55 / 161
55『開会式』
しおりを挟むやくもあやかし物語
55『開会式』
やっぱり開会式から観なきゃなあ。
そう言って、お爺ちゃんはレコーダーを操作する。
お爺ちゃんはとっくに退職してるんだけど、ご近所のお世話とか趣味の色々で忙しい人なんだ。
やることに優先順位がある。
ご近所とか他人様の事⇒家の用事⇒趣味⇒それ以外の事 という順番。
テレビを見るのは(それ以外の事)にカテゴライズされていて順位が低い。お気に入りの番組は録画しておいてまとめて観る。
朝ごはんの片づけを手伝っていたら、お爺ちゃんのテレビ鑑賞が始まった。
視界の端に入る画面や流れる音声で高校野球を観ているんだと分かる。
第一試合も三日目だと言うのに、わざわざ開会式から観ている。
自慢じゃないけど、わたし、野球は見ない。野球じたい、体育で二時間ほどしかやったことがない。野球場にも行ったことが無い。
「ごくろうさま、お茶にしよ」
お婆ちゃんが、お茶を淹れてお煎餅を出してくれる。昨日はお饅頭だった。
お婆ちゃんは、日に何度も間食をしている。でも、ちっともメタボとかにはならない人だ。
キッチンのテーブルからでも60インチのテレビは良く見える。リビングの四隅にスピーカーが仕込んであってサラウンドとか言うんだろうか、音の臨場感もハンパじゃない。
入場行進が続いて選抜チームがノシノシ行進している。学校で見かける野球部員は苦手だ。声おっきいし、掛け声とかも動物めいていて野蛮な感じ。サッカーとかの運動部も同じ。そんな運動部を熱心とチラ見の違いはあるけど、観ている女子たちが居る。わたしには、そんな趣味は無い。
行進している野球部員は、ちょっと、ちょっとだけカッコいいかも。秩序だっているのが趣味に合うのかもね。
二枚目のお煎餅に手を出したところで静かになった。
――式典の司会を務めます、広島県立〇〇高校二年○○○○です――
声だけ聞いていると立派に大人のアナウンサーみたいな女子高生が進行役をやっている。後ろの野球帽被って進行台本持ったオバサンが軽く肩を叩く。
なんだ、この人は黒子のオバサンの指示で動いているだけなんだ。
でも、ちょっと違った。
女子高生さんは、自分の進行台本に目を落として確認してから、次に移った。
――国旗、大会旗を掲揚します。選手まわれ~右――
でもって、選手の回れ右を確認してから次に。
――選手、役員の皆さんは脱帽して掲揚台にご注目ください。スタンドのみなさんもご起立脱帽にご協力ください――
ちゃんとタイミングを見計らって進行している。
国歌『君が代』を独唱した女子高生さんもすごかった。
細い体で、ちょっと泣き顔。地味な感じの人だったけど、歌いだすと――どこのオペラ歌手じゃあ!?――だった。
『君が代』も広い甲子園で独唱するとすごい迫力。むろん、うちのリビングなんか問題にならないくらいの音響設備なんだろうけど、それでも、元々の歌がキチンと歌えてないとね。学校の式典で流れる『君が代』とは別物だと感じた。
そう、感じたんだよ。思ったんじゃなくて
そしてビビっときた。
入学式にしろ卒業式にしろ、ボーっとしか聞いてないので感じることは無かったんだけど、感動したからこそひっかかった。
さざれ石ってなんだろう? ほら『千代に~い 八千代にい~』って後に来る『さざれ~石の~巌となり~て』の、さざれ石。
ちょっと調べてみようと思った。
☆ 主な登場人物
◦やくも 一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
◦お母さん やくもとは血の繋がりは無い
◦お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
◦お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
◦小出先生 図書部の先生
◦杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
◦小桜さん 図書委員仲間
◦あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる