116 / 161
116『トラッドメイドは滝夜叉姫』
しおりを挟む
やくもあやかし物語
116『トラッドメイドは滝夜叉姫』
改札を抜けてクネクネ行くと表通りなんだけど、様子が変だ。
お茶の水とかに来るのは初めてなんだけど、これは違うと思った。
だって、通りに出ると車とか走ってなくて、いや、走ってることは走ってるんだけど、数が少ないし、なんだかレトロ。
歩いてる人は着物が多い。女の人はほとんどそうだし、男の人も着物にハンチングって人が多い。完全な洋服は、学生とお巡りさん。それと、わたしを迎えに来たメイドさんたちぐらい。
「どうぞ、これにお乗りください」
え、馬車!?
ほら、皇族の人たちが乗るような馬車だよ!
ドアには神田明神の御紋。たしか、ナメクジ巴って、尾っぽの長い三つ巴。
レムとラムみたいなメイドさんは、一人が御者台に上って、もう一人は、ドアを開けて畏まっている。
「し、失礼します」
声がひっくり返りそうになって、馬車のステップに足を掛ける。
ギシ
サスペンションが効いていて、グニャって感じで乗り込む。
続いてグニャっていったかと思うとトラッドな方のメイドさんが乗ってきて向かい合わせに座る。
すると、ラムみたいな方が一礼してドアを閉めるとパッカー車の助手さんみたいにキャビンの後ろに立ったまま乗った。
ハイ
レムみたいなメイドさんが鞭を入れると、二頭の馬は穏やかに走り出したよ。
パッカポッコ パッカポッコ
「申し遅れました、わたし、平将門の娘で滝夜叉と申します」
「え、将門の!?」
「はい、落ち着いてお聞きください」
「は、はい」
まさか、のっけからのカタキ登場と思ってないから、カバンからコルトガバメントを取り出すわけにもいかない。
ちょっとアセアセだよ。
「父の将門は病なのです」
「ヤマイ、病気ですか?」
「はい、父は我慢強いので、周囲の者も気づくのが遅れて宿痾(しゅくあ)となってしまいました」
「しゅくあ?」
「こじらせて、容易には直らない持病のことです」
「あ、ああ」
お爺ちゃんの腰痛みたいなもんだ。
「父将門に宿った宿痾ですので、なかなか容易なものではありません。近ごろは、その宿痾を父そのものと間違えて討伐に乗り出す者まで現れる始末。そして、今度はやくも様までお出ましになると、さるお方から知らせがございました」
「え、そうなんですか?」
どうも、聞いていたのと様子が違う。
「はい、やくも様には本当のところをお話しておかなければ、間違って父を成敗されるかもしれません」
「かもじゃなくって、本当に成敗するつもりでした(;'∀')」
「父も、直にお会いしてお伝えしなければならないと申しますので、かようにお迎えに出た次第です」
「そうだったんですか……でも、ここって御茶ノ水とか神田のあたりなんですか?」
「はい、あの大屋根が湯島の聖堂、その角を曲がりますと神田明神の大鳥居が見えてまいります。ただ、半分がところ異界と重なっていますので風景は令和のものとは異なります」
「はあ……」
外に目をやると、通行人たちが微妙に異界じみてきている。
アニメのように目鼻立ちがクッキリしていたり、顔の造作が大きかったり、中にはエルフのように耳がとがっている者もいる。自動車の中には車輪が動物の脚になって走っているものがあったり、でも、きちんと秩序だっていて、悪いものには思えなかった。
「さすがはやくも様、異形の者でも良し悪しはお分かりになっているようですね」
滝夜叉さんがホッと胸をなでおろした。
ホッとすると、優しい笑顔。ちょっとだけ安心する。
「あ、いよいよです」
大鳥居を潜ったさきは、大きなお城が聳えていた……。
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝
116『トラッドメイドは滝夜叉姫』
改札を抜けてクネクネ行くと表通りなんだけど、様子が変だ。
お茶の水とかに来るのは初めてなんだけど、これは違うと思った。
だって、通りに出ると車とか走ってなくて、いや、走ってることは走ってるんだけど、数が少ないし、なんだかレトロ。
歩いてる人は着物が多い。女の人はほとんどそうだし、男の人も着物にハンチングって人が多い。完全な洋服は、学生とお巡りさん。それと、わたしを迎えに来たメイドさんたちぐらい。
「どうぞ、これにお乗りください」
え、馬車!?
ほら、皇族の人たちが乗るような馬車だよ!
ドアには神田明神の御紋。たしか、ナメクジ巴って、尾っぽの長い三つ巴。
レムとラムみたいなメイドさんは、一人が御者台に上って、もう一人は、ドアを開けて畏まっている。
「し、失礼します」
声がひっくり返りそうになって、馬車のステップに足を掛ける。
ギシ
サスペンションが効いていて、グニャって感じで乗り込む。
続いてグニャっていったかと思うとトラッドな方のメイドさんが乗ってきて向かい合わせに座る。
すると、ラムみたいな方が一礼してドアを閉めるとパッカー車の助手さんみたいにキャビンの後ろに立ったまま乗った。
ハイ
レムみたいなメイドさんが鞭を入れると、二頭の馬は穏やかに走り出したよ。
パッカポッコ パッカポッコ
「申し遅れました、わたし、平将門の娘で滝夜叉と申します」
「え、将門の!?」
「はい、落ち着いてお聞きください」
「は、はい」
まさか、のっけからのカタキ登場と思ってないから、カバンからコルトガバメントを取り出すわけにもいかない。
ちょっとアセアセだよ。
「父の将門は病なのです」
「ヤマイ、病気ですか?」
「はい、父は我慢強いので、周囲の者も気づくのが遅れて宿痾(しゅくあ)となってしまいました」
「しゅくあ?」
「こじらせて、容易には直らない持病のことです」
「あ、ああ」
お爺ちゃんの腰痛みたいなもんだ。
「父将門に宿った宿痾ですので、なかなか容易なものではありません。近ごろは、その宿痾を父そのものと間違えて討伐に乗り出す者まで現れる始末。そして、今度はやくも様までお出ましになると、さるお方から知らせがございました」
「え、そうなんですか?」
どうも、聞いていたのと様子が違う。
「はい、やくも様には本当のところをお話しておかなければ、間違って父を成敗されるかもしれません」
「かもじゃなくって、本当に成敗するつもりでした(;'∀')」
「父も、直にお会いしてお伝えしなければならないと申しますので、かようにお迎えに出た次第です」
「そうだったんですか……でも、ここって御茶ノ水とか神田のあたりなんですか?」
「はい、あの大屋根が湯島の聖堂、その角を曲がりますと神田明神の大鳥居が見えてまいります。ただ、半分がところ異界と重なっていますので風景は令和のものとは異なります」
「はあ……」
外に目をやると、通行人たちが微妙に異界じみてきている。
アニメのように目鼻立ちがクッキリしていたり、顔の造作が大きかったり、中にはエルフのように耳がとがっている者もいる。自動車の中には車輪が動物の脚になって走っているものがあったり、でも、きちんと秩序だっていて、悪いものには思えなかった。
「さすがはやくも様、異形の者でも良し悪しはお分かりになっているようですね」
滝夜叉さんがホッと胸をなでおろした。
ホッとすると、優しい笑顔。ちょっとだけ安心する。
「あ、いよいよです」
大鳥居を潜ったさきは、大きなお城が聳えていた……。
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる