでは心もとない。
「そのまま業魔と戦っては分が悪いのです。地上では業魔どもに姿を見られっぱなしですし、戦うにしても、御息所さまは、お小さいまま……」
「あんたに言われたかない」
「アハハ、ですよね。でも非力なのは事実でして、万全の力を発揮していただくにはアキバの夢の力を使っていただかなければなりません」
「アキバの夢?」
「説明していては時間がかかります。わたしの中にお入りください。エイ!」
そう言うと、アキバ子はグルンとでんぐり返し。
すると、アキバ子は本当の空き箱になってしまった。
驚いていると、空き箱の蓋が開いて、中から小さなハートがホワホワ光りながら浮かび上がってきた。
「さあ、そのハートを見つめて!」
「う、うん」
メイドお化けに言われて、ハートを見つめていると、猛烈な眠気に襲われる。
「じゃ、活躍のほどは二丁目のみんなで観てるから、がんばってねえ(^o^;)!」
あ、なんだか無責任、なんか言ってやらなきゃ……思っているうちに意識が無くなって……いった……。
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 メイド将軍 アキバ子
121『アキバ子』
こっち こっちこっち
メイド将軍に阻まれ、途方に暮れていると、どこからともなく呼ぶ声がする。
「やくもさま、足もとです」
赤メイドが、口も動かさずに呟く。
「足もと?」
わたしも、口を動かさずに聞いてみる。
「マンホールです」
「「足もとの」」
赤・青の声が揃って、ソロっとマンホールを視野の端っこに捉える。
「あ、わたしみたいなのが居る!?」
ポケットから首だけ出した御息所が小さく驚く。
マンホールの蓋が少しズレていて、御息所と同じくらいの女の子が口の形で『こっちこっち』と言っている。
え、マンホールの中?
—— はい、マンホールです ――
「これは、裏アキバからのお誘いのようです」
「ラッキーです。裏アキバは、まだお味方のようです」
赤・青メイドは、そう決めつけると、カゴをマンホールの上に据えて「「お乗りください」」とカゴの簾を上げる。
「う、うん」
言われるままに乗ろうとしたら、カゴの底が開いていて、その下のマンホールも開いている。
「カゴに乗るふりをして、マンホールに入ってこいってことよ」
御息所が分析。
「よいしょっと」
カゴの底経由でマンホールに入ると、ガシャリと音がして、マンホールの蓋がしめられる。
あ、真っ暗!
ちょっとビックリして、よろける。
「おっと」
声が掛かったかと思うと、誰かが支えてくれる。
あれ? 御息所もお迎えの子も、1/12くらいの大きさ。わたしを抱きとめるなんてできない。
「ちょっとだけ、お手伝い」
「え?」
ちょうど非常灯のようなものが点いて、その姿が見える。
「「あ、メイドお化け」」
御息所と声が揃う。
「説明は後よ、ついて来て」
足元のお誘いに目配せすると、地下下水道……というにはキレイで、赤じゅうたんが敷かれた地下通路。
壁や天井も、チェックや水玉や花柄や縦縞、横縞のパッチワーク。
「この柄って……」
「考えない方がいい」
「う、うん」
地下通路を抜けると、アキバの駅前広場……なんだけど、アニメの背景画のように、よく言うときれい、あからさまに言うと実在感が無い。
「ここが裏アキバ」
「う、うん」
メイドお化けの短い説明に頷くしかないんだけど、ちっとも釈然としない。
「二丁目でもね、やくもに任せっきりではあんまりだって声があがってね、ま、それで、わたしが、ちょびっとだけ手伝うことになったわけ」
「嬉しい、手伝ってくれるの!?」
将門さまはあんなだし、赤・青メイドともマンホールで別れてしまうし、正直なところ、どうしようかって思ってたところ。
「手伝うと言っても、この裏アキバに渡りを付けるところまでよ。あ、その子がね……」
「わたし、裏アキバの妖精でアキバ子と言います」
「空き箱?」
「いえ、アキバの子どもで、アキバ子です」
「あ、えと……」
正直、1/12サイズでは心もとない。
「そのまま業魔と戦っては分が悪いのです。地上では業魔どもに姿を見られっぱなしですし、戦うにしても、御息所さまは、お小さいまま……」
「あんたに言われたかない」
「アハハ、ですよね。でも非力なのは事実でして、万全の力を発揮していただくにはアキバの夢の力を使っていただかなければなりません」
「アキバの夢?」
「説明していては時間がかかります。わたしの中にお入りください。エイ!」
そう言うと、アキバ子はグルンとでんぐり返し。
すると、アキバ子は本当の空き箱になってしまった。
驚いていると、空き箱の蓋が開いて、中から小さなハートがホワホワ光りながら浮かび上がってきた。
「さあ、そのハートを見つめて!」
「う、うん」
メイドお化けに言われて、ハートを見つめていると、猛烈な眠気に襲われる。
「じゃ、活躍のほどは二丁目のみんなで観てるから、がんばってねえ(^o^;)!」
あ、なんだか無責任、なんか言ってやらなきゃ……思っているうちに意識が無くなって……いった……。
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 メイド将軍 アキバ子
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる