上 下
12 / 161

12『図書分室・1』

しおりを挟む

やくも・12『図書分室・1』    

 

  学校に図書分室というのがある。

 
 図書室と言うのは、本だけじゃなくて、いろんなものがある。

 視聴覚機材という括りになっていて、スライド映写機とかスクリーンとか、古いパソコンとかビデオカメラとか、なんだか分からない機材とか。そういうのを保管している倉庫みたいな部屋。

 その図書分室に古い本を持って行ってほしいと頼まれた。

 頼んだのは霊田(たまた)先生。

 頼まれて、やっと名前を覚えた。

 眼鏡のオールドミス。この先生は図書部長で、委員会で一度顔を見ただけ、一度見ただけで、あまり関わらない方がいいと思った。先生も必要最小限しか言わないタイプのようで、今日呼び出されるまでは口をきいたことがない。

「適当に片しといて。あの台車使って……」

 本の山と台車を指さしておしまい。泣きたくなるほど素っ気ない。

 泣かずに済んだのは相棒が居たから。

 相棒は小桜さん。先週、小桜さんは四日連続で休んでいた。四日の内三日が図書の当番に当たっていた。

 なんの因果か、三日間とも、わたしが小桜さんの穴埋めをやらされたんだよ。

 先週はごめんね……言うかと思ったけど言わない。

 ま、穴埋めやったのがわたしだってことも知らないのかも……霊田先生も言ってくれりゃいいのに「小泉さんが当番代わってくれたのよ」ってぐらいはね。

「とりあえず」 

「階段」 

「分室の前」 

「運んで……」

「から……」 

「入れる」

「うん」

「うん」

 散文的な会話して、いよいよカチャリ。分室の扉を開けて運び込む。

 
 かび臭ぁぁぁぁぁ

 
 かび臭さを共感して、それでも、それ以上の会話はしない。

 かび臭い上に散らかっている。どちらが言うともなく奥の方を片付けて百冊余りの本を積み上げる。

 これ、なんだろう……口に出したわけじゃないのに、同じものを見ている。

 ニス塗りの黒褐色の木の箱、大きさは給食のパンの箱を二つ重ねたぐらい。

 親しかったら「なんだろうね」くらいは言うんだけど、無言のまま。

 これが、他のみたいにホコリまみれなら、手を付けなかったけど、この箱だけが普通だ。何かが上に載っていて、片づける時にどけたのかもしれない。それに、長い方の端に掛け金があって、それを外したら簡単に開きそうだったし。

 カチャリ

 簡単に掛け金は外れて、上の蓋を開ける。

 
 なにこれ?

 
 今度は声が揃う。

 で。

 それは、一瞬だけど巨大なスマホに見えたよ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...