10 / 23
010:ギルドの扉はめちゃくちゃ重い
しおりを挟む
馬鹿に付ける薬 《気まぐれアルテミスとのんびりベロナの異世界修業》
010:ギルドの扉はめちゃくちゃ重い
ギイイイイ……
ギルドの扉は思いのほかに重く、でも、重そうに開けては中に居る冒険者やギルドの受付たちに軽く見られてしまうと思って、ポーカーフェイスで押し開けるアルテミス。
半ばまで開けると視界の端にベロナも押しているのが分かる。
ザワ
昼時の学食を思わせる殺気だった賑わいの中、冒険者やクエストの依頼人、ギルドのスタッフたちの視線が集まる。
半ばは意外そうな、半ばはバカにしたような目だ。
一瞬たじろぐ二人だが、みんなかかずらってはいられないという感じで、クエストの張り紙、ステータスアップの手続き、ドロップアイテムの査定や買取、苦情の処理などに忙しい。
「目がキョドってますわよ(^_^;)」
「そう言うベロナも手が震えてるぞ(-_-;)」
「ええと……」
「フーー まずは登録だな」
一つ深呼吸をして登録の窓口に向かう。
「窓口、二つあるわ」
「あ……初回登録の方かな」
「でしょうね」
自分たちと歳の変わらない若者や自分たちの不向きを悟って転籍したい中年たちが並んでいるBの列に並ぶ。
隣りのAの窓口は遠くからやってきた冒険者たちで、すでに持っているランクやステータスをこの街の表記に切り替えに来ているベテランたちだ。
窓口から一メートルほどは仕切りを兼ねた観葉植物が置いてあるが、A列からの圧はハンパではない。ベテランとルーキーの違い以外にも、この街の冒険者たちへの侮蔑や揶揄が感じられる。
――クソ、こいつら舐めてやがる――
ムカつくアルテミス。
――でも、保険やら年金があって、インフラやら老後の生活に目が向いているんだから、外からは軟弱に見えるんでしょうねえ――
こないだまで生徒会長をやっていたベロナは冷静に分析する。
「お次の方ぁ」
眼鏡っこの受付が笑顔で応対してくれる。
「初めての方ですね、スキルとステータスを伺ってもよろしいですかぁ」
「ええと、学生証でいいか?」
「ええと……卒業証明書と単位取得証明などはお持ちではないのでしょうか?」
「あ、それは」
「あ、まだ在学中なんですかぁ?」
「うん」「はい、そうです」
「少々お待ちください」
眼鏡っこは後ろの課長に伺いに行った。
「次の方、先におうかがいしまーす」
バレッタで髪をまとめたのが次の受付を始めてしまう。
――学生?――わけありか?――段取り悪ぅ――弱そう――生意気そう――
揶揄やら馬鹿にしたのやら物珍しげな眼が突き刺さって来て居心地が悪い。
「クソぉ」
「ここは辛抱ですよアルテミス(^_^;)」
なだめるベロナの目も引きつっているが、さすがにアルテミスは突っ込まない。
「お待たせいたしましたぁ」
眼鏡っこがバレッタの横から体を斜めにして書類を見せる。
「ええと、曙の谷のあたりに初級のモンスターが出ますので、取りあえずそれを狩ってきていただけますか? その成果でスキルとステータスを決定する運びになります。よろしいでしょうかぁ?」
「あ、ああ」
曙の谷は広場でも聞いた。大したところではなさそうなので小さく頷く二人。
「それでは、魔石とかドロップアイテムがありましたらぁ、必ずお持ち帰りください。それを元に査定いたしますのでぇ」
「おお」「承知しました」
「ええと、前衛はどうなさいますかぁ?」
「前衛?」
「お見かけしたところ、アーチャーとメイジ(魔法使い)のようにお見受けするんですが?」
「ああ」
「だとしたら、近接防御の戦士とか剣士が必要だと……あ、腕に覚えがおありなら構わないんです。まあ、曙の谷ですからぁ(^_^;)」
聞こえたのか眼鏡っこの応対で想像がつくのか、フロアーの半分ほどがクスクス笑う。
「お、おう、なんとかする」「はい」
「そうですか、では向こうの窓口で冒険者保険をおかけになってからお出かけください……」
もう少し話したそうにしていた眼鏡っこだが、バレッタと次の登録者に押されて消えてしまった。
「そうだ、学校で用意したガードがいるって教頭先生がおっしゃってなかったかしら?」
「あ、そういや……ギルドに行って登録のついでに確認しなさいとか言ってたなあ」
「登録のついでなら、ここだなあ……」
「どこに居るんでしょう……」
――ここだ――
直接頭の中で声がして、振り返ると柱の横にドアーフの戦士が見えて、ビックリする二人だった。
☆彡 主な登場人物とあれこれ
アルテミス 月の女神
ベロナ 火星の女神 生徒会長
カグヤ アルテミスの姉
マルス ベロナの兄 軍神 農耕神
アマテラス 理事長
宮沢賢治 昴学院校長
ジョバンニ 教頭
010:ギルドの扉はめちゃくちゃ重い
ギイイイイ……
ギルドの扉は思いのほかに重く、でも、重そうに開けては中に居る冒険者やギルドの受付たちに軽く見られてしまうと思って、ポーカーフェイスで押し開けるアルテミス。
半ばまで開けると視界の端にベロナも押しているのが分かる。
ザワ
昼時の学食を思わせる殺気だった賑わいの中、冒険者やクエストの依頼人、ギルドのスタッフたちの視線が集まる。
半ばは意外そうな、半ばはバカにしたような目だ。
一瞬たじろぐ二人だが、みんなかかずらってはいられないという感じで、クエストの張り紙、ステータスアップの手続き、ドロップアイテムの査定や買取、苦情の処理などに忙しい。
「目がキョドってますわよ(^_^;)」
「そう言うベロナも手が震えてるぞ(-_-;)」
「ええと……」
「フーー まずは登録だな」
一つ深呼吸をして登録の窓口に向かう。
「窓口、二つあるわ」
「あ……初回登録の方かな」
「でしょうね」
自分たちと歳の変わらない若者や自分たちの不向きを悟って転籍したい中年たちが並んでいるBの列に並ぶ。
隣りのAの窓口は遠くからやってきた冒険者たちで、すでに持っているランクやステータスをこの街の表記に切り替えに来ているベテランたちだ。
窓口から一メートルほどは仕切りを兼ねた観葉植物が置いてあるが、A列からの圧はハンパではない。ベテランとルーキーの違い以外にも、この街の冒険者たちへの侮蔑や揶揄が感じられる。
――クソ、こいつら舐めてやがる――
ムカつくアルテミス。
――でも、保険やら年金があって、インフラやら老後の生活に目が向いているんだから、外からは軟弱に見えるんでしょうねえ――
こないだまで生徒会長をやっていたベロナは冷静に分析する。
「お次の方ぁ」
眼鏡っこの受付が笑顔で応対してくれる。
「初めての方ですね、スキルとステータスを伺ってもよろしいですかぁ」
「ええと、学生証でいいか?」
「ええと……卒業証明書と単位取得証明などはお持ちではないのでしょうか?」
「あ、それは」
「あ、まだ在学中なんですかぁ?」
「うん」「はい、そうです」
「少々お待ちください」
眼鏡っこは後ろの課長に伺いに行った。
「次の方、先におうかがいしまーす」
バレッタで髪をまとめたのが次の受付を始めてしまう。
――学生?――わけありか?――段取り悪ぅ――弱そう――生意気そう――
揶揄やら馬鹿にしたのやら物珍しげな眼が突き刺さって来て居心地が悪い。
「クソぉ」
「ここは辛抱ですよアルテミス(^_^;)」
なだめるベロナの目も引きつっているが、さすがにアルテミスは突っ込まない。
「お待たせいたしましたぁ」
眼鏡っこがバレッタの横から体を斜めにして書類を見せる。
「ええと、曙の谷のあたりに初級のモンスターが出ますので、取りあえずそれを狩ってきていただけますか? その成果でスキルとステータスを決定する運びになります。よろしいでしょうかぁ?」
「あ、ああ」
曙の谷は広場でも聞いた。大したところではなさそうなので小さく頷く二人。
「それでは、魔石とかドロップアイテムがありましたらぁ、必ずお持ち帰りください。それを元に査定いたしますのでぇ」
「おお」「承知しました」
「ええと、前衛はどうなさいますかぁ?」
「前衛?」
「お見かけしたところ、アーチャーとメイジ(魔法使い)のようにお見受けするんですが?」
「ああ」
「だとしたら、近接防御の戦士とか剣士が必要だと……あ、腕に覚えがおありなら構わないんです。まあ、曙の谷ですからぁ(^_^;)」
聞こえたのか眼鏡っこの応対で想像がつくのか、フロアーの半分ほどがクスクス笑う。
「お、おう、なんとかする」「はい」
「そうですか、では向こうの窓口で冒険者保険をおかけになってからお出かけください……」
もう少し話したそうにしていた眼鏡っこだが、バレッタと次の登録者に押されて消えてしまった。
「そうだ、学校で用意したガードがいるって教頭先生がおっしゃってなかったかしら?」
「あ、そういや……ギルドに行って登録のついでに確認しなさいとか言ってたなあ」
「登録のついでなら、ここだなあ……」
「どこに居るんでしょう……」
――ここだ――
直接頭の中で声がして、振り返ると柱の横にドアーフの戦士が見えて、ビックリする二人だった。
☆彡 主な登場人物とあれこれ
アルテミス 月の女神
ベロナ 火星の女神 生徒会長
カグヤ アルテミスの姉
マルス ベロナの兄 軍神 農耕神
アマテラス 理事長
宮沢賢治 昴学院校長
ジョバンニ 教頭
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる