40 / 161
40『お爺ちゃんの大掃除』
しおりを挟むやくもあやかし物語
40『お爺ちゃんの大掃除』
片づけばっかりやってると早死にしますよヽ(`Д´)ノ。
片づけに熱中して、やっとお昼ご飯を食べに来たお爺ちゃんにプンスカ言うお婆ちゃん。
お爺ちゃんも、なんとか切り上げてきたんだから、食卓に着いたとたんに言うことじゃないと思うんだけど。
今日のお昼は、お婆ちゃんとわたしとで作ったカルボナーラ。
お婆ちゃんは、わたしが手伝ったお昼ご飯に遅れたことを咎めているんだ。
お婆ちゃんだけで作ったお昼なら、遅くなっても文句は言わない。ラップをかけてテーブルの上に置いておく。
お爺ちゃんのお片づけも、わたしがお母さんといっしょにやったのに触発されたんだ。
「ほう、感心感心、わしもやってみよう!」
ねぎらいの言葉として聞いていたんだけど、ほんとにやりだして大掃除のようになってきた。
広い家なので、そんなに気合いを入れてやることもないんだけどね。勢いというやつ。それと……これを言ったら言霊だから言わない。
変わったこけしねえ。
お爺ちゃんががんばったんだから、様子を見に行く。
それで見つけたんだ、廊下に出されたいろいろの中に混じっていた太っちょのこけし。
「ああ、マトリョーシカっていうんだ」
「マトリョ……?」
「マトリョーシカ、ロシアのこけしだ」
お爺ちゃんが手を伸ばすと、ホコリで滑ったのか、床に落っことしてしまった。
「あ……?」
マトリョーシカはお腹の所で上下に割れて、中から一回り小さいマトリョーシカ、それも割れて二回り小さいマトリョーシカが顔を出した。
「入れ子になっていてね、全部で七つなんだ」
「触っていい?」
「ああ」
「……三つしかない」
三つ目の中は空っぽだ。
「うん、どこかに行ってしまったんだ。普通のマトリョーシカは五つか多くても六つの入れ子なんだけど、こいつは七つ入っていたんだ」
「行方不明?」
「そうだな。薄汚れてるし、三つしかないから、値打ちなんかはない。次のゴミで出そうと思ってる」
「捨てるんだったら、もらってもいい?」
「ああ、いいよ。ちょっとアルコールで拭いてあげよう」
そういうことで、マトリョーシカは、わたしの部屋、アノマロカリスを見下ろす棚の上に収まった。
二つの新入りを眺めてるうちに寝てしまった。
「あんた、まだなにか隠してるんでしょ」
マトリョーシカが文字通りの上から目線でアノマロカリスに言った。
「そんなデカイ図体しててかりな一個ってことはないでしょ!?」
「いや、それはな……」
言葉のお尻を濁しながら、アノマロカリスはビー玉のような目を、わたしに向けた。
――あ、そうか!――
アノマロカリスのお腹のヒダはかりなが入っていたところだけじゃない。
目が覚めてから、アノマロカリスのお腹を探ってみた。
すると、出てきた。幸子、クロエ、クミン、ミル、俺妹女子キャラの揃い踏みだ。
先に出てきたメルル同様に少々歪んでる。十年近くアノマロカリスのお腹に閉じ込められていたんだから仕方がない。
お腹の子を全部出して、心なしかホッとしたようなアノマロカリス。
こういう時、無駄に大きいわたしの机は存在意義を増した。
妹ニクの女子キャラ全部を並べると、なかなかの眺めになった。
プルルルル プルルルル
黒電話が鳴った。
「もしもし」
―― 交換手です。妹ニクの女子キャラの揃い踏み、おめでとうございます ――
「あ、ども」
考えてみたら、発端は交換手さんの言葉だった。ま、おめでとうの電話くらいあってもいい。
―― フフ、まだ隠れているものがありますよ。出てきた子たちをよーく見てみましょう ――
退屈させない交換手さんだ。
☆ 主な登場人物
•やくも 一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
•お母さん やくもとは血の繋がりは無い
•お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
•お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
•小出先生 図書部の先生
•杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
•小桜さん 図書委員仲間
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる