上 下
9 / 161

09『不〇投棄禁止』

しおりを挟む

やくも・09『不〇投棄禁止』   

 

 学校をちょっと出たところに不〇投棄禁止の札がある。

 
 なんで不〇投棄禁止なのかというと、通学路の立て札なんて、そんなにきっちり見たりはしないもんね。

 不〇投棄禁止なんだから、常識で考えれば不法投棄禁止だ。

 
 あることで、その不〇投棄禁止の札をまじまじ見ることになったというお話……。

 
 ちょっとだけ学校に慣れてきた、ちょっとだけね。

 クラスで喋れる子も二三人……まだ紹介はしないけどね。だって、友だちになり損ねて挨拶もしなくなったら見っともないじゃやん。

 あ、あの時は友だちだって言ったじゃん。なんて目で見られるのやだもん。

 先生も覚えた。覚えたというのは、授業以外で出会っても――あ、数学の先生だ――ぐらいに分かったということよ。

 まだ名前は憶えていない。だって、ほんの二週間前に転校してきたばかりだしね。

 そんな先生の中に、一人だけ名前を覚えた、ちょっと雰囲気のいい先生がいる。いつも幸せそうなオーラを発散している。

 幸田幸子って、名前からして幸せいっぱいな人だ。

 はつらつポニテを高々と結って、ポニテのせいか、目尻がほどよくキリリとしている。

 ほら、ポニテって、髪をまとめて耳より上の所でくくるじゃない。ポニテにすると顔の皮膚がリフトアップされて元気に見えるのよ。

 一度、トイレで出会った。

 階段の手すりが汚れていて、気持ち悪いんで手を洗いに行ったんだ。

 すると、幸田先生が鏡の前で髪をとかしていた。

「オッス、ごみほりにいったら、チョークの粉とか入ってて、髪に付いたみたいでさ……」

 さすがに髪を下ろしていた。ポニテを解くとロングでしょ。

 ロングなんだけど、やっぱはつらつ美人なんだ。

 

 ひょっとしたら、いろいろ理由を付けて生徒のトイレに来るのかも。

 そんで、偶然を装ってコミニュケーションとったり、生徒を観察したり。

 怖い顔して張り番されるよりは、ずっといいよね。

 
 その幸田先生が不法投棄をしているのを見てしまった。

 
 ほら、例の不〇投棄禁止のとこ。

 なんかレジ袋みたいなのをぶら下げていて、不〇投棄禁止のとこでポイと捨てちゃった。

 見てはいけないものを見てしまった……そんな気がして、目線をそらすと、そそくさと現場を離れた。

 それが、昨日、また見てしまった。

 
「困るんですよ、そんなの捨てられちゃ」

 
 オバサンの声がしたんで不可抗力で目が行ってしまう。思わず自販機の陰に隠れる。

「いくら先生でも、こういうことは困るんです。ほら、今までの分も持ってってくださいな!」

 オバサンは特大のゴミ袋みたいなのに入ったのを幸田先生に付き返した。

 チ!

 先生の舌打ちがここまで聞こえてきた。

「いいですね、不〇投棄禁止!」

「わーったよ、くそババア!」

 憎たらしい捨て台詞吐いて、先生がこっちにやって来る。

 わたしは、自販機の陰で小さくなって息をひそめる。

 前を通る。

 横顔なんだけど、見たこともない不貞腐れて土気色の顔で通り過ぎて行った。

 
 オバチャンの気配もなくなったんで、不〇投棄禁止の札の所まで行ってみる。

 札と注意書きがハッキリ見える。

 
 不幸投機禁止! ここは町内の、ちょっとした煩わしさや憂さの捨て場所です。不幸そのものを捨てないでください、処理できませんので。

 それから、幸田先生を見かけない。もう自習が三回も続いている。

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌

力水
ファンタジー
 楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。  妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。  倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。  こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。  ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。  恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。    主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。  不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!  書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。  一人でも読んでいただければ嬉しいです。

捨てられた第四王女は母国には戻らない

風見ゆうみ
恋愛
フラル王国には一人の王子と四人の王女がいた。第四王女は王家にとって災厄か幸運のどちらかだと古くから伝えられていた。 災厄とみなされた第四王女のミーリルは、七歳の時に国境近くの森の中で置き去りにされてしまう。 何とか隣国にたどり着き、警備兵によって保護されたミーリルは、彼女の境遇を気の毒に思ったジャルヌ辺境伯家に、ミリルとして迎え入れられる。 そんな中、ミーリルを捨てた王家には不幸なことばかり起こるようになる。ミーリルが幸運をもたらす娘だったと気づいた王家は、秘密裏にミーリルを捜し始めるが見つけることはできなかった。 それから八年後、フラル王国の第三王女がジャルヌ辺境伯家の嫡男のリディアスに、ミーリルの婚約者である公爵令息が第三王女に恋をする。 リディアスに大事にされているミーリルを憎く思った第三王女は、実の妹とは知らずにミーリルに接触しようとするのだが……。

私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど
恋愛
ずっと腹違いの妹の方を優遇されて、生きてきた公爵令嬢セシリア。 正直不満はあるものの、もうすぐ結婚して家を出るということもあり、耐えていた。 でも、ある日…… 「お前の人生を妹に譲ってくれないか?」 と、両親に言われて? 当然セシリアは反発するが、無理やり体を押さえつけられ────妹と中身を入れ替えられてしまった! この仕打ちには、さすがのセシリアも激怒! でも、自分の話を信じてくれる者は居らず……何も出来ない。 そして、とうとう……自分に成り代わった妹が結婚準備のため、婚約者の家へ行ってしまった。 ────嗚呼、もう終わりだ……。 セシリアは全てに絶望し、希望を失うものの……数日後、婚約者のヴィンセントがこっそり屋敷を訪ねてきて? 「あぁ、やっぱり────君がセシリアなんだね。会いたかったよ」 一瞬で正体を見抜いたヴィンセントに、セシリアは動揺。 でも、凄く嬉しかった。 その後、セシリアは全ての事情を説明し、状況打破の協力を要請。 もちろん、ヴィンセントは快諾。 「僕の全ては君のためにあるんだから、遠慮せず使ってよ」 セシリアのことを誰よりも愛しているヴィンセントは、彼女のため舞台を整える。 ────セシリアをこんな目に遭わせた者達は地獄へ落とす、と胸に決めて。 これは姉妹の入れ替わりから始まる、報復と破滅の物語。 ■小説家になろう様にて、先行公開中■ ■2024/01/30 タイトル変更しました■ →旧タイトル:偽物に騙されないでください。本物は私です

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

〈本編完結〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編として出来るだけ端折って早々に完結予定でしたが、予想外に多くの方に読んでいただき、書いてるうちにエピソードも増えてしまった為長編に変更致しましたm(_ _)m ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいです💦 *主人公視点完結致しました。 *他者視点準備中です。 *思いがけず沢山の感想をいただき、返信が滞っております。随時させていただく予定ですが、返信のしようがないコメント/ご指摘等にはお礼のみとさせていただきます。 *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

引退した嫌われS級冒険者はスローライフに浸りたいのに!~気が付いたら辺境が世界最強の村になっていました~

微炭酸
ファンタジー
「第17回ファンタジー小説大賞」にて『キャラクター賞』をいただきました! ありがとうございます! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 嫌われもののS級冒険者ロアは、引退と共に自由を手に入れた。 S級冒険者しかたどり着けない危険地帯で、念願のスローライフをしてやる! もう、誰にも干渉されず、一人で好きに生きるんだ! そう思っていたはずなのに、どうして次から次へとS級冒険者が集まって来るんだ!?

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

処理中です...