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117『父上、やくもさまをお連れいたしました』
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やくもあやかし物語
117『父上、やくもさまをお連れいたしました』
厳めしい城門を幾つも通って御殿の前に着いた。一ダースほどのメイドさんたちがお出迎え。
「「「「「「「「「「「「いらっしゃいませ」」」」」」」」」」」」
揃ってお辞儀されると、ちょっと緊張。
カチャリ
赤メイドさんがドアを開けてくれて、滝夜叉姫さんに先導されて馬車を降りる。
パチン
青メイドさんが指を鳴らすと馬車はサッカーボールになってしまい、赤メイドさんが――どうぞ――という感じで、滝夜叉姫に促す。
セイ!
バシュ!
滝夜叉姫さんがシュートして、サッカーボールは城壁の向こうに飛んで行ってしまった!
「「「「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」」」」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
メイドさんたちがポーカーフェイスのまま拍手。
馬車がサッカーボールになったのも、滝夜叉姫がきれいにシュートを決めたのも、それに、シュートした時に露わになった滝夜叉姫の脚の美しさにも、メイドさんのシュールな拍手にもビックリした!
「すごい……」
「次はテニスボールぐらいにしといてね、サッカーボールでは、ちょっとお下品です。他の人たちもよろしく」
「「「「「「「「「「「「御意」」」」」」」」」」」」
「その『引用符』の無駄遣いも煩わしいわ」
「『引用符』は勤務評定に影響するのでご寛恕願います」
赤メイドが言うと、滝夜叉姫のこめかみがピクリと動いたようなきがしたけど、姫は「あ、そ」と小さく返事した。
メイドさんは赤・青メイドの二人が先導して、御殿の中に進む。一ダースのメイドさんたちは慇懃に頭を下げて見送ってくれるだけ。たしかに、ちょっと無駄かもね。
御殿は大きな温泉旅館のよう。
唐破風の玄関を入ると長い廊下が続いていて、クネクネ曲がって、観音開きの扉の前に立つ。
「滝夜叉姫さま、お客人をお連れになられましたーー」
赤メイドさんが言うと――待ってました――という感じで扉が開く。
扉の向こうは、さらに廊下が続いているんだけど、ここまでの廊下と違って赤絨毯が敷かれていて、別のメイドさんたちが待機している。
赤・青メイドさんは、どうやら、ここまでみたい。さらに奥に進むわたしたちに、ずっと頭を下げて見送ってくれる。
「ここからは奥なんですが、特に畏まることはありません。お楽になさってください」
そして、何回か角を曲がって、白木に金の金物を打った扉の前にやってきた。
「ちょっと待って」
声は、わたしのポケットから。
大人しいので忘れてたんだけど、御息所が顔を出している。
「ちょっと出してくれる、この姿で会うのは失礼だから」
「あ、そうなの?」
滝夜叉姫もニコニコ頷くので、ポケットから出して赤じゅうたんの上に置いてやる。
エイ
掛け声をかけてでんぐり返ったかと思うと、わたしよりも背の高いセーラー服姿になった。
「あれ?」
御息所の依り代はあやかのフィギュアだから、てっきり等身大のあやかになるのかと思った。
「さすがは六条御息所さま、聞きしに勝るお美しさです」
「いいえ……でも、将門さまにお会いするのに仮の姿では失礼ですから……では、宜しければお目もじを」
「承知いたしました……それ」
滝夜叉姫が小さく掛け声をかけると、御付きのメイドさん、パッと光ったかと思うと、鍵穴に収まる。
カチャリ
なんと、メイドさんは鍵の化身だったんだ!
スーーー
音もなく扉が開く……。
「滝夜叉姫さまー、お客さまー、ごとーーちゃーーく!」
入ったところのメイドさんが、さらに奥に知らせたかと思うと、それは、鍵穴に入ってたメイドさん?
と思ったら、さらに奥、白木のベッドの左右の枕もとには二人のメイドさんが居て、同じ顔をしている。
「父上、やくもさまをお連れいたしました」
「ご、ご苦労であった……」
左右のメイドさんに解除されて起き上がったのは――え、これが将門さま?――目を疑うような、やせ細ったお爺ちゃんだ。
「は、初めてお目にかかる……わたしが、た、平将門……でござる」
だけど、目だけはランランとしている。
数々の妖たちに出会う前のわたしなら、ぜったい気絶してると確信が持てるほどの迫力だよ……(;'∀')
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝
117『父上、やくもさまをお連れいたしました』
厳めしい城門を幾つも通って御殿の前に着いた。一ダースほどのメイドさんたちがお出迎え。
「「「「「「「「「「「「いらっしゃいませ」」」」」」」」」」」」
揃ってお辞儀されると、ちょっと緊張。
カチャリ
赤メイドさんがドアを開けてくれて、滝夜叉姫さんに先導されて馬車を降りる。
パチン
青メイドさんが指を鳴らすと馬車はサッカーボールになってしまい、赤メイドさんが――どうぞ――という感じで、滝夜叉姫に促す。
セイ!
バシュ!
滝夜叉姫さんがシュートして、サッカーボールは城壁の向こうに飛んで行ってしまった!
「「「「「「「「「「「「おお!」」」」」」」」」」」」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
メイドさんたちがポーカーフェイスのまま拍手。
馬車がサッカーボールになったのも、滝夜叉姫がきれいにシュートを決めたのも、それに、シュートした時に露わになった滝夜叉姫の脚の美しさにも、メイドさんのシュールな拍手にもビックリした!
「すごい……」
「次はテニスボールぐらいにしといてね、サッカーボールでは、ちょっとお下品です。他の人たちもよろしく」
「「「「「「「「「「「「御意」」」」」」」」」」」」
「その『引用符』の無駄遣いも煩わしいわ」
「『引用符』は勤務評定に影響するのでご寛恕願います」
赤メイドが言うと、滝夜叉姫のこめかみがピクリと動いたようなきがしたけど、姫は「あ、そ」と小さく返事した。
メイドさんは赤・青メイドの二人が先導して、御殿の中に進む。一ダースのメイドさんたちは慇懃に頭を下げて見送ってくれるだけ。たしかに、ちょっと無駄かもね。
御殿は大きな温泉旅館のよう。
唐破風の玄関を入ると長い廊下が続いていて、クネクネ曲がって、観音開きの扉の前に立つ。
「滝夜叉姫さま、お客人をお連れになられましたーー」
赤メイドさんが言うと――待ってました――という感じで扉が開く。
扉の向こうは、さらに廊下が続いているんだけど、ここまでの廊下と違って赤絨毯が敷かれていて、別のメイドさんたちが待機している。
赤・青メイドさんは、どうやら、ここまでみたい。さらに奥に進むわたしたちに、ずっと頭を下げて見送ってくれる。
「ここからは奥なんですが、特に畏まることはありません。お楽になさってください」
そして、何回か角を曲がって、白木に金の金物を打った扉の前にやってきた。
「ちょっと待って」
声は、わたしのポケットから。
大人しいので忘れてたんだけど、御息所が顔を出している。
「ちょっと出してくれる、この姿で会うのは失礼だから」
「あ、そうなの?」
滝夜叉姫もニコニコ頷くので、ポケットから出して赤じゅうたんの上に置いてやる。
エイ
掛け声をかけてでんぐり返ったかと思うと、わたしよりも背の高いセーラー服姿になった。
「あれ?」
御息所の依り代はあやかのフィギュアだから、てっきり等身大のあやかになるのかと思った。
「さすがは六条御息所さま、聞きしに勝るお美しさです」
「いいえ……でも、将門さまにお会いするのに仮の姿では失礼ですから……では、宜しければお目もじを」
「承知いたしました……それ」
滝夜叉姫が小さく掛け声をかけると、御付きのメイドさん、パッと光ったかと思うと、鍵穴に収まる。
カチャリ
なんと、メイドさんは鍵の化身だったんだ!
スーーー
音もなく扉が開く……。
「滝夜叉姫さまー、お客さまー、ごとーーちゃーーく!」
入ったところのメイドさんが、さらに奥に知らせたかと思うと、それは、鍵穴に入ってたメイドさん?
と思ったら、さらに奥、白木のベッドの左右の枕もとには二人のメイドさんが居て、同じ顔をしている。
「父上、やくもさまをお連れいたしました」
「ご、ご苦労であった……」
左右のメイドさんに解除されて起き上がったのは――え、これが将門さま?――目を疑うような、やせ細ったお爺ちゃんだ。
「は、初めてお目にかかる……わたしが、た、平将門……でござる」
だけど、目だけはランランとしている。
数々の妖たちに出会う前のわたしなら、ぜったい気絶してると確信が持てるほどの迫力だよ……(;'∀')
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝
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