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108『カップ麺ころりん』

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やくもあやかし物語

108『カップ麺ころりん』   




 あれこれカップ麺を12個買うとエコバッグには収まらない。


 収まらない分はレジ袋は買わなければならない。

 でも、お婆ちゃんはレジ袋嫌いだし、わずか三円でもレジ袋を買うのは業腹なのよ。

「じゃ、段ボール箱に入れましょう」

 レジのオバサンがすごいことを言う。

 レジ袋で三円だよ、段ボール箱だったら三十円? いや、ホームセンターで見たのは百円くらいしてたよ。

 百円も出したら袋麺一個買えてしまう!

「サービスですから(^▽^)」

「え、そうなんですか!?」

「はい、これでどうでしょう」

 デスクの下から手ごろなのを出してくれる。カップ麺12個入りの空き箱だ。

「あ、どうもありがとう!」

 ちょっと感激して、清算を済ませるとカップ麺を段ボールに詰める。

 12個のカップ麺だから、きちんと入る……いや、入らない。

 だよね、メーカーが違うのが12個。

 スーパーカップとかデカップとか、ついおっきいのばっか買ったからね(^_^;)。

「箱、二つにします?」

「いいです、二つだと持ちきれないから」

 悪戦苦闘していると、学生バイトの男子が来て「ぼくがやります」とまとめてくれる。

「ありがとうございます」

「いいえ、サービスですから」

 サービスついでに配達してくれたら……アハハ、それはないよね。

「はい、これでいけます!」

 バイト君はきちんとやってくれた……のはいいんだけど、二宮金次郎みたく背中に背負う式。

「あ、ありがとう(^_^;)」

 背負った姿を鏡に映すと、カチカチ山のタヌキ。

 だよね、二宮金次郎なら歩きながら本を読まなきゃだもんね。


 でもって、カチカチ山の女子中学生は黄昏時の街を家路につく。


 ちょっとヤバいかも……。

 二丁目の坂を上がっていると、結んでいた紐が緩んできた。

 箱がバラけて、中身が出たら困る。

 背中に手を回して段ボール箱を庇う。

 こういうのって……あったよね。いらないことを思いだす。

『怪談奇談』というのに、赤ちゃんをおんぶしたまま、肝試しするって話があったよ。

 無事に肝試しして戻ると、背中の赤ちゃんの首が無かったって、怖いオチが付いてたけど。

 トン コロリン

 音がして振り返ると、カップ麺が一個落ちて、坂道を転げ落ちていく。

 ヤバイ

 背中の段ボール箱を庇いながら、カップ麺を追いかける。

 これは『おむすびころりん』の展開か!?

 トン コロリン トントン コロコロ トンコロリン

 本格的に紐がゆるんで、次々にカップ麺が落ちて、転がっていく!

「ちょ、待って!」

 この坂道でトラブルとろくなことが無い。

 焦って慌てて、三つ拾ったところで、目の前に二本の脚。

 ああ、やっぱ……

 顔を上げると、おなじみのメイドお化けが九個のカップ麺を器用にかついで、茜の夕陽を背に受けながらニコニコしていた。

「お帰りなさいませ、お嬢さまあ(=^0^=)」

 ああ…………(^_^;)




☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生      図書部の先生
杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん       図書委員仲間
あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所

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