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98『都の鬼がやってくる』

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やくもあやかし物語

98『都の鬼がやってくる』   




 え……俊徳丸……?


 姫カットのセミロングに仕立てのいいブレザーの制服。

 完ぺきに女子高生なんだけど、顔の造りは見慣れた俊徳丸。

「違和感ないわね、俊徳丸」

 チカコが興味津々の顔でポケットから身を乗り出す。

「あはは、子どものころから稚児舞とかやってたからね(^_^;)」

 声まで女の子。

「しかし、その完ぺきな化けっぷりは、玉祖神社のお力ね?」

「チカコほどじゃないと思う」

「え?」

「なんでもないわ。でも、ハローウィンでもないでしょうに、なんで、そんな仮装してるのかしら?」

 ポケットから首だけ出して質問するチカコ。

「ああ、それはね……」


 残りの石段を下りてきて、ひそひそと話してくれる。


「じつは、こないだから女の子が襲われる事件が続いてるんだ……」

「へ、変質者!?」

「鬼だよ」

「鬼……!」

 チカコは目だけ残してポケットにすっこむ。

「古くから都に住んでいる鬼なんだけどね、百五十年ぶりに大阪に現れてね……三日に二人ぐらいの割合で食われてしまうんだ」

「ええ!?」
『く、食われる!?』

 チカコは完全にポケットに潜り込む。

「うん、女の子が一人で歩いてると、突然、空に……そこの送電線の高さぐらいの所に現れて、シュッと地上に降りてきて、大きな口を開けて噛みついたかと思うと、そのまま空に消えて行ってしまうんだ。しばらくムシャムシャって音がして、最後は、その子が履いていた靴だけが落ちてくる」

 ゲゲゲ……

『でも、でもよ……(;'∀')モゴモゴ』

 完全にポケットに潜ってしまったチカコが異議を唱える。

『何人も食べられているんなら、モゴモゴ……ニュースとかになるでしょ、靴が残っているんだから身元も知れるでしょうし……モゴモゴ……見たことないわよ、そんなニュース! モゴ!』

「それはね、いま襲われているのは、ここいらの妖が化けた女の子だからさ。妖は完ぺきに化けるから、ほんものよりも美味しそうに見えるからね」

 そうだろうね、うちの近所のメイドお化けとか、アキバのほんものよりも可愛かったよ。

「でも、妖が化けたのって幻だから、直にお腹が減ってしまう。だからね……」

「そろそろ人間の女の子が狙われる……って、ことかしら(;'∀')?」

「うん、そうなっては取り返しがつかないからね。それで、ぼくがコスプレしてるってわけさ」

「で、でも、なんで高安なの? 元々は都にいたんでしょ、高安ばかり狙って来るって変じゃない!?」

「それは……」

「『東窓』のことがあったから……じゃない?」

 また、目だけ出したチカコが言った。

「あ、業平さんの!?」

「まあね……こないだやくもが助けてくれた子もね、あれから元気になって、元気になると、だんだん、もとの可愛らしさを取り戻してきてね」

「その子も危ないとか!?」

 縁のあった子だから、心配になる。

「今はね、引きこもりも直って、その御褒美に旅行に連れて行ってもらってる。でも、帰ってきたら危ないかもね」

「そうなんだ……」

「ひょっとして……俊徳丸」

「なんだい、チカコ?」

「あなたのコスプレって、自分がオトリになろうってことじゃないの?」

「おお、さすがはチカコ!」

「やっぱり……」

「でも、オトリって、俊徳丸がオトリになって、誰かがやっつけるわけ?」

「うん、そうだよ。そのために来てもらったんじゃないか!」

「え!?」

「その、コルトガバメントで、鬼をやっつけるんだよ(^▽^)/」


 ゲゲゲゲエ!!




☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生      図書部の先生
杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん       図書委員仲間
あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸

 
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