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60『ドッペルゲンガーかも』
しおりを挟むやくもあやかし物語
60『ドッペルゲンガーかも』
自分にソックリなお化けをドッペルゲンガーっていうんだよ。
知ってた?
ドッペルゲンガーを見ちゃうと死んじゃうとか、気が狂ってしまうとか言う。
お母さんもお爺ちゃんお婆ちゃんも、それを見たんだよ。
え?
ちがうよ、お母さんがお母さんを見たんじゃなく、お爺ちゃんがお爺ちゃん、お婆ちゃんがお婆ちゃんを見たんじゃなくて、やくも(わたし)のソックリさんを見たんだよ。
お母さんは、駅前のロータリーのとこを、まるでデートする相手の男の子を見つけたみたいに軽やかに走っていくわたしを。
お爺ちゃんお婆ちゃんは、図書館で熱心に本を読んでいる『耳をすませば』の雫みたいなわたしを。
その時は、デザートのショートケーキ食べながら『けいおん』のティータイムみたく、アハハと笑ってしまいだった。
でもね、お風呂に入ってると泡と一緒に『ドッペルゲンガー』って言葉が浮かんできた。
だって、ソックリおばけを本人が見たらドッペルゲンガーでしょ!?
ドッペルゲンガーって、本人が見ちゃったら死んじゃうんだよ!
萩原朔太郎さんなんかが文章に書いてるし、ネットとかで確認したら、そういうこと書いてあったし。
でも、ま、私自身が見なきゃドッペルゲンガーってことにはならない。
うん。
それにさ。
この世の中には、自分にソックリな人が三人はいるって言うし。
ただ単にソックリさんて言うだけなら面白いよ。それなら平気。
って言うか、ソックリさんと仲良くなったら素敵じゃない。
ときどき入れ替わって、みんなを驚かしたりしたら面白いよ。
そう思いなおして、お風呂あがって、ホットミルクコーヒーを飲んだら平気になって、よく眠れた。
で、本当に見てしまった!
校門をくぐって昇降口に向かうとね、あとニ十歩ほどで昇降口というところで見つけてしまった。
ロッカーを開けて上履きを出そうとしているわたしを!
上履きを取り出そうとしたら、封筒が入っていて、それがポトリと落ちてビックリしてるわたし。
え!?
たまげて、一瞬立ち止まる。
「おはよう!」
後ろから声をかけられて、またビックリ。
図書委員仲間の小桜さんが挨拶してくれたんだ。
「おはよう、小桜さん(^▽^)/」
と返事して、振り返ると、もう、わたしの姿は無かった。
小桜さんと並んで階段を上がる。
小桜さんはハキハキした人で、最初は苦手だった。
図書委員の仕事でいっしょになっても、こちらから打ち解けて話すのは、ちょっとね……だった。
いまみたいに昇降口でいっしょになっても、ちょっとタイミングをずらして、いっしょに階段を上がるなんて絶対しない。
それが、自然に並んで階段を上がってる。我ながら進歩……いえいえ、こういうわたしでも受け入れてくれる小桜さんの方がえらいんだよ、きっと。
階段あがったところ小桜さんと分かれて、教室に向かう。
すると、また見えた。
教室に入っていく寸前のわたし。
自覚している自分とは違って、小柄ながらスラっとしてて、かわいくスカート靡かせて教室に入っていった。
自分でビックリするんだから、これは、もうドッペルゲンガー!?
弱気なわたしは、思わず、ひとりエンガチョをしてしまった。
※ ひとりエンガチョ:頭の中で、両手の親指人差し指のリングを絡ませて、自分の気合いでリングを切るイメージを作る。
•やくも 一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
•お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
•お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
•お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
•小出先生 図書部の先生
•杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
•小桜さん 図書委員仲間
•あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石
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